要旨
- 中国では経済成長の勢いの鈍化傾向が続いている。中国国家統計局が10月18日に公表した19年7-9月期の成長率は実質で前年比6.0%増と、4-6月期の同6.2%増を0.2ポイント下回り、2四半期連続で減速することとなった。一方、消費者物価は抑制目標の「3%前後」を上回ってきた。アフリカ豚コレラの蔓延で豚肉が2倍超に高騰し食品を押し上げた。但し、食品・エネルギーを除くコアは同1.4%上昇に留まるなど、それ以外は概ね安定している。
- 景気10指標を点検すると、需要面では、輸出の不振が続いており、投資の水準が低いため、回復力は乏しい。一方、供給面から見ると、工業生産、製造業PMI、非製造業PMIが揃って上向いたため、景気減速には歯止めが掛かったと判断できる。また、その他の景気指標を見ると、電力消費量は2ヵ月連続で上向き(○)となったものの、工業生産者出荷価格と通貨供給量(M2)は横ばいで、道路貨物輸送量は3ヵ月連続で下向き(×)となった。これらを総括すると、これまで減速傾向にあった中国経済は19年7-9月期に底打ちし、その後は持ち直してきているものの、景気回復の持続性に関しては未だ不透明な状況にあると考えられる。
- 「景気インデックス」(工業生産、サービス業生産、製造業PMIの3つを合成加工したもので、月次の景気指標の動きを成長率に換算するとどの程度かを表示)の推移をみると(下図)、18年3月の6.81%をピークに減速し始め、19年7-8月には5%台に突入した。しかし、9月には中国政府が次世代通信規格(5G)投資を促進し始めたことを背景に、ハイテク製造業の生産がV字回復したため6%台を回復することとなった。なお、中国国家統計局は20年1月17日(金)に、19年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表する予定だ。12月の景気指標が余程の悪化とならない限り、前四半期を上回る可能性が高い(筆者の予想は前年比6.1%増)。