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貴重な高級ワインも月会費の980円でグラスワイン50mlからほぼ原価で飲めるので、世界観が変わると話題沸騰(画像=Foodist Media)

DNAから探る、野口良介という人間

21歳の頃、野口氏は迷っていた。大学を休学して、街コンとワインを掛け合わせたイベント会社をつくった後、大学に戻ってアパレル会社を立ち上げたり、ワインバーをやったり、人材紹介会社を設立したりした。それでも飲食への抵抗はぬぐい切れない。そこまで躊躇するには深い理由がある。

実をいうと、彼の父は飲食店を経営していた。経営は順調で、一時は店舗数を7つまで伸ばす。しかし順調に思えた矢先、バブル崩壊の影響で経営難に直面。野口氏が10歳の頃には1店舗を残してすべての店舗がなくなってしまった。残ったのは2億円を超える借金。目の前で起こる惨劇を見て幼いながらに感じた。飲食は怖い、と。

「飲食は時代の変化に合わせていかないと生き残れません。どんなに新しい業態でも10年経てば古くなってしまいますから。だけど変化するのも難しい業界です。リスクがあまりにも大き過ぎる。それが飲食に対する、僕の印象でした」

一方で、彼を飲食に突き動かすものがあった。それがワインだ。20歳の頃に出合った「ジョルジュ・ルーミエ作 シャンボール・ミュジニー2004」。その味に衝撃を覚えて以来、ワインスクールに通ったり、ワインの試飲会に参加したりと、ワインの世界にはまっていく。

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(画像=一本のワインとの出会いを通して人生が変わると教えてくれた(画像=Foodist Media))

その経験を通して、得るものは多かった。通っていたワインスクールで投資家に出会い、パラダイムシフトが起こる。「世の中にはこんなに金持ちがいるのか」という純粋な驚きとともに、彼らの知見の高さに驚いた。そうした経験が『sanmi』の誕生につながる。

彼はよく誤解される。それは昔からだそうで、野口氏も「大学時代、友人たちがチェーン店に行く中、僕だけは自分の行きたい店に行っていました。周りから見たら変人だったかもしれませんね。だけど、美味しい料理を出している店があるのだから、できる限りそちらの方を食べたかったんです」と笑う。いくつかの彼の軸の中でも、昔から味覚に対するこだわりは人一倍強い。だが、そのこだわりが社会に風穴を開けて、今、新しい価値をつくり出そうとしている。

「僕は『人は味覚が9割』だと思っています。どこかで聞いたことのある使い古されたキャッチコピーかもしれませんが(笑)。つまり、人との相性。カップルや結婚生活で味覚の差異で幻滅したり、喧嘩したりすることって多々あると思うんですよ。朝のみそ汁の塩味がめっちゃ強かったり、好きなジャンルが違いすぎたり、好き嫌いが真逆だったりしたら絶対疲れると思うんです。まぁ、そこに極大の愛があれば乗り切れるのかもしれませんが(笑)。逆に食事に興味がない同士でも成り立つと思います。食に興味がないというベクトルで味覚が一致しているので良いのはないでしょうか。

例えば、ワインの味わいや要素を3つの評価軸に分けたとしましょう。僕はその要素の一つでも優れていたらこのワインはここが面白いと感じて楽しみます。だけど3つとも優れていないと、『このワインのここがダメだね』と否定的に扱う人も少なくありません。加点法か減点法かという話でありますが、『こういうワインがあってもいいじゃない、嗜好品だし、味覚も趣味嗜好も違うのだから!』という心持ちでワインの多様性や味わいを心から楽しむことが作り手やインポーター、ワインに対しての敬意だと考えています。

少し大げさな表現ですが、味覚には人間性が反映されているのです。だからこそ味覚が合うと、その他の相性もいい傾向があります。『sanmi』や『sanmi Lab』には、日々、多様な趣味嗜好と味覚を持つ方がいらっしゃいます。そうした場を活用して、人と人はもちろん、人とレストランとの新しい出会い方などを実現するプラットフォームをつくっていきたいです」

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(画像=ワインと料理のペアリングは絶妙なものばかり(画像=Foodist Media))

イノベーションは若者、ばか者、よそ者から起こると言われている。もしかしたら、彼をばか者だと感じる方もいるかもしれない。もしくは夢見がちな若者だ、と。だが彼は一つひとつの経験を成長につなげ、しっかりと糧にしてきた。まるでワインのようにじっくりと熟成させ、味わうように。だからこそ、それぞれの経験が深い味わいを生み、多くの方を引き付けようとしている。野口氏が若者でもばか者でもよそ者でも構わない。ただ、これまでにない新しいアプローチで業界に新風を吹かせるのは間違いなさそうだ。

『sanmi』『sanmi Lab』
住所/東京都港区赤坂3(詳細は会員のみに公開)
営業時間/【sanmi】19:03~23:03(営業は月に3日間/完全予約制)、【sanmi Lab】18:33~23:03(月曜~土曜)
定休日/【sanmi Lab】日曜、そのほか月に3日

(提供:Foodist Media

(執筆者:三輪大輔)