(本記事は、横川 由理の著書『2020〜2021年版 保険 こう選ぶのが正解! 』実務教育出版の中から一部を抜粋・編集しています)

自動車保険は2種類ある

◆自賠責保険は強制加入

運転するなら自動車保険は必須。自動車保険は「自賠責保険」と「任意の自動車保険」の2種類に分かれています。このうち、自賠責保険は法律で加入することが義務づけられており、車を登録したり車検を受けるために加入証明書が必要になります。

つまり、加入しないという選択肢はありません。公道を走るすべての車やバイクは、自賠責保険へ加入が義務づけられています。

◆任意とはいっても必須!

一方、任意の自動車保険は“任意”なので、加入が義務づけられているわけではありません。しかし、任意保険は絶対に必要だといっても言いすぎではないのです。というのも、自賠責保険の保険金には限度額が設けられているからです。死亡事故の場合、被害者ひとり当たり3000万円が上限。これまでの最高額は5億円を超える賠償でした。後遺障害の場合は、その症状に応じて最高4000万円となっています。

治療費の上限は120万円。交通事故では健康保険を使うことができません。普段であれば3割負担の医療費も10割負担では、あっという間に120万円に達してしまうでしょう。

さらに、慰謝料や休業損害、診断書などすべてを含めて120万円が限度となっているのです。

大切なことは、自賠責保険の対象は対人事故しか補償してくれないこと。これは「死傷させた相手だけにしか保険金が支払われない」という意味です。

たとえば、相手のトラックに高価な商品が積んであるかもしれませんし、ぶつかった相手が高級車かもしれません。ブレーキとアクセルを間違えて、お店に突っ込んでメチャクチャにしてしまったという事故もよく聞きます。

このようにぶつかったのが人でないケースは、自賠責保険から1円も支払われません。任意保険は絶対に必要だというのはこんな理由があるのです。

図1
(画像=2020〜2021年版 保険 こう選ぶのが正解! )

◆4台に1台は無保険車のコワーい実態

多くの人が任意の自動車保険へ加入していると思いがちですが、ここに驚きの統計があります。

日本損害保険協会の資料によると、2015年3月末における国土交通省発表の保有車両数に対して、任意の自動車保険の加入は、68%となっています。これは街を走っている車の4台に1台は任意の自動車保険に未加入だということがわかります。

無保険の自動車と事故を起こしてしまったらどうしますか?自分が働けないという状態に陥ったとしても相手からお金をもらえないかもしれません。自分の保険で自分を守るしか方法はないのです。

自動車保険の選び方

保険,選び方
(画像=Aaron Amat / Shutterstock.com)

◆自動車保険の基本は4つ

安さを売り物にする通販型の自動車保険が増えてきました。特に事故を起こしたことがない人にとっては、保険料というコストを抑えたいものですが、必要な保障やサービスを削ってしまっては元も子もありません。しっかりとした補償を用意しつつも、不要な特約を外すという観点から、自動車保険をカスタマイズする必要があります。

カスタマイズといったのは、実は自動車保険はひとつの保険ではないからです。いろいろな保険がセットになっていて、そのうえでトータルの保険料が決まるしくみとなっています。全体としての保険料が、安いのか高いのか、ということしか目に入りませんが、自動車保険を選ぶうえで、一つひとつの補償内容と補償額をチョイスすることが何よりも大切となります。

自動車保険は4つの補償を組み合わせて加入します。

①相手への補償(対人賠償保険・対物賠償保険)
②自分や家族のための補償(人身傷害補償保険・搭乗者傷害保険・無保険車傷害保険)
③自分の車の補償(車両保険)
④特約(弁護士費用・事故、故障付随費用特約・個人賠償責任保険など)

補償内容をよく見て、免責金額を設定したり、必要でない特約を外すなど見極めていきましょう。免責金額とは、自己負担する金額をいいます。

保険料見積もり一括サービスを活用する場合、自分が入力した補償金額を削ってまで安い保険料を提示する保険会社もあるので、細心の注意を払ってください。

図2
(画像=2020〜2021年版 保険 こう選ぶのが正解!)

車両保険には加入するべきか?

◆車両保険に入っておきたい人

相手への賠償は無制限で備えたものの、悩みの種は車両保険です。というのも、「車両保険に入るのか?入らないのか?」で、保険料は大きく違ってくるからです。

特に事故を起こしたことがない場合は、「車両保険には入らない」ことを選択する人が多いようです。

しかし、免許を取りたてだったり、新車を購入したばかりの場合は、車両保険には入っておいたほうがよさそうです。

もちろん、「車を買い替えるお金はふんだんにある」というのなら話は別ですが、事故を起こす可能性の高い人、損害が高額になりそうな人、つまりリスクの高い人こそ、車両保険の加入を検討しましょう。

◆オールリスクとエコノミー、どちらがお得?

車両保険は、オールリスクタイプとエコノミータイプの2種類。補償される範囲に応じて保険料が異なります。

オールリスクタイプとは「一般」ともいわれ、車同士や自転車との接触事故をはじめ、火災、爆発、台風などの自然災害はもちろん、電柱にぶつかるなどの自損事故、盗難や当て逃げなど、ほとんどの事故が対象となっています。

エコノミータイプは、自損事故や当て逃げなど相手のいない事故、もしくは相手がわからない事故では保険金が支払われません。

たとえば、電柱に衝突したり、自転車との事故は対象外。その分、エコノミータイプはオールリスクタイプと比べて保険料が少し安くなっています。いずれにしても車両保険に入ると、保険料は倍増することになります。

◆免責をつけると保険料はダウン

車両保険料を節約するなら、免責額を設定する方法を検討しましょう。保険金を請求すると、翌年から3等級ダウンするうえに、「事故あり保険料」が適用され、保険料は相当高くなります。なので保険は使わないという選択をする人もいます。

こんなときに備えて最初から「免責額」を設定しておきましょう。

たとえば免責額を10万円に設定すると、10万円を超える損害しか補償されません。10万円以下の修理費用は「自腹を切る」と割り切ってください。免責額を高くすればするほど、保険料は安くなります。

トヨタのアクア(235万円)で20等級の場合、一般9万7400円、免責10万円だと7万3840円、車両保険なしは4万2040円です(下図参照)。

図3
(画像=2020〜2021年版 保険 こう選ぶのが正解!)
2020~2021年版 保険 こう選ぶのが正解!
横川 由理(よこかわ・ゆり)
FPエージェンシー代表、CFP、証券アナリスト、MBA(会計&ファイナンス)、千葉商科大学大学院客員准教授。国内大手保険会社での勤務を通じて、お金の大切さに気づく。以来、お金の知識を広めることをライフワークとして、FP資格取得講座、マネー講座、執筆などを中心に活動。各誌保険ランキングの選考委員や記事で、辛口の指摘を行っている。著書に『50歳から役に立つ「お金のマル得術」』『老後にいくら必要か?』『アベノミクスで変わる「暮らしのお金」の○と×』『50歳からの資産防衛術』(すべて宝島社)『大切な人を亡くしたあとのお金のこと手続きのこと』(河出書房新社)など多数。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』などがある。
WEBSITE:http://fp-agency.com/

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