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(画像=ダンデライオン・チョコレート・ジャパンCEOの堀淵清治さん)

カカオ豆から板チョコになるまでの工程を一つの作業所で完結させる「Bean to Bar(ビーントゥバー)」のチョコレートショップが人気だ。このブームの先駆け的な存在といえば、サンフランシスコ発の『ダンデライオン・チョコレート』。2016年にオープンした日本1号店の『ファクトリー&カフェ蔵前』を皮切りに、伊勢神宮外宮前、鎌倉に出店。今年4月には、築100年を超える日本家屋を利用した京都東山一念坂店がオープンし、話題を呼んだ。

この『ダンデライオン・チョコレート』の日本進出の立役者はダンデライオン・チョコレート・ジャパンCEOの堀淵清治さん。サードウェーブコーヒーブームの火付け役となった『ブルーボトルコーヒー』を日本に招致したことでも有名である。そんな堀淵さんに、アメリカと日本の「クラフトフードビジネス」について話を聞いた。

米国で日本漫画を広めた立役者が、フードビジネスに参入した理由 堀淵さんの経歴は非常にユニークである。アメリカの大学院に在学中、知り合いが山をひとつ買い、「みんなで住もう」という話になった。そこで大学院を中退し、カリフォルニアの山中にモンゴル式円形簡易住居を建て、仲間とヒッピー生活を始める。数年後、小学館の相賀昌宏さんと運命的な出会いを果たし、86年にビズメディアを創業。サンフランシスコを拠点に、20年に渡って日本の漫画をアメリカ市場に広めてきた。長年サブカルチャーに関わってきた堀淵さんがフードビジネスへ参入した理由とは何だろうか?

「僕は2005年から『ビズピクチャーズ』の社長兼CEOとして、邦画の配給をしていました。でもアメリカ人は日本の映画なんて観ないので上映できるところがなかったんです。そこで日本映画とアニメの専門映画館を作ることにしました。2009年にビルを買い、複合商業施設として設計した時、ロビーに『ブルーボトルコーヒー』のカフェを作りました。シングルオリジンの高品質な豆を焙煎し、注文を受けてから一杯ずつハンドドリップするやり方で、当時アメリカでも2店舗くらいしかありませんでした。ワインのように栽培地によって異なる風味を楽しむというコンセプトが新鮮で、『日本に持って行ったら面白いだろうな』と感じました。そこで海外進出1号店として日本進出の話を持ちかけたんです」

堀淵さんが日本での会社設立から、物件選び、オペレーション、プロモーション、デザインのコーディネイトなどを担当し、2015年にオープンした清澄白河店は、サードウェーブの名とともに一大ムーブメントとなった。その成功により、堀淵さんはクラフトビジネスの可能性を実感したという。

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(画像=ヒッピーから世界を股にかけて活躍する起業家へ転身した堀淵さん)

世界的ブームを作った「クラフトチョコレート」

シリコンバレーや北カリフォルニアでは、近年IT系スタートアップだけではなく、飲食業などソフトコンテンツへの投資も拡大しつつある。あの『ブルーボトルコーヒー』もシリコンバレーのベンチャーファンドから出資を受けている。そんな環境の中で急成長したのが『ダンデライオン・チョコレート』である。創業者のトッド・マソニスとキャメロン・リングはもともとIT業界の起業家だったが、事業を売却し、友人のガレージを借りて「本当に美味しいチョコレート」を作るための実験を始めた。2010年にチョコレートのファクトリー&カフェをオープンすると、数年前から始まっていたクラフトチョコレートブームに乗り、一躍話題の店となった。

「僕はもともとあまりチョコレートに関心はありませんでしたが、友人に『ユニークなお店があるよ』と紹介されたので行ってみました。100年くらい前の製法を元にしているそうなのですが、店内のファクトリーで、カカオ豆から板チョコができるまでの全行程を自分たちで行う。その発想自体がイノベーティブだと感じました。単一産地の豆を使って、カカオの風味を純粋に味わうというコンセプトはクラフトコーヒーとも似ています。手作りチョコレートがどれほど投資家の気を引くかはわかりませんでしたが、トッド・マソニスはある程度スケーラブルなビジネスをやるつもりだと感じた。これを日本に持って行きたいなと思ったんです」

当時ダンデライオン・チョコレートは創業2年目に入ったばかり。「時期尚早」ということで断られたそうだが、3回、4回と話すうちに仲良くなり、創業者と堀淵さんの合弁会社であるダンデライオン・チョコレート・ジャパンを立ち上げた。

「2016年に蔵前にオープンしたときに、すでに“Bean to Bar”という名前を使った小さなショップが20社くらいありました。そういう意味ではクラフトチョコレートが世界的なムーブメントだったのは間違いありません。それが1年たって40社になり、2倍になりました。今年に入って60社以上となり、明らかに増えてきています。ダンデライオン・チョコレートはその中の第一人者として、これからもマーケットを牽引する意気込みで取り組んでいます」