(本記事は、横川 由理の著書『2020〜2021年版 保険 こう選ぶのが正解! 』実務教育出版の中から一部を抜粋・編集しています)

どちらを選ぶ?「掛捨て型」対「貯蓄型」

◆貯蓄型にも掛捨て部分が存在する

「保険は貯蓄と同じではない」と説明しましたが、保険の中には、「貯蓄型」の商品も存在します。掛捨て型保険と貯蓄型保険の違いについて説明しましょう。

掛捨て型というと、損をするイメージが強いのか貯蓄型の保険が好まれる傾向にあるようです。もちろん掛捨て型の保険は、何もなかった場合1円も保険料は返ってきません。一方、貯蓄型の保険はリスクに備えつつ、保険料を運用してもらうことで利息までつけて返ってくるわけですから、お得な気分になるのもうなずけます。

保険会社は多くの貯蓄型保険を発売しています。

終身保険や養老保険、さらに学資保険などが代表的な貯蓄型の保険です。

ところが、貯蓄型保険だからといって、保険料のすべてが積み立てられるわけではありません。保険料は積立部分と掛捨て部分に分かれているのです。

保険会社もひとつの企業ですから、会社を維持するための経費や儲けも保険料に上乗せしています。保険料は、付加保険料純保険料に分けることができます。

このうちの付加保険料が会社の維持費や儲けに当たります。一方、純保険料は死亡保険金や満期保険金を支払うための保険料になります。

図1
(画像=2020〜2021年版 保険 こう選ぶのが正解! )

◆貯蓄型の保険をすすめない理由

まず、保険会社は、掛捨て部分の保険料だけで保険という制度が運営できるシステムを作ります。貯蓄部分はおまけに当たります。そう、掛捨て保険プラス積立が貯蓄型の保険の真相です。貯蓄型の保険は、必ずしも有利な貯蓄ではありません

また、保険会社は預かった保険料をただ寝かせているだけではありません。貸し付けを行ったり、債券を購入することで運用を行っています。その運用収益の分、単純に積み立てるよりも多く保険金をもらえるケースもあります。ところが、今は金利が低いため運用することができません。多くの商品が販売停止となっています。

このように考えると、保険は掛捨てをメインにして、貯蓄は自力で行うというのがよいことに気がつくでしょう。さらに今の低金利がずっと続く保険は避けたほうが無難です。

貯蓄が苦手だったり、資産運用も含めて保険会社に面倒を見てもらいたい人は、保険で積立を行うというのもひとつの方法ではありますが、割高感を否めません。どのくらい割高なのか次のページで検証してみましょう。

掛捨て保険のほうが本当は得する?

得意・不得意
(画像=Lightspring/Shutterstock.com)

◆10年間で4万6600円も得をする

そもそも「保険で得をする」というのは、遠い昔のお話。バブルの頃の保険は、予定利率が6%もあったのです。予定利率とは、保険会社が保険料を割り引いてくれる率をいいます。予定利率が高いほど、割引が多くなるので、保険料が安くなるというしくみ。

当時は養老保険に加入して、保険料100万円を一時払いにすると、10年後には200万円になって返ってきたという夢のような時代でした。掛捨て保険が損だと主張するのは、この時代に得をした世代に違いありません。

養老保険は貯蓄型の保険であり、保険期間が終了すると満期保険金を受け取れる商品です。今の予定利率は0.5%ほど、当時と状況がまったく違います。

さらに、保険料のすべてが満期保険金のために積み立てられるわけではありません。

一方、掛捨て型の保険は契約期間中に死亡しなければ保険金はもらえない商品です。反面、掛捨て型の保険は、貯蓄性がないからこそ割安に加入することが可能になります。

30歳の男性が500万円の養老保険と定期保険に加入したケースと比べてみましょう。養老保険に加入して保険料を約540万6000円支払いました。

満期保険金500万円を差し引いた掛け捨て部分は40万6000円にも達します。

一方、定期保険は6万9600円で同じ500万円の死亡保障を得られるのです。その差額はなんと30万円超。保障はシンプルに、そして貯蓄を心がけることが何よりも大切です。

図2
(画像=2020〜2021年版 保険 こう選ぶのが正解!)

保険の3つのカタチ

◆基本のタイプを知ろう

保険という商品が複雑に思えるのは、さまざまな保険を組み合わせたり、特約がついているケースが多いからです。保険を選ぶときは、シンプルに考えるのでしたね。保険の基本は3つのカタチに分けて考えると、とても簡単です。

3つのカタチとは、「定期保険」「収入保障保険」「終身保険」を指します。すべて死亡保険ではありますが、保障の期間やタイプが異なっています。すべて死亡保険ではありますが、保障の期間やタイプが異なっています。

掛捨型の代表的な商品が「定期保険」です。掛捨型というと、何となく損した気持ちになってしまうのではないでしょうか。前のページでご覧いただいたように、掛捨型は貯蓄型より何十万円もお得に死亡保障を得ることができるのです。ここからは、「掛捨型」ではなく、「期間限定保障型」と呼ぶことにしましょう。

「定期保険」は死亡保険の基本。10年や20年など期間を定めて保障する保険です。保険期間を限定することで、保険料が割安に設定されています。子育ての時期など、高額な保障が必要になりがちな期間に定期保険を活用すると、効率よく保険に加入することができるでしょう。

さらに保険料を節約したいなら、「収入保障保険」が適しています。収入保障保険も定期保険の一種ですが、保険金の受け取り方が異なっています。定期保険が一括で保険金を受け取るのに対して、こちらは保険期間が終了するまで、毎月保険金を受け取るタイプです。「終身保険」は、「必ず」保険金を受け取れる分、保険料は他の2つと比べてかなり高くなります。

図2
(画像=2020〜2021年版 保険 こう選ぶのが正解!)
2020~2021年版 保険 こう選ぶのが正解!
横川 由理(よこかわ・ゆり)
FPエージェンシー代表、CFP、証券アナリスト、MBA(会計&ファイナンス)、千葉商科大学大学院客員准教授。国内大手保険会社での勤務を通じて、お金の大切さに気づく。以来、お金の知識を広めることをライフワークとして、FP資格取得講座、マネー講座、執筆などを中心に活動。各誌保険ランキングの選考委員や記事で、辛口の指摘を行っている。著書に『50歳から役に立つ「お金のマル得術」』『老後にいくら必要か?』『アベノミクスで変わる「暮らしのお金」の○と×』『50歳からの資産防衛術』(すべて宝島社)『大切な人を亡くしたあとのお金のこと手続きのこと』(河出書房新社)など多数。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』などがある。
WEBSITE:http://fp-agency.com/

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