要旨
- 投資や買収、ファンドの運用など、ソフトバンクグループの成長の節目や大転換期には必ず金融財務戦略がともにあった。ソフトバンクグループは「テクノロジー×金融財務」企業であり、金融財務戦略に非常に特徴がある企業である。その一方で、2019年7?9月期決算におけるファンド保有銘柄での巨額の評価損計上を受けて、投資事業への懸念が高まったり、金融財務戦略そのものが懐疑的に捉えられたりするなど、ソフトバンクグループに大きな注目が集まっている。
- ソフトバンクグループは、企業の信用力、事業の信用力、資産の信用力の3つを組み合わせてファイナンスを行うなど、自社や対象事業の目的や性格を考慮した上で付加価値の高いファイナンス手法を構築することに非常に長けている。その代表的事例が、レバレッジド・バイアウト(LBO)によるボーダフォン日本法人の買収やヤフーBBモデムの証券化である。
- ボーダフォン日本法人の買収における資金調達スキームは、自己資金(エクイティ)、金融機関からのノンリコースローン(デッド、レバレッジがかけられた金額)、および英国のボーダフォン本体による資金(エクイティとメザニン)という3つの手法の組み合わせであった。ソフトバンクグループは、自己資金だけでなく、様々な投資家や金融機関から出資や投資、融資などを募り、それぞれのリスク・リターンに応じたかたちで、金融機関もアレンジャーとして使いながら、最適な資金調達スキームを周到に練り上げている。
- 筆者が考える、ソフトバンクグループが最適な資金調達、戦略的な資金調達を行うに際して重要視する金融財務戦略の要諦を「ストラテジック・ファイナンス」の10のポイントとして提示する。
- ソフトバンクグループは、金融財務戦略において、最適かつ戦略的な資金調達を通してレバレッジを利かせたM&Aや投資を行い、投資効率や収益性を高めるために「正のレバレッジ」を利かせている。しかし、レバレッジは利益と損失の両方を発生させる可能性を内因させたものであり、マーケットが予想外の展開となったような場合、「正のレバレッジ」とは大きく異なる「逆レバレッジ」をもたらし得る。