(本記事は、佐々木 理恵氏の著書『ここだけ読めば決算書はわかる!2020年版』新星出版社の中から一部を抜粋・編集しています)
決算とは、1年間のビジネスの総まとめ
会社は、商品や製品を売ったり、あるいはサービスを提供するなど、さまざまなビジネス、つまり経営活動を行います。この経営活動を、原則として1年間を1つの区切りとして、結果を総まとめするのが、決算と呼ばれる作業です。
決算で総まとめするのは、主に会社が1年間でいくら稼いだかという経営成績と、1年を終えた時点で財産の状態がどうなっているかという財政状態です。
決算は、最低でも年に1回、行います。ちなみに、決算を行う月(決算月)を何月にするかは、会社が自由に決められます。
決算とは? 決算書とは?
会社はさまざまなビジネス(=経営活動)をする中で、お金を得たり、支払ったりする
決算 | 1年間を1つの区切りとしてビジネスの結果を総まとめする(今は半年間でも認められていますが、本書では1年間を前提とします) |
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決算書 | 決算の時につくる書類 (法律で作成が義務づけられています)(計算書類、有価証券報告書といういい方もします) |
損益計算書 | 1年間で売上や利益がどれだけあったかをまとめた書類 |
貸借対照表 | 決算をした時点で、どんな財産が、どれだけあったかをまとめた書類 |
決算書とは、社外の人も見る会社の「成績表」
会社は、日々、お金の出入りを記録し、管理しています。これを「会計」といい、決算では、この会計の情報をもとに、いくつかの書類をつくります。それが、決算書です。
決算書は、会社法という法律によって、すべての会社で、一定のルールに基づいたものを作成することが義務づけられています。また、自社の株式を証券取引所で取引している上場会社は、金融商品取引法という法律により、やはり一定のルールに基づいたものを作成しなければなりません。
決算書には、2つの重要な書類があります。
1つは、1年間で売上や利益がどれだけあったかをまとめた書類で、これを損益計算書といいます。
もう1つは、決算をした時点で、どんな財産が、どれだけあったかをまとめた書類で、これを貸借対照表といいます。
決算書は、会社にとって「通知表」「成績表」のようなものです。会社は決算書をもとに、税金を払ったり、銀行からお金を借りたりします。
そのため決算書は、経営者や、会社にビジネスを行う元手となるお金を出している株主のほか、税務署や銀行など社外の人も見る、とても大事な書類なのです。
- ▶「決算書」「財務諸表」、なぜ呼び方が違う?
- 決算書というのは、正式な呼称ではありません。会社法上の呼び方は「計算書類」であり、金融商品取引法上は「有価証券報告書」といういい方をします。ただ、どちらも一般的には決算書、または財務諸表と呼ばれているのです。
決算書には、いくつか種類がある
決算でつくる書類は会社法で決められている
決算ではいくつかの書類をつくる、といいましたが、具体的にはどのような書類(決算書)をつくるのでしょうか。
会社法によって、すべての会社に作成が義務づけられている決算書は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表です。これらを「計算書類」と呼び、このほかに事業報告、附属明細書を加えたものを「計算書類等」と呼んでいます。
これらに加えて、自社の株式を証券取引所で取引できるようにしている上場会社には、金融商品取引法により、キャッシュ・フロー計算書という書類の作成も義務づけられています。
そして上場会社に限らず、会社法が定める「大会社」に相当する会社には、損益計算書の公開などが義務づけられています。
大事なのは貸借対照表と損益計算書
決算書のうち、最も大事な2つの書類が、貸借対照表と損益計算書です。
まず、貸借対照表には、会社が今、どれくらい財産をもっているのかが書かれています。つまり、会社の財政状態が書かれていて、これを見れば、会社がビジネスをするための元手である、資金の調達と運用の状況がわかるようになっています。
一方、損益計算書は、会社が1年間でどれだけ売上(収益)や利益を得たのか、つまり会社の経営成績が書かれている決算書です。
これを見れば、どれだけ売上(収益)を上げたのか、そして、その売上(収益)を上げるためにどれだけ費用を使ったのか、さらには、売上(収益)と費用の差額である利益はどれくらいあったのかが、わかるようになっています。
- ▶会社法が定める「大会社」とは?
- 会社法2条6号は、最終事業年度の貸借対照表で、次のいずれかの要件を満たす会社を「大会社」と定義づけています。 ①資本金5億円以上 ②負債総額200億円以上 資本や負債の額が大きい会社は、社会的な影響力が大きいため、損益計算書の公開(公告)などが義務づけられているのです。
会社法に基づく決算書とは?
