人生において最も重要な資本である「健康」を維持し、QOLを上げていくために必要な健康知識を聞く内科医・名取宏氏へのインタビュー。

第2回はがん検診を中心に検診のメリットとデメリットについて語ってもらった。

「あらゆる検診に害がある」

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(画像=pro500 / shutterstock.com, PIXTA, ZUU online)

――検診についても健康食品やサプリメントと同じように「検診を受けるだけなら害もないだろうしいいんじゃないの?」と考える人も多いと思いますが。

医師向けに書かれた検診の教科書の序文には「あらゆる検診に害がある」という記述があります。

特にがん検診については、20~30年ほど前から「デメリットがあるのではないか」と言われ始めています。実際、臨床試験などでは、「利益もあるけれど限定的で、害は想定より大きい」という結果が出てきているのです。

乳がん、大腸がん、子宮頸がんについては検診の有効性が国際的に認められているのですが、それ以外のがん検診は害が確実にある一方で、利益はあるのかわからないという見解が一般的になりつつあります。

以前はどのようながんであっても「検診で早く発見して治しましょう」という考えが一般的でした。しかし、医学界でパラダイムシフトが始まっており、そうした流れが4〜5年前から一般にもおりてきています。若い医師の方々はみんな勉強しているので、そのうちこうした考えが常識になると思います。

――確かに、がんというと「早く見つけて、早く切らないと」といったイメージがありますね。

残念ながら、死に至るがんというのは、検診を受けていたとしても死んでしまう可能性が高いのです。見つかれば助かる、検診を受けたことで対応できるレベルのがんというのは本当に一握りなのです。

高額ながん検診はコスパが悪い

――それでも「年1回会社の健康診断を受けるだけでは不安」「時間とお金に余裕もあるし、がんを防ぐためになんとかしたい」と考える人もいると思います。そうした人はどんな検診を受ければ良いのでしょうか。