輸出数量(前年比)が9ヵ月ぶりのプラスに
財務省が8月19日に公表した貿易統計によると、19年7月の貿易収支は▲2,496億円の赤字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲2,000億円、当社予想は▲2,707億円)を下回る結果となった。輸出が前年比▲1.6%(6月:同▲6.6%)と8ヵ月連続の減少、輸入が前年比▲1.2%(6月:同▲5.2%)と3ヵ月連続の減少となったが、輸出の減少幅が輸入の減少幅を上回ったため、貿易収支は前年に比べ▲222億円の悪化となった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比1.5%(6月:同▲5.5%)、輸出価格が前年比▲3.1%(6月:同▲1.2%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比6.7%(6月:同▲3.2%)、輸入価格が前年比▲7.4%(6月:同▲2.1%)であった。輸出数量は18年10月以来9ヵ月ぶりに前年比でプラスとなった。
季節調整済の貿易収支は▲1,268億円と5ヵ月連続の赤字となり、6月の▲339億円から赤字幅が拡大した。輸出が前月比▲0.2%と2ヵ月ぶりに減少する一方、輸入が前月比1.2%と2ヵ月ぶりに増加した。
7月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=67.4ドル(当研究所による試算値)となり、6月の73.2ドルから大きく低下した。足もとの原油価格(ドバイ)は50ドル台後半となっており、通関ベースの原油価格は8月も60ドル台後半となることが見込まれる。
輸出を取り巻く環境は依然厳しい
19年7月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比10.1%(6月:同2.9%)、EU向けが前年比4.6%(6月:同▲4.5%)、アジア向けが前年比▲4.8%(6月:同▲5.3%)となった。
米国向けは半導体製造装置(前年比120.5%)、EU向けは自動車(同48.6%)の大幅増加(いずれも数量ベース)が輸出全体を押し上げた。
19年7月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比0.4%(6月:同▲2.0%)、EU向けが前月比7.0%(6月:同6.9%)、アジア向けが前月比0.4%(6月:同5.6%)、全体では前月比1.3%(6月:同5.2%)となった。
アジア向け輸出は前年比ではマイナスが続いているが、前月比では6月に続きプラスとなっており、下げ止まりの兆しも見られる。7月の輸出は全体として強めの結果と評価できる。
ただし、海外経済は製造業を中心に減速傾向に歯止めがかかっていないこと、グローバルなIT関連財の調整が継続していること、米中貿易摩擦が深刻化していること、為替が円高に振れていることなど、輸出を取り巻く環境は依然として厳しく、輸出がこのまま回復に向かう可能性は低い。輸出はこのところ月々の振れが大きくなっており、8月は反動で大きく落ち込む可能性もある。輸出下げ止まりの判断は少なくとも8月の結果を待つ必要があるだろう。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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