計算書類 + 事業報告 + 附属明細書 これらを合わせて計算書類等といいます
計算書類→貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表があります
最も大事な2つの書類
貸借対照表 | ➡会社の財政状態が書かれている➡資金の調達と運用の状況がわかる |
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損益計算書 | ➡会社の経営成績が書かれている➡売上(収益)、費用、利益がわかる |
貸借対照表は、会社の財産がわかる!
貸借対照表は、左右に分けた書き方をする
決算書の2つの重要な書類のうち、会社の財政状態が書かれていて、資金(資本)の調達と運用の状況がわかるのが、貸借対照表です。
貸借対照表の中身は大きく左と右に分かれています。じつは貸借対照表の書きあらわし方には2種類あり、左右に分けた形式を、勘定式といいます。
もう1つ、左右に分けずに上から下へ並べる、報告式という形式もありますが、私たちが目にする機会が多いのは勘定式のほうです。
この中には、「科目」として、「現金及び預金」とか「受取手形」などと書かれていますね。この科目は、勘定科目といわれるもので、会社の経理がお金の出し入れを記録するときに用いる「複式簿記」で使われるものと同じです。
要するに、何のお金かという、名称ですね。科目は、会社によって多少異なることがあります。
左右のつり合いがとれているから「バランス・シート」
会社がビジネスをするには、その元手となるお金が必要です。これが資金、または資本と呼ばれるものです。
勘定式の左側は、この資金(資本)をどのようにして、いくら運用しているか、資金(資本)の運用形態をあらわします。
一方、右側は、資金(資本)をどのようにして、いくら調達してきたか、資金(資本)の調達源泉をあらわしています。
そして、左側の合計額と、右側の合計額は、必ず一致するようになっています。貸借対照表のことを、別名「バランス・シート(Balance Sheet)」といいますが、これは左右の合計金額のつり合いがとれている、バランスがとれていることからついた名称です。略して「B/S(ビー・エス)」ともいいます。
- ▶「複式簿記」って何?
- 家計簿では「○月○日 食費 ¥3,000」などと書きますね。このように、お金の出し入れのとらえ方や見方が1つだけの記録の仕方が、単式簿記。会社の経理では2つ以上のとらえ方・見方により記録し、これを複式簿記といいます。
貸借対照表(勘定式)
左側 | 右側 |
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資産の部→資金(資本)の運用形態があらわされます | 負債の部純資産の部→資金(資本)の調達源泉があらわされます |
資産の部合計 | 負債の部・純資産の部合計 |
「資産の部合計」と「負債の部・純資産の部合計」は必ず一致します
損益計算書は、会社の儲けがわかる!
損益計算書は、1年間の経営成績が書かれている
決算書でもう1つ、重要な書類が、会社の1年間の経営成績が書かれていて、収益や費用、利益がわかる、損益計算書です。
損益計算書は報告式であらわされるのが一般的です。
損益計算書は、会社が一定期間(たいていは1年間)に、どれだけのお金を稼いだか(収益)、またその収益をあげるために、どれだけのお金を使ったか(費用)を明らかにします。
そして、収益から費用を差し引いた残りの額が、プラスであれば会社が儲け た利益となり、マイナスならば損失となります。
〈収益−費用=利益(マイナスの場合は損失)〉
収益、費用、利益があらわされている
例えば、「売上高」や「営業外収益」などは、会社が稼いだお金、つまり収益です。
また「売上原価」や「販売費及び一般管理費」などは、会社が使ったお金、費用にあたります。
そして、「売上総利益」や「営業利益」などは、会社が儲けたお金、利益です。
なお、利益には性格の違う5つの種類があるのですが、詳しくはあとで学びましょう。
損益計算書は、英語で「プロフィット・アンド・ロス・ステイトメント(Profit and Loss Statement)」といい、略して「P/L(ピー・エル)」ともいいます。
- ▶勘定式の損益計算書は?
- 損益計算書は報告式が一般的ですが、左右に分けて書く勘定式であらわすこともあります。その場合は、まず左側には、売上原価などさまざまな「費用」を上に書き、その一番下に「当期純利益(赤字なら当期純損失)」を書きます。一方、右側には、売上高などの「収益」を書きます。
損益計算書に書かれている3つの要素
収益 - 費用 = 利益
収益(稼いだお金)売上高、営業外収益など
費用(使ったお金)売上原価、販売費及び一般管理費など
利益(儲けたお金)売上総利益、営業利益など
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