(本記事は、横川 由理の著書『2020〜2021年版 保険 こう選ぶのが正解! 』実務教育出版の中から一部を抜粋・編集しています)

保険で備えるリスクとは?

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◆保険に入る?それとも入らない?

「保険には加入しない」という選択もあります。そもそも保険は、貯蓄では足りない「不測の事態」に備えるために加入するもの。

たとえば、終身保険を思い浮かべてください。この保険は一生涯の保障があり、貯蓄性を重視した保険です。必ず保険金を受け取ることができますから、お葬式代の準備や、途中で解約を行うことで老後の資金として活用できることがメリットとして販売されています。

しかし、「歳を取ってからの死亡は、不測の事態ではないので保険には加入しない」というのが正しい保険の入り方なのです。

◆不測の事態とはどんなとき?

保険会社は保険を売ることが商売ですから、死亡やがんにかかるなど、当たり前のことを不測の事態のように取り扱う傾向にあります。

そもそも人が死亡する確率は100%ですし、2人に1人はがんにかかります。がんにかかる前や診断される前に死亡してしまうケースまで含めると、かなりの人が、がんにかかるといっても言いすぎではありません。

「不測の事態」。それは早すぎる死亡のことを指します。私たちは負担した保険料を回収できそうな保険を好む傾向があります。必ず保険金をもらえる「終身保険のほうがお得」な気分になったり、老後は入院する可能性が高そうだから、「医療保険やがん保険には、ぜひ加入しておきたい」と思ってしまうのではないでしょうか。

そもそもお得な保険は存在しませんし、歳をとって死亡することも、入院をすることも不測の事態ではありません。こういった小さなリスクには、「保険には頼らない」と覚悟を決めてください。

図1
(画像=2020〜2021年版 保険 こう選ぶのが正解! )

◆貯蓄でカバーできない部分に対処

保険に入るときは「必要最小限にする」という感覚を身につけましょう。貯蓄で対処できないことが保険の得意分野。貯蓄では対処できないことは、たとえば子育て世代の世帯主の死亡すること。子ども1人につき、教育費や生活費が2000万円ほどかかります。こういった大きなリスクに備えることこそ、保険が得意な分野なのです。

不安なことを全部保険で解決しようという感覚では、いつまでたってもお金が貯まりません。まずは健康に気をつける、そして保険を上手に利用することで、貯蓄も増えていきます。保険に加入するのか、しないのかを見極める力をつけていきましょう。

保険ではインフレに太刀打ちできない

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◆将来の物価は予測不可能

保険という商品は、基本的に超長期固定金利の金融商品です。将来の保険金は、あらかじめ契約時に決まっているのです。物価が上昇し続けた場合には、物の値段に対して保険金の価値が小さくなってしまいます。

たとえば、40歳の男性がお葬式代や相続税の納税資金を用意するために、「500万円の終身保険に加入した」と考えてください。

(例)60歳までの20年間で支払う保険料は、ひと月1万8000円ほど。
  1万8000円×12ヵ月×20年=432万円

保険料の負担が432万円で、死んだら500万円受け取れる保険は、はたして“お得”なのでしょうか。

平均寿命で考えると、男性が死亡する年齢は81歳です。40歳の男性が41年後に受け取る「500万円」の価値を考えてみましょう。

折しもアベノミクスで政府と日本銀行が「毎年2%のインフレにする」と断言しています。なかなかコトはうまく運ばないようですが、もしも2%のインフレが40年続いたら500万円の保険金の価値は半分以下。つまり、現在500万円の立派なお葬式は、40年間2%で値上がりし続けると1100万円になってしまうのです。

◆40年前の物価と比較

インフレで値段がどの程度上がるかは、物やサービスの種類によってまちまち。「お金の価値」を単純に比較することは難しいものがあります。そこで、「今の物価は、40年前と比べてどのくらいの水準なのか?」という観点から考えてみましょう。

2019年の40年前は1979年。

1979年当時に500万円で取引されていた物が、現在はいくらぐらいなのか?を考えるとだいたいの価値がわかってきます。

ここでは、消費者物価の数値を使って考えてみましょう。消費者物価指数は、現在2015年の物価と比較して発表を行っています。2015年の物価を100とすると1979年の物価は69.1です。これは1979年の500万円は2015年の723万円の価値があるという意味です。

図2
(画像=2020〜2021年版 保険 こう選ぶのが正解! )

もちろん高度成長期時代と現在を同じように考えることはできませんが、たとえば一橋大学は2020年から授業料を2割値上げします。インフレとはこういうことなのです。

若い人は将来受け取るお金を、現在の金額で固定してはいけません。保険は長期間にわたる固定金利の商品です。

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(画像=Getty Images)

◆どんなリスクがあるか

ごく普通に生活をしていても降りかかってくる“大きなダメージ”。そのダメージを最小限にすることが保険に加入する目的です。

家計に大きなダメージを及ぼす原因には、どんなことが考えられるでしょうか。

死亡、病気やけが、介護、失業、火事や自然災害、事故などたくさんのことが思い浮かびます。被害者になってしまうこともあれば、反対に加害者になってしまうこともありえます。

これらのリスクを2つに分けてみましょう。

①人に関するリスク
②物や賠償責任に関するリスク

保険には生命保険と損害保険の2種類があり、それぞれの目的に合わせて加入します。人の命や病気などにかかわる分野は生命保険の受け持ち。そして、交通事故、火事や自然災害、ほかの人への賠償責任に備えるには損害保険に加入することになります。

図3
(画像=2020〜2021年版 保険 こう選ぶのが正解! )

◆公的制度の不足分を保険で補う

本書では生命保険や医療保険などに関することを中心として、part8では損害保険に賢く加入する方法について記載しています。

さて、不測の事態が起こったからといって、すべてを保険で解決するわけではありません。必要な保険を考える前に、まずは公的制度を確認することからスタートしましょう。

死亡や入院といったリスクには遺族年金や健康保険からの給付があるはずです。公的制度からどのくらい受け取れるのか、遺族が暮らしていくために不足するのであれば、その不足分を補うために保険を利用しましょう。「必要保障額で加入しなさい」というのは、不足分を補うという意味です。

◆ダメージを回避できるか

一方、家が燃えてしまったり、交通事故を起こして相手を死傷させてしまうこともあります。こういった事故は損害額や賠償額が大きくなりがちですが、めったに起こることではありません。ですが、国や自治体からの援助は期待できません。すべては自己責任になります。

交通事故など、賠償額が3億円を超えることも珍しくなく、家計に大きなダメージどころか、自己破産に追い込まれてしまう人もいるようです。

保険を選ぶポイントは、保険料が安ければよいのではなく、受けたダメージをキチンと回避できるかを考えることなのです。

2020~2021年版 保険 こう選ぶのが正解!
横川 由理(よこかわ・ゆり)
FPエージェンシー代表、CFP、証券アナリスト、MBA(会計&ファイナンス)、千葉商科大学大学院客員准教授。国内大手保険会社での勤務を通じて、お金の大切さに気づく。以来、お金の知識を広めることをライフワークとして、FP資格取得講座、マネー講座、執筆などを中心に活動。各誌保険ランキングの選考委員や記事で、辛口の指摘を行っている。著書に『50歳から役に立つ「お金のマル得術」』『老後にいくら必要か?』『アベノミクスで変わる「暮らしのお金」の○と×』『50歳からの資産防衛術』(すべて宝島社)『大切な人を亡くしたあとのお金のこと手続きのこと』(河出書房新社)など多数。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』などがある。
WEBSITE:http://fp-agency.com/

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