(本記事は、へんみ ゆかり氏の著書『知識ゼロでも美味しいにたどり着くハッピーワイン選び』セルバ出版の中から一部を抜粋・編集しています)
「知識がないと楽しめない」の勘違い
ワインは楽しむ飲み物
みんな、最初は初心者です。ワインは楽しむ飲み物。まだ知識がない方は、その分純粋に美味しい、楽しいにたどり着く可能性を持っている論。
「ワインの知識はないけれど、ワインは美味しいから好き。お料理と合わせて楽しみたい」と考えられている方こそ、今後のワイン人生をよりキラめかせられる方かもしれません。
私は、約10年前、WSET(イギリスに本部を置く世界最大のワイン教育機関)の教室で勉強をしておりました。
そこは、資格取得を目指すための教室ですので、当然、どんどん知識が豊富になっていくのです。
しかし、裏腹に、ワインの味を確かめるワインテイスティングを行う度、美味しさや楽しむことを一時忘れ、ついついブドウ品種当てに、脳みそをフル回転させ、「当てなきゃ!」という呪縛に捕らわれておりました。これは、これで楽しいことなのですが、気がつくと、完全に気楽さを失い、ワインの美味しさを感じたり、楽しむことを置き去りに、なんてこともよくありました。
自身が開催しておりました、教室の生徒さん達を集め、「ワインと料理の組合せを楽しもうオフ会」を行うと、まだ知識の浅い方のほうが、「コレとコレ合う!」「すっごく美味しい!」「味が広がる!」など、沢山の意見が飛び交い、美味しさへの追求を目的としている姿を目の当たりにしました。
1人は、料理とワインを合わせて「口の中で花が咲いた!」と表現しており、1人は、「輝いた!」と言っていました。知識が邪魔して、素直な感性を弱めてしまうこともありそうですから、知識がなくても、ワインと料理の美味しさを発見する。そしてそれを楽しむことは誰にだってできることだと実感しました。
美味しいとは、あなたにあって、他人ではない。
美味しいという感覚に数学のような正解はありません。
私は酸味好きです。辛い物が好きな方もいらっしゃるでしょう。その人の美味しいと、あなたの美味しいは多少異なる、これでいいのです。
自分の美味しいを見つける旅をする。これもワイン人生を楽しむ1つの要素でしょう。
気になる「ワインの美味しい!」とは、どういうことでしょうか
みなさんは、美味しいを分析したことはありますか。
ワインの美味しいは、「香りの強さ、味わいの強さ、酸味の強さ、余韻の長さ」などの要素のバランスのよさです。
そして、それは、すべての要素が低くても、「美味しい」と感じるということです。
というのも、WSET教室で勉強をしている際、先生は、毎回「どれが一番美味しいですか。好きですか」と質問をしてくださいました。
すると多数の方が「美味しい!」と答えるワインは、「バランスがよい」ワインだったのです。
具体的には、「香りは、ドライフルーツ、木や土を思わせ、味わいも、黒系フルーツの香りを基準に、スパイスやハーブの香りと全体に複雑、余韻も長い」としましょう。しかし、「酸味が高過ぎて、タンニンという渋みがかなり強い」となると、実は、「もう2、3年寝かせてから開栓したほうが美味しいワインだった」ということになります。
高価であっても、「酸味が高過ぎて、あまりタイプではない」と答える人が大半、ということもありました。
反対に、飲み頃を過ぎてしまって、ブドウ本来の香りがすっかり落ちてしまっている物もありました。
そうかと思うと、すべての要素が低くても、なんだかバランスがとれていて、ほとんどの方が、「美味しい!」と答えるワインも。本当にワインって不思議な飲み物ですよね。
ワイン知識はあってもよいが、なくても楽しめますからご安心ください。
「コレを覚えないと