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(画像=店主の岩瀬尚哉さん)

立ち飲み屋といえば中年男性が集まるイメージが強い。そのイメージを覆すのが、『岩瀬串店』。福岡市の中心地・天神に隣接する大名エリアに、2018年の夏にオープンした人気店だ。

店内は、これまでの立ち飲み屋にはあまりなかったスタイリッシュな雰囲気。中心にあるコの字型カウンターの上にあるショーケースには、まるで洋食デリのように串焼き料理が並び、20~30代を中心とした女性客で連日にぎわっている。そんな『岩瀬串店』が目指す店づくりについて、店主の岩瀬尚哉さんに話を聞いた。

バルのピンチョスからヒントを得た「串焼きの立ち飲み屋」

『岩瀬串店』は、天神から地下鉄で10分程の場所にある六本松エリアの焼き鳥店『とり福』、テイクアウト専門店『ポッポしゃん』の姉妹店。かつて学生街だった六本松にある2店舗は、再開発が進んだ今も、昔ながらの庶民的な雰囲気とリーズナブルな価格で地元の人に愛される店だ。一方の『岩瀬串店』は、これまでの2店舗とは対照的ともいえる雰囲気。都会的でスタイリッシュな佇まいにイメージを変えている。そんな『岩瀬串店』には、じつは影響を受けた店があると岩瀬さんは教えてくれた。

「東京にある『世田谷バル』(現在は閉店)という店からヒントを得たのがきっかけです。小さなお店でしたが、お客さんが多く入ってにぎわっていて、いつの間にか仲良くなっている。そこに立ち飲み屋の未来を感じました。串焼きの立ち飲み屋ってあまりないと思うのですが、バルでよく出るスペイン料理のピンチョスと同じフィンガーフードだし、立ち飲みでもいけるんじゃないかなと思ったんです」

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(画像=カウンター上のショーケース内に並ぶ串焼き料理。名物の鶏団子150円、ほうれん草豚巻き250円などどれもリーズナブル)

営業時間中は包丁を持たず、サービスに全力投球!

人気バルからヒントを得て、姉妹店の『とり福』『ポッポしゃん』同様、串焼きをメインにしながらも、女性客をターゲットにした現在の形態でオープンすることになった『岩瀬串店』。ショーケースに並ぶ串焼きはあえてメニュー表に載せないため、「あれは何?」「これがおすすめ」と、カウンターでは自然と隣り合うお客さん同士のコミュニケーションが生まれてくる。

また、料理は仕込みの段階で7割ほど調理を済ませていて、オーダーが入れば温め、そして盛り付けるだけ。そのため2~3分、早いものであれば1分も経たないうちに提供することができる。

「仕込みの段階で調理がほとんど終わっているので、営業中に包丁を握るスタッフはいないんです。営業時間内に調理に関係するのはドリンクと最後の仕上げだけ。スタッフ全員がサービスに全力投球しています」

全力投球しているというサービスも、『岩瀬串店』ならではのオリジナリティがある。「自分で考えて、楽しんで仕事をしてほしい」との思いから、あえて服装のルールを決めたり、接客マニュアルを作ったりはしない。清潔にさえすれば、染髪や長髪、ひげ、ネイルなども問題ない。

「『飲食業界だからこうしないといけない』というイメージをなくしたいんです。接客もそれぞれがお客さまとコミュニケーションを取りながら、個性を出していけばいいと思っています。バイトの面接に来た学生さんにもそういった話をすると、目がキラキラしてすごくやる気を出してくれる。こっちが驚くぐらいです(笑)。でも、それがゆくゆくは“飲食業界っていいな”って思うことにつながるんじゃないかな」