トランプ大統領が訪日

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(画像=PIXTA)

アメリカのトランプ大統領が令和初の国賓として3泊4日間(5月25日~5月28日)に日本を訪ねた。トランプ大統領は訪日中に、皇居での天皇、皇后両陛下との会見、迎賓館での日米首脳会談、そして拉致被害者家族との面会と神奈川県横須賀市の海上自衛隊基地に停泊中の護衛艦「かが」への乗艦などの日程をこなした。アメリカ大統領が海上自衛隊の護衛艦に乗り込んだのはトランプ大統領が初めてで、安倍首相は日米同盟が強くなったことをアピールした。

但し、このような公式日程よりも注目されたのは国技館での大相撲観戦、千葉県の茂原カントリークラブでのゴルフ会談、六本木の高級炉端焼き店での食事会など朝から晩まで続いた手厚いオモテナシと、安倍首相とトランプ大統領の二人の親密感を表すゴルプ場でのツーショットだろう。想像を超えたオモテナシに対して、「トランプ氏は観光旅行で日本に来たのか、安倍首相はツアーガイドなのか」という野党などからの批判の声もあったものの、マスコミが連日、日米両首脳の同行を競争して好意的に報道したおかげで、安倍首相が今回取ったオモテナシに対する世間の評価はそれほど悪くない。

一方、世界1位と3位の経済大国のトップ同士の蜜月に周辺国は動揺を隠せなかったに違いない。韓国のあるマスコミの論説には「もう、ゲームは終わった」とまでツーショットに対する感想を述べている。安倍首相に対するトランプ大統領の態度が韓国の文在寅大統領(以下、文大統領)との会談時とはまったく異なったからである。実際に、韓国の文大統領は今年の4月11日にホワイトハウスを訪ねてトランプ大統領と会談を行った。しかしながら、実際の会談時間はたったの2分(通訳を含めて)であったと報道されている。トランプ大統領と安倍首相が16ホールを回ったゴルフ外交の時間だけで約2時間30分であることを考えるだけでも、文在寅大統領との会談時間がどのぐらい短かったのかがうかがえる。

ゴルフ外交は安倍首相の得意分野とも言える。戦後、アメリカ大統領と日本の首相がゴルフをしながら会談(ゴルフ外交)をしたのは、安倍首相の祖父である岸信介のみ(アイゼンハワー大統領と1回)である。なのに、安倍首相はこれまで5回もトランプ大統領とゴルフ外交を行った。今まで、11回も日米首脳会談をしながら一緒に食事をした時間等を加えると二人が話し合った時間はかなり長いと言える。日米貿易交渉や北朝鮮問題など多様なテーマに対して意見が交わされた可能性が高い。従って、今後、トランプ大統領へのパイプ役として、安倍首相の存在感は大きくなると考えられる。韓国の文在寅大統領は北朝鮮の核問題の仲裁者になることを計画していたものの、現在の日米韓の関係を見ると、仲裁者の役割は安倍首相になる可能性が高いのではないかという意見が多い。

現在、韓国政府の外交関係が悪化しているのはアメリカだけではない。韓国は隣国である日本と中国との関係も良くなく、解決の糸口がつかめない状況である。中国とは2016年に在韓米軍への最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の配備が慶尚北道(キョンサンプクト)・星州(ソンジュ)に決まってから、「限韓令」により韓中関係は急速に冷え切っており、いまだに本来の状態に戻っていない。

日本との関係はさらに深刻である。2018年10月30日に日本の最高裁判所に相当する韓国大法院は日本による朝鮮半島統治時代の元徴用工4人が新日鉄住金株式会社を相手に損害賠償を求めた裁判で、元徴用工の請求を容認した差し戻し審に対する新日鉄住金の上告を棄却し、元徴用工に一人あたり1億ウォン(約1千万円)を支払うよう命じた判決が確定した後、日韓関係は急速に冷え込んで、現在史上最悪の状況に至っている。

韓国政府は6月に大阪で開催されるG20サミットに合わせて日韓首脳会談の開催を日本政府に打診しているものの、日本側は消極的な姿勢を示している。つまり、安倍首相は米中露の首脳やEUの執行委員との会談、そして新興国の首脳との会談を優先的に考えており、現時点では日韓首脳会談が実現する可能性は高くない。

但し、幸いに日韓関係がきしんでいる中で民間の交流は盛んでいる。2018年に来日した韓国人観光客数は約753.9万人で1年前に比べて5.6%も増加した。国別には中国に次いで最も多い数値である。一方、2018年に韓国を訪ねた日本人観光客数は約295万人で、同期間に日本を訪ねた韓国人観光客数を大きく下回っているものの、1年前と比べて27.6%も増加した。さらに韓国人の街として知られている「新大久保」は、女子高生に人気のある街に関する調査で「原宿」、「渋谷」に次いで3位にランクされた。

草の根や民間の交流は進むのに、国同士の関係がこじれている日本と韓国、どうすれば関係改善の糸口をつかめることができるだろうか。さらに、安全保障や経済の面で欠かせないアメリカや中国との関係をどうすれば修復できるのか。外交が直面している四面楚歌の状況を乗り越えるための知恵や決断が必要な時期である。今回の日米首脳会談から学ぶ点は何か、韓国政府は慎重に検討を行うべきである。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

金 明中(きむ みょんじゅん)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

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