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カウンターの上の手書きの短冊や黒板もスタッフの個性を表すツールの一つ(画像=Foodist Media)

異なる表情を持つ2フロアだから成り立つ“強み”

『座魚場 まるこ』は2階建てだが、メインは2階だ。ビジネス街にある居酒屋だと、1階がメインフロアで2階が宴会用のフロアになる傾向が強い。会社の歓送迎会などで団体客を取り込んで売上を立てていこう……、そう考えてフロア構成を組み立てていくのがビジネス街で勝負する定石だ。しかし小嶋氏は「宴会ができるから選ばれる。居酒屋にとって、それほど面白くないことはありません」と話す。

「そもそも宴会は流れ作業になりがちなので、スタッフも働いていて面白くありません。この料理が食べられるからとか、このスタッフがいるからといった理由で選ばれるから面白いのです。そうした環境を与えてあげることでスタッフも成長していくと思います」 

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ドブ漬けがあり大衆酒場の雰囲気を楽しめる2階カウンター(画像=Foodist Media)

その言葉通り、メインとなる2階にはカウンターが4つあり、スタッフの力量を存分に発揮できる造りだ。メインの組み客数は2名から4名なので、それぞれに密な対応をしなければならない。一見すると高いサービス力が必要そうだが、同店の接客ルールはただ一つ。自分がされて嬉しいと感じることを行う。たったそれだけだが、同社ではこれまで数多くのハイパフォーマスを発揮するサービスマンが育っている。その背景を小嶋氏はこう説明する。

「自分がお客さんの立場だったら、どうされたいか。うちの接客で大切なのはそれだけです。マニュアルは一切ありません。例えば、自分のお父さんやお母さんが来ても、同じ接客をするのか。そう厳しく突き詰めていくことで、誰もが高いサービス力を発揮できます。状況に合わせて自分で何が最適かを考える力を身につけることが、結局は近道なのではないでしょうか」

一方、1階はウェイティング機能の役割も果たす立ち飲みスタイルだ。小皿料理やサッポロ、サントリー、キリン、アサヒの4社のビールがそろう。仕事帰りに一息ついて帰るビジネスパーソンの利用も多く、1階の客単価は1,000円ほどとかなりリーズナブルだ。ただ4メートルを越える立ち呑みカウンターなど、さまざまな新しい仕掛けも施し、次回の出店に向けた布石を打つ。

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1階は上とは打って変わって、料理人の腕をより間近に感じられるカウンター席もある(画像=Foodist Media)

「スタッフのため」という思いが、会社を成長させる

オープン2か月で同店の月商は600万円を超えた。店舗全体の客単価が3,000円であることを考慮すると、驚愕の数字だ。「一回転目とランチ帯が勝負」と小嶋氏が語るように、集客すべき時間帯にしっかりと集客できていることが結果に繋がっている。ただ伸び代はまだまだ大きい。

「新しい街に出店を決める際、徹底的に歩きます。どのような属性の人がどのような導線で生活をしているか。足で稼いだ情報を元に、必要とされている店舗像を描いていきます。明確に絵が描けたとき最終的な出店の判断を下していますが、今回、その分析に間違いはなかったと感じています。ただ定着となると話は別です。地域の方々に受け入れられるまで時間はかかります。そこに近道はありません。一見さんではなく、来店されたことがある方からの紹介や口コミで訪れてくれるお客さんが増えるように日々の営業に取り組んでいきたいです」

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オープン2か月で月商は600万円に到達(画像=Foodist Media)

楽コーポレーションの卒業生は二等立地、三等立地で繁盛店をつくるのが上手いことで知られている。しかし意外なことにビジネス街への進出は少なく、今回の小嶋氏の挑戦が新しい道筋となる可能性がある。ただ、それを実現できたのはスタッフのお陰だと同氏は話す。

「コジマ笑店はスタッフのための会社です。僕一人だったら屋台を引いていても生活はできます。ただ会社はスタッフがいないと成り立ちません。スタッフの可能性の分だけ、新しいステージに挑戦できる。それがうちの面白いところだと感じています」

スタッフのためを思い出来上がった『座魚場 まるこ』が浜松町“一”の繁盛店になる日は近い。

『座魚場 まるこ』
住所/東京都港区浜松町2-12-11
電話番号/03-6432-4474
営業時間/16:00~23:00
定休日/日曜

(提供:Foodist Media

(執筆者:三輪大輔)