7月に入り、米国の月内利下げ観測が強まる一方、雇用統計ほか予想を上回る米経済指標の発表もあって、ドル円は107~108円台での一進一退の展開に。足元では107円台半ばで推移している。
今後、月末のFOMCで0.25%の利下げが決定され、10月にも0.25%の追加利下げが決定される可能性が高い。ただし、この程度のいわゆる「予防的利下げ」に留まる場合、市場では完全に織り込み済み(先物市場の中心的な利下げ織り込み幅は年内0.75%)であるため、ドル円への影響は限られるだろう。米国経済は今後も堅調を維持すると見込まれ、FRBがさらに利下げを増発する可能性は低い。3カ月後の水準は現状程度と予想する。
ただし、この間に米中・日米通商協議、米債務上限問題、英EU離脱問題などのリスク材料が控えている点には注意が必要になる。それぞれ、協議決裂(関税引き上げ)、米国債デフォルト、合意なき離脱といった最悪の事態はメインシナリオではないが、緊迫する局面ではリスクオフや米利下げ観測上昇に伴う一時的な円高進行も想定される。
ユーロ円は、今月に入ってユーロ安が進行し、足元では121円台前半で推移している。緩和に前向きとされるラガルドIMF専務理事がECB次期総裁に決まったことで、緩和路線が踏襲されるとの見方が強まったためだ。ECBは今後FRBの利下げに追随する形で小幅なマイナス金利拡大に踏み切ると予想されるが、米利下げと同様、市場では既に織り込まれているため、影響は限定的だろう。3カ月後の水準は現状程度と予想している。
長期金利は、海外金利の影響を受けつつ▲0.1%台での推移を続けており、足元は▲0.14%台にある。欧米中銀が金融緩和に向う中、今後も低迷が予想されるものの、既に織り込みが進んでいるため、海外金利からの追加的な低下圧力は考えにくい。一方で、円高リスクが燻るなかで、日銀が円高を助長しかねない国債買入れの大幅な減額によって金利押し上げを図るとも思えない。3ヵ月後の水準は▲0.1%台前半から半ばと予想している。
(執筆時点:2019/7/19)
上野剛志(うえのつよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト
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