要旨
年明け以降、イラン情勢が緊迫化したことでNY金先物は急騰し、8日には一時6年9カ月ぶりに1600ドルの節目を突破した後、緊張緩和を受けて急落し、足元では1550ドル付近にある。時間軸を延ばして見てみると、2018年終盤から金価格は上昇基調を辿っている。この間、ドル高や米株高が金価格の逆風となったが、金融緩和に伴う金利低下や世界経済の先行き不透明感、各国中銀による金購入という追い風の影響が上回った。
金価格の今後を考えるうえで、マイナスに働く要因としては、買いポジションの積み上がりが挙げられる。また、世界情勢としても、イラン情勢の緊張が緩和したほか、米中の「第1段階の合意」の署名が行われる見込みであるなど目先にも緩和の動きが見込まれるため、当面は金の利益確定売りが入りやすい状況とみられる。
一方、引き続き金価格の追い風・下支えに働く要因も多い。イラン情勢は当面全面衝突が回避されそうな雰囲気だが、関係の抜本的な改善は見込めず、武力衝突のリスクは燻り続ける。米中協議に関しても難題を先送りしてきただけに、今後は難航が必至の情勢だ。北朝鮮情勢も再び悪化するリスクが燻っている。さらに今年秋の米大統領選挙で保護主義的かつ反ビジネス色の強い民主党左派候補が勝利する可能性も排除できない。こうした下振れリスクへの警戒が金の下支え材料になる。また、緩和的な金融環境や中央銀行による金購入が今後も続くと見込まれることも金のサポート材料になる。
以上の材料を踏まえると、金価格は当面利益確定売りなどから弱含む可能性があるものの、多くの材料に下支えられることで大崩れはせず、年内を通じて底堅い推移になりそうだ。NY金先物の想定レンジは1400~1650ドルで夏場から秋にかけて高値を付けるイメージだが、仮に下振れリスクが大きく緊迫化する場合には、1700ドル突破もあり得る。