矢野経済研究所
(画像=DigitalPen/Shutterstock.com)

開催中の「第46回東京モーターショー2019」を観た。“ひろげよう。思い描く明日を。” の一行から始まるステートメントのとおり「CASEが実現する未来のモビリティ」のプレゼンテーションに会場は溢れていた。
魔法使いの箒をイメージしたモビリティ「e-broon」やラストワンマイル物流を担う自動走行車「マイクロパレット」がテクノロジーの可能性をこれまで以上に “身近な未来” として感じさせるとともに、市販車を1台も置かなかったトヨタのブースが “脱・クルマ” に対する業界の危機感と可能性を象徴する。

一方、海外勢の不在はやはり寂しい。参加企業はメルセデス、ルノー、アルピナなど4社5ブランド、前回の9社15ブランドから大幅減である。アウディ、ポルシェを擁するVWグループ、BMW、ボルボといった人気ブランドも出展を見送った。ピーク時の6割減まで落ち込んだ来場者数に対する広告効果という視点に立てば合理的な判断とも言えるが、まさにグローバル市場における日本市場のポジションを痛感せざるを得ない。加えて、“未来” の先端をゆく “もう一つの企業群” の不在も残念だ。もちろん、“日本自動車工業会” 主催イベントであれば当然とも言えるが、グーグル、アマゾン、アップル、百度が提案する未来も見てみたい。

30日、日立製作所とホンダは、日立系1社、ホンダ系3社の系列部品会社4社の統合を発表した。統合による新会社の売上規模は1兆7000億円規模、国内ではデンソー、アイシン精機に次ぐ第3位の部品メーカーとなる。
同日、米WSJ紙がFCAとPSAが統合に合意したと報じた。実現すれば伊フィアット、アルファ ロメオ、米クライスラー、仏プジョー、シトロエン、独オペルといったブランドを持つ世界第4位の自動車メーカーが誕生する。

産業の定義そのものが書き換えられる “100年に一度の変革期” は中途半端な覚悟では乗り越えられない。上記2つの統合の狙いが、巨額の研究開発投資が求められるCASEへの対応であることは言うまでもない。それでも部品ではデンソー、ボッシュ、コンチネンタル、完成車ではVWグループ、ダイムラー、トヨタといったトップランナー群に遠く及ばない。
今年6月、FCAはルノー・日産・三菱自グループへの統合提案を日産の反対で取り下げた。その日産は親会社ルノーとの関係について未だ逡巡したままである。ルノーもいつまでもそこに留まっているわけにはゆくまい。統合するFCA、PSAの2社にルノーの研究開発費を加えるとちょうどトヨタと並ぶ。もしもそうなれば置き去りにされた日産・三菱自の選択肢は再び狭まる。未来に先手を打つためにも早急に “ガバナンス改革” を決着させ、前へ踏み出していただきたい。

今週の“ひらめき”視点 10.27 – 10.31
代表取締役社長 水越 孝