投信の運用状況がやや改善
8月9日に金融庁から「販売会社における比較可能な共通KPIの公表状況」が公表された。公表された資料によると、2019年3月末時点では2018年3月末時点と比べて、投資信託の運用状況がやや改善したことが明らかになった【図表1】。
2018年3月末時点(上段)では、運用損益率が「▲10%以上、0%未満」の比率が32%と最大であり、0%未満の顧客の比率が46%もあった。それが2019年3月末時点(下段)では、運用損益が「0%以上、+10%」の比率が32%と最大となり、0%未満の顧客の比率も35%に低下した。顧客比率の差異をとると、2018年3月末時点で運用損益が▲30以上、0%未満であった顧客の一部が、2019年3月末時点では0%以上、10%未満にシフトしたことが推察される【図表2】。
地銀の改善が特に顕著
次に、業態別に運用損益率が0%以上の顧客割合をみると、主要行等、地域銀行、(対面)証券、ネット系証券の割合が2018年3月末時点と比べて2019年3月末時点で上昇した。特に地域銀行の割合が53%から62%と9%も上昇し、運用状況の改善が顕著であった。その一方で、投信会社(直販)とIFAは2018年3月末時点で元々の割合が高かったこともあったのか、2019年3月末時点では低下した。
好調な内外REITが影響したのでは
2018年3月末時点と比べて2019年3月末時点の運用状況が改善した一番の要因としては、内外REITが好調であったことがあげられる。実際に2019年3月末時点で純資産総額が大きいファンドの2018年度の収益率をみると、内外REITファンド(赤太字)の収益率が18%から25%と特に高パフォーマンスであったことが分かる【図表4】。
内外REITファンドが好調な一方で、主に(対面)証券で販売しているテーマ型株式ファンド(青太字)はほぼ横ばいであった。そのため主要行等や地域銀行などと比べて、(対面)証券の改善度合が低かったのかもしれない。また、国内株式ファンド(緑太字)の下落が、投信会社(直販)とIFAの割合低下に影響したのかもしれない。
最後に
2019年3月末時点で運用状況が改善したのは、好調な内外REITの影響、つまり足元の運用環境の影響が出たといえるだろう。ただ、このように運用環境で一喜一憂するべきではないであろう。これから年によっては再び運用状況が悪化する年もあるかもしれないが、5年後、10年後はより多くの投資家が利益を出している状況となっていることを期待したい。
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前山裕亮(まえやまゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員
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