コアCPI上昇率は前月と変わらず

消費者物価
(画像=PIXTA)

総務省が8月23日に公表した消費者物価指数によると、19年7月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.6%(6月:同0.6%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:0.6%、当社予想も0.6%)通りの結果であった。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.6%(6月:同0.5%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。生鮮食品が前年比▲0.7%(6月:同2.8%)が再び下落に転じたため、総合は前年比0.5%(6月:同0.7%)とコアCPIの伸びを下回った。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

コアCPIの内訳をみると、電気代(6月:前年比2.5%→7月:同2.7%)は上昇幅が若干拡大したものの、ガス代(6月:前年比3.9%→7月:同3.0%)の伸びが鈍化したこと、灯油(6月:前年比0.3%→7月:同▲1.1%)が2年8ヵ月ぶりに下落に転じたこと、ガソリン(6月:前年比▲2.7%→7月:同▲4.3%)の下落幅が拡大したことから、エネルギー価格の上昇率が6月の前年比1.2%から同0.6%へと縮小した。

一方、食料(生鮮食品を除く)は前年比1.2%(6月:同1.2%)と3ヵ月連続で1%台の伸びとなった。外食は前年比0.9%(6月:同1.0%)と1年1ヵ月ぶりに1%を割り込んだが、原材料費、物流費上昇の影響から、菓子類(6月:前年比2.6%→7月:同2.8%)、麺類(6月:前年比3.4%→7月:同3.6%)の伸びが高まった。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.04%(6月:0.10%)、食料(生鮮食品を除く)が0.30%(6月:0.27%)、その他が0.26%(6月:0.22%)であった。

食料(生鮮食品を除く)の上昇品目数は6割以上

消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、7月の上昇品目数は302品目(6月は303品目)、下落品目数は164品目(6月は162品目)となり、上昇品目数が前月から若干減少した。上昇品目数の割合は57.7%(6月は57.9%)、下落品目数の割合は31.4%(6月は31.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は26.4%(6月は27.0%)であった。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

コアCPI上昇率は鈍化傾向が続いているが、上昇品目数は18年初め頃の水準まで増加しており、食料品(生鮮食品を除く)については、上昇品目数の割合が6割を超えている。

コアCPI上昇率は消費税率引き上げ後も1%を下回る見込み

コアCPI上昇率はエネルギー価格の上昇幅縮小を主因として鈍化傾向が続いている。エネルギー価格の上昇率は18年10月の前年比8.9%をピークに19年7月には同0.6%まで縮小したが、8月に17年1月以来のマイナスとなった後、年末にかけてマイナス幅が拡大することが見込まれる。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

外食、食料品を中心に原材料費、物流費、人件費などのコスト増を価格転嫁する動きが見られること、上昇品目数が増加していることなどを踏まえれば、物価の基調がここにきて弱まっているわけではないが、エネルギー価格下落の影響を打ち消すほどの強さはない。コアCPI上昇率は消費税率引き上げ前の9月にはゼロ%台前半まで鈍化する可能性が高い。

10月以降のコアCPI上昇率は、消費税率引き上げによって1%ポイント程度押し上げられる(ただし、電気代、ガス代、通信料(固定電話、携帯電話)などは新税率の適用が11月以降となる)一方、幼児教育無償化によって▲0.6%ポイント程度押し下げられる。これらの制度変更要因も含めたコアCPI上昇率は10月以降も1%を下回る水準で推移することが予想される。

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

【関連記事 ニッセイ基礎研究所より】
2019・2020年度経済見通し(19年8月)
貿易統計19年7月-輸出は下げ止まりの兆しも見られるが、輸出を取り巻く環境は依然厳しい
鉱工業生産19年6月-2四半期ぶりの増産も、力強さに欠ける