要旨
2020年4月施行予定改正債権法の解説の第三回目は、定型約款についてである。保険だけでなく、電気を使ったり鉄道に乗ったりするときにも約款が関係してくるが、なぜ読んだことのない約款の個々の条項まで法的な効力を有するかについては、これまで法律は定めを置いていなかった。
今回の債権法改正では、特定者が不特定多数と行う定型取引について、特定者が定型約款を準備し、その定型約款を契約内容とすることを相手方と合意したとき、あるいは特定者が契約は定型約款によることをあらかじめ示した上で定型取引を行うことを相手方と合意したときには、相手方は定型約款の個々の条項にも合意したものとみなすというルールを設けた。
他方、定型約款の条項のうち、相手方にとって不利な条項のうち信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものは合意がないものとみなすこととした。これにより不当条項や不意打ち条項は効力をそもそも有しないこととされた。
定型約款締結後の条項の変更は、相手方の利益に適合する場合か、あるいは定型約款の変更が合理的であって、かつ変更時期までに周知を行った場合には、有効になるとの規律が設けられた。