今年に入り、Jリート(不動産投資信託)市場は引き続き堅調な動きとなっています(図表1)。東証REIT指数(配当除き)は、昨年の7%上昇に続いて今年も既に9%上昇しています(6/27時点)。一方で、国内株式市場は米中対立の激化などを背景に下落しており、Jリート市場の上昇に対して警戒する声も聞かれます。
それでは、Jリート市場はどうして好調に推移しているのでしょうか。その理由を探るため、2015年からの年間騰落率について、(1)分配金の成長、(2)10年金利、(3)Jリートに対するリスクプレミアム(分配金利回り-10年金利)の3つの要因に分解し、その寄与度を確認したいと思います。
なお、Jリートの価格は、下記の通り、「分配金÷分配金利回り」で表わすことができます。さらに、分配金利回りは「10年金利+リスクプレミアム」に分解できます。したがって、分配金が増加(減少)、もしくは10年金利及びリスクプレミアムが低下(上昇)した場合、価格が上昇(下落)する関係にあります。
図表2の通り、(1)分配金は2015年から現在まで累計で31%増加し毎年プラスに寄与しています。次に、(2)10年金利は累計で0.46%低下し(0.32%⇒-0.14%)、2017年を除いて毎年プラスに寄与しています。これに対して、(3)リスクプレミアムは不安定な動きを示しています。2015年から2017年にかけてリスクプレミアムは1.4%上昇(2.7%⇒4.1%)し、大きくマイナスに寄与しました。つまり、分配金の増加や10年金利が低下したにもかかわらずリスクプレミアムの上昇がその効果を打ち消してしまい、この間に東証REIT指数は12%下落しました。リスクプレミアム上昇は、不動産市況のピークアウト懸念や世界的な金利上昇、Jリート投信からの資金流出が理由として挙げられます。しかし、18年以降はこれらの懸念が払拭されリスクプレミアムは落ち着きを取り戻しています。この結果、Jリート市場は分配金の増加や10年金利の低下を素直に反映し上昇していると言えます。
最後に、今後の見通しについてです。図表3の通り、Jリートの分配金は足もと年率6%程度のペースで増加していますが、分配金の源泉となる賃貸市場が堅調なため、引き続き成長が見込まれます。10年金利については既に十分低い水準ですが、景気の先行き不透明感もあり市場では追加緩和の可能性が指摘されています。一方で、リスクプレミアムは将来の期待を織り込んで動くため予想は難しいものの、現行水準(4.0%)は過去平均(3.4%)と比べて高く、大きく上昇するリスクは限定的でしょう。このように考えると、年初来高値の水準にあるJリート市場ですが、外部環境が大きく変動しない限り、引き続き底堅い展開が期待できそうです。
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岩佐浩人(いわさ ひろと)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 不動産調査室長
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