なぜ、人は会社を辞めるのか?

人が逃げ出す会社
(画像=PIXTA)

人が中途で会社を辞める理由には、ポジティブとネガティブの両面がある。後者については、要は「待遇、仕事、組織に対する不満」である。その原因が会社全体の構造的なもので、企業体質になっているとすれば、不満の解消は望むべくもなく、もはや「絶望」に近い。

この「不満」をより具体的に言えば、次のようになろう。すなわち、(1)自分の能力に比ベて給料が安い。(2)仕事がつまらない、あるいは仕事がきつい。(3)経営方針や組織運営が納得できない。(4)結果として、会社での居心地が悪い、ないし会社に自分の居場所がない。

なぜ、離職率が高いのか?

先日、知人から離職率の高いある会社の話を聞いた。その会社では社員が頻繁に辞めて、人の出入りが激しいという。業界ではそこそこ知名度があって、人が辞めるにも関わらず、その都度新たに人が入社するため、会社運営が途切れずに存続しているとのことである。

転職仲介サイトでは、社員定着率の低い会社は「転職を勧めない会社」の典型として挙げられていた。なぜかと言えば、「問題を抱えている会社であることを事前に見抜けず、中途入社する人は絶えないが、結局は短期間で辞めてしまう」と指摘する。

それゆえ、何回も求人広告を出す。このような会社の特徴は、給料は決して高くない。長時間残業には無頓着。経営の理念や信条を語らない。自分の考えに固守するワンマン経営。ガバナンスとマネジメントの欠如とも言えるが、その根底には「社員使い倒し」の発想があり、社員を育てようという気持ちは希薄である。おそらく、今後も改善されることはなかろう。

人の心を「温める会社」と「冷ます会社」

手元に『人が集まる会社 人が逃げ出す会社』(下田直人著、講談社+α新書)という本がある。社労士として長年企業の体質改善に取り組んできた著者は、「人が集まる会社=人の心を温める会社」、逆に「人が逃げ出す会社=人の心を冷ます会社」と喝破する。ここで「人」とは、社員に限らず顧客や事業パートナー、委託先なども含む。

突き詰めると、事業内容にかかわらず、温める会社の経営者には共通項があると言う。それは、経営者自身が自らの人格形成のために学び続け、自ら実践しているということである。つまり、まず社員や関係者に問題があると考えるのではなく、「いい会社」をつくるために、経営者自身が自分の中に課題を見つけ、それを解決するべく自ら動いているのである。

川村雅彦(かわむら まさひこ)
ニッセイ基礎研究所 客員研究員

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