たびたび話題となる、高齢者の孤独死。アパートなどの不動産オーナーになった人にとっては、切実な心配事の一つといえます。孤独死は実際にどれくらい起きていて、実際に起こると物件にどんなダメージがあるのか。回避する方法は……。孤独死について考えてみます。
じつは高齢者だけの問題ではない孤独死の状況
内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によれば、2017年時点での日本の総人口のうち、65歳以上人口は3,515万人で、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は27.7%となっています。もはや3.6人に1人が高齢者という社会です。
高齢化社会の問題の一つが孤独死(誰にも看取られることなく亡くなったあとに発見される死)です。東京都監察医務院のデータによると、東京23区内における独居老人の死亡者数は2015年に3,127人で、その数は増加傾向にあります。
また、日本少額短期保険協会の「第4回 孤独死現状レポート」によれば、
・孤独死の平均年齢は男女とも61歳
・男女の人数比率はおよそ8:2
・高齢者に満たない年齢での孤独死の割合は5割を超え、60歳未満の現役世代は男女ともに約4割を占める
という事実が明らかになっています。孤独死は高齢者に限ったことではないのです。
単身世帯も増えつつあり、孤独死は今後も増えていくことになるでしょう。不動産オーナーにとっては、避けては通れない課題です。
孤独死が起こった場合、物件にどんな影響があるか
では実際に孤独死があった場合、物件にはどんな影響が発生するでしょうか。日本少額短期保険協会のレポートによれば、残置物処理費用と原状回復費用の平均・最大・最小額は以下の通りとなっています。
残置物処理費用 | 原状回復費用 | |
平均額 | 214,120円 | 361,392円 |
最大額 | 1,781,595円 | 4,158,000円 |
最小額 | 1,080円 | 5,400円 |
平均では残置物処理と原状回復合わせて50万円ほどですが、最大では数百万円かかるケースもあるということです。費用の差は、居住者が亡くなってからの発見日数により大きく異なります。当然ながら発見が遅れれば遅れるほど、受ける損害は大きくなります。
また、孤独死が起こった部屋はいわゆる「事故物件」として入居希望者から敬遠される傾向にあり、家賃を下げて募集する必要が出てきます。上記の費用とは別に、値下げによる損失を被ることになります。
孤独死対策としての保険
では、孤独死による被害をどのように回避すればよいのでしょうか。第一の選択肢として挙げられるのは、孤独死保険です。ニーズの増加により孤独死保険もラインアップが充実してきています。オーナーが加入する商品のうち、いくつかをピックアップしました。
アイアル少額短期保険「無限社会のお守り」
賃貸住宅戸室内で孤独死・自殺・犯罪死が発生した場合、
【1】 家賃保証保険金(1事故あたり200万円、12か月分限度)
【2】 原状回復費用保険金(100万円を限度)
【3】 事故見舞金(原状回復費用保険金の支払い事由に該当しないとき、5万円)
が支払われる。
あそしあ少額短期保険「大家の味方」修理費用担保特約
火災、風災、水災などの事故に対応する保険で、特約を付帯することで、戸室内で入居者が死亡した場合に、戸室の修理費用を300万円まで補償するほか、最大50万円の臨時費用保険金が支払われる。
三井住友海上「GK すまいの保険(家庭用火災保険)」家主費用特約
火災保険に特約を付帯することで、賃貸住宅内での死亡事故発生に伴う空室期間、家賃値引き期間分の家賃収入の損失や、清掃、脱臭、遺品整理等にかかる費用を補償する。
孤独死のみを対象とする単独型の保険もあれば、火災保険の特約として付けるタイプのものもあります。またこれら以外に、借主が契約するものもあります。さまざまなタイプがあるので、オーナーは自分の物件に合ったものを選ぶとよいでしょう。
保険以外の対策はある?
孤独死保険で損害がある程度カバーできても、孤独死そのものを防ぐことはできません。孤独死を防ぐにはさらに別の手立ても必要です。大規模な物件のオーナーであれば、居住者向けイベントを開くなどしてコミュニティの充実を図るというのも、効果的な策となります。
それほど大規模の物件でないなら、外部サービスの利用を検討してもいいでしょう。たとえば、自治体や郵便局、NPO法人等による安否確認サービス、民間企業による見守りサービスなどが考えられます。ただし、費用面や入居者のプライバシーの問題もあり、不動産オーナーがどこまで踏み込めるかは難しいところです。
孤独死リスクを不安に感じるオーナーは、不動産管理会社などに一度相談してみてはいかがでしょうか。(提供:YANUSY)
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