1棟マンションを所有すると、自分で1棟丸ごと経営することができるので、多くを学ぶことができます。経営力に優れた大家であれば、競合物件との差別化も図ることができるでしょう。一方で、1棟を所有する場合、修繕に関するコストもすべて自己負担となるため、抱えるリスクも大きくなります。
区分マンションであれば、毎月修繕積立金という形で将来の大規模修繕に関わるコストを前払いしています。また、そのマンションの区分所有者が各自修繕積立金を支払うことで、マンションとしていきなり大きな修繕費が発生しないように管理されているケースがほとんどです。しかし、1棟マンションはそのような修繕計画も自分で立てなければなりません。
1棟所有者にとっては目を背けたい事実ですが、長期保有を予定している場合は予めシミュレーションしておくべきことです。今回は、保有後に発生する大きなコストについてお伝えしたいと思います。
大規模修繕コスト(屋上防水・外壁補修・外壁塗装)
まず初めに考えておくべきことは、大規模修繕と言われる屋上防水・外壁補修・外壁塗装です。
これらの修繕は、一般的に12年~15年に1回のペースで行われることが多いので、12年に1回のペースで発生するシミュレーションを立てておけば、実態に近い数値になるでしょう。
費用については、物件価格の10%程度と言われています。ただし、物件の構造や劣化状況、屋上防水の面積など、物件によるところが大きいため、一概にいくらくらいかかるということが言いにくい部分です。
中古物件の購入を検討している際は、購入時点の1~3年前に大規模修繕工事が行われた物件を購入するのも1つの戦略であり、有力な判断材料になります。
エレベーター交換コスト
エレベーターがある物件は入居者募集の時にはプラス要因になりますが、維持コストが発生するという意味ではリスクでもあります。
エレベーターの部品やかごをすべて取り換える工事をすると、1,000万円程度かかると言われていますが、必要な部品だけを取り換えるケースもあり、その場合は250万円程度で済むこともあるようです。
エレベーターは入居者の命に係わるものですが、定期メンテナンスを前提として、計画性をもって必要な部品だけ変えていくことでも問題はないと思います。例えば、エレベーターのかごを交換することは、見た目は新しくなりますが、機能はまったく変わりません。それに数百万円のコストをかける価値があるかどうか、という視点で工事内容を考えることも必要でしょう。
給排水管・貯水槽交換コスト
最後は、給排水管や貯水槽、ポンプ関連のコストです。水関連の設備も入居者の生活に大きくかかわるものなので、重要な修繕と言えます。給排水管については、木造であればそこまで多額の費用はかかりませんが、RCマンションの場合は修繕費用が高額になることが多いです。
貯水槽については、水道直結型であれば修繕はさほど難しくありません。しかし、高架水槽形式のように、一旦地下に水を貯めて、そこから屋上に水を送り、屋上の高架水槽から各部屋へ水を供給する形式だと、屋上に水を送るポンプに負荷がかかるため、20~30年でポンプを取り換える必要があります。
今回は物件保有後に発生する大きなコストについて説明しましたが、これらについて事前に想定しておくことが大切です。
中古物件を購入する場合は、このようなコストが将来発生することを想定しつつ、見積もりを取れるものは取得しておきましょう。将来、「修繕したくても資金不足で修繕できない」という事態にならないように、しっかりシミュレーションした上で、修繕計画を立てるようにしたいものです。(提供:YANUSY)
【あなたにオススメ YANUSY】
・副業ブームの日本!サラリーマン大家になるなら覚えておきたいこと
・2019年以降の不動産投資は「コミュニティ」が欠かせない
・賃貸業界の黒船になるか。インド発のOYOの実態
・不動産所得での節税に欠かせない必要経費の知識
・賃貸管理上でのトラブル対応術とは?