賃貸経営において最も怖いものは「空室」だろう。家賃収入が減ればローンなどの支払いが手持ち資金の持ち出しになる。オーナーは管理会社からの連絡を、ひたすら待つことになるだろう。しかし、「待つ」だけでなく、オーナーが自らできることはないのだろうか。今回はコストをかけずに実施できるオーナー主導の入居者募集について考えてみた。

入居者募集は管理会社がするものなのか?

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(画像=Africa Studio / Shutterstock.com)

「物件の客付けは管理会社がするもの」と考えているオーナーは多い。しかしそれだけでは不十分だろう。管理会社は、本来「入居者管理」と「建物管理」が主な仕事であり、オーナーが支払う毎月の管理委託料を収入としている。一方で仲介会社の仕事は物件を借りたい人を探して客付けすることだ。管理会社のような毎月の収入はなく、客付けによる仲介手数料や広告料が収入になる。客付けを得意とするのはむしろ仲介会社なのだ。

満室経営を実現しているオーナーの中には、空室情報が入ると同時に自らも動き出している人が少なくない。自分の物件が空室になることを、周辺の仲介会社に知らせるのだ。管理会社も宅地建物取引業者としてのライセンスを持っているので、入居者募集の告知をしてくれる。ただ、仲介を得意とする不動産会社と比べて、見つけるまでに時間がかかり、他の物件に埋もれてしまう可能性がある。だから、積極的なオーナーは、自らが営業マンとなり、物件の宣伝をするのだ。自分で吟味して買った物件だ。良いところも弱いところも一番知っているだろう。

オーナー自らが入居者募集をする方法

それでは、オーナーが営業マンとして物件を宣伝する場合、どのように行動しているのか、具体的に見ていこう。

1. 管理委託契約書の確認

最初に管理委託契約書の「入居者募集条項」を確認しよう。入居者募集を他社に依頼できない旨が記載されているかもしれない。実はこういったケースでも、工夫次第で他社に客付けを依頼できるのだが、この縛りのために損をしているオーナーが少なくない。

2. 管理会社への提案

管理会社が他社での客付けを禁止しているのであれば、その理由は管理会社の取り分が減るからだ。実は客付けで取り分が減らないように調整する方法もある。具体的には、他の仲介会社が客付けしたときでも、契約手続きは管理会社が行うようにする。仲介手数料は管理会社の収入となるが、仲介会社には、物件掲載に関わる広告費を支払うということにするのだ。こうすることで、管理会社にも、仲介会社にも、収益が上がることになる。

3. 広告料の設定

客付けしてくれた仲介会社への広告料はオーナーが独自に決めることができる。広告料が多いほどたくさんの見込み客に物件を紹介でき、決まる確率が高まるのは言うまでもない。空室期間の収入減や客付けのための家賃値下げのリスクを勘案すると、ある程度の広告料をかけてでも、早めに入居者を決めてしまうのが得策になるだろう。

4. 物件資料の作成

仲介会社を回るときは、手ぶらではなく、物件資料を用意して、直接渡そう。自分自身の物件なのだ。他の物件との差別化を図るために、「売り」となる部分や引き付けるキャッチコピーを打ち出そう。物件の写真を、さまざまな角度から撮影し、仲介会社に提供するのも非常に有効だ。最近のインターネット広告では、間取りだけでなく、外観から居室内まで、さまざまな写真が掲載されている。多くの人たちがインターネットで部屋探しを行っていることを念頭に置いて準備しよう。

5. 営業に回る

物件資料やデータを準備すれば、いよいよ営業だ。物件の最寄り駅周辺の仲介会社はもちろん、1~2駅離れたところも回るようにしよう。地域密着の不動産会社は地元エリアに顧客を持っている。少し離れていても狙い目である。冷たくあしらわれることがあるかもしれないが、中には親身に話を聞いてくれる担当者もいるはずだ。そういう仲介会社には定期的に訪問しよう。

担当者には、最近の賃貸物件の動きやトレンドなどを聞いておこう。日々現場で直接顧客と接している担当者の意見は大変貴重だ。いくつもの物件を持ち、精力的に活動しているオーナーは、時間があれば不動産会社を訪問している。良い関係にある担当者が複数いることは、将来さらに投資物件を増やしていく上で有利に働くだろう。懇意の不動産会社を作るためにも定期的に訪問して、良好な関係性を育もう。

入居者決定において気を付けること

複数の会社で客付けを依頼すると、入居者の質がオーナーの考えているものと異なる場合がある。これには、管理会社によるチェック機能が大切だ。入居者から申し込みが入った時点で、管理会社にはきちんと審査をするように要望を出しておこう。いくら空室は嫌だといっても、物件全体の質が下がるような入居者や家賃滞納などが発生するリスクは避けたい。オーナー主導の入居者募集においても、管理会社との密な連携が求められる。入居者募集は、オーナーの収入に直結する非常に大切な仕事だ。管理会社任せにするのでなく、オーナーが自ら動くという選択肢もあることを覚えておこう。

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