今週の総括
★米中通商摩擦と米景気減速と英国のEU離脱への楽観期待が警戒感を上回る
今週の日経平均は、引き続き世界の市場心理が少し上向きとなったことを受け、前週末比+425円だった。
このところ、主なマーケット指標(ドル円、原油、米長期金利、金)が落ち着いた動きが続いている中、市場の注目する米中通商協議、米国・中国の景気減速傾向、英国のEU離脱と言った懸念事項に対し、新たなマイナス材料が出なかったことで懸念が後退し、日米ともに株価が少し上向きとなった。
業種別の動きでは、不動産、電力・ガス、紙・パルプの上昇が目立つ一方、海運、金属製品、ゴムが下落、保険、空運、繊維の動きも弱かった。特に不動産は医薬品と並び、ここ数週間続けて騰落率上位にランクインしており、年初来でみても、医薬品、精密機器、通信、紙・パルプとならび2ケタの騰落率をマークしている。一方のランク下位では、海運と保険が連続して弱い動きとなっており、33業種の年初来でもこの2業種と石油が数少ない下落業種となっている。
来週以降の見通し
★まだまだ楽観視しにくいがボックス圏か
日経平均想定レンジ 20,000~21,500円
来週の日経平均は、引き続き米中通商協議と英国のEU離脱に関する報道を受けて一進一退となるものの、3月末に向けてある程度の結論の方向性が見えるまでは、様子見モードのボックス圏の動きが続きそうだ。
世界市場をけん引する米国と中国の景気に対する最大の変動要因である米中通商協議は、3月末から4月初めに開催される見通しの米中首脳会談が次のポイントとなる。それまでは観測報道に一喜一憂しながらも様子見の動きが続くだろう。来週は米FOMCがあるが、既に前回次点で利上げ見送りとなっており、新たなアクションが無いことで市場への影響も限定的となる可能性が高い。
もう1つの懸案事項である英国のEU離脱に関しては、11日にEUと英国で離脱案に合意したものの、英議会はこの案を否決、合意なき離脱も否決、6月末までの延期案を可決した。21日から始まるEU首脳会談が次のポイントとなるが、EU側が延期に合意する可能性は未知数であり、まだ予断を許さない。
4月に入ると、小売などの決算発表が始まるが、それまでは方向感に欠ける展開となりそうだ。
コラム:徒然なるままに
「BISTRO下水道」という言葉を聞いたことはあるだろうか。国土交通省と日本下水道協会がすすめている、下水道を資源として農業に有効活用という取り組みである。
下水道処理は、日本をキレイに保つためにとても大切な事業なのは、誰しも知るところである。そして処理後の汚泥は、焼却して体積を減らした上で、埋め立て処分されている・・・と思っていた。
ところが、既に何十年も前からリサイクル活用の努力がなされていて、リサイクル率は30年前の1988年度で15%、直近2017年度はなんと73%まで上昇しているそうだ。当初は、汚泥に含まれる窒素・リンに着目して肥料として加工するのがメインだったが、その後は建設資材としての利用や、セメント化した上での建設資材利用、そしてバイオマス燃料化も始まり、さらには下水熱の冷暖房熱源利用などにも活用が進んでいる。リサイクルは古くからの日本の生活文化であり、得意分野という認識はあったが、下水道もここまで利用されているとは正直ビックリしたし感心させられる。
「BISTRO下水道」は、これら下水道の有効活用のうち、農産物向けにフォーカスした活動である。具体的には、肥料化に加え、栄養分を含んだ処理水の利用、熱と二酸化炭素のハウス栽培への利用が3本柱。フランス語でレストランを示す「BISTRO」を掲げていることから分かる通り、特に下水汚泥由来肥料を使った栽培の効果や安全性のアピールに力を入れている。日本各地での栽培試験で、収量増加、糖度や有効成分の増加、病気減少などの成果例が紹介されているし、化学肥料より導入コストが安いことや、重金属などの含有量が低く安全性にも問題ないことも紹介されている。「じゅんかん育ち」というブランド名も付けて、全国で販売支援もしているし、サイトではそれらの食材のレシピも紹介されている。
下水が有効活用され、農家の肥料・燃料コストが減った上で収量も増加し、しかも食材が美味しくなるという、正に「Win」がいくつも重なる素晴らしい話だと思う。
産官学連携と言う言葉があるが、お役所主導でいい仕事をした例ではないだろうか。
消費現場が混乱しそうな軽減税率を考えたお役所よりは、間違いなく良い仕事をしている。
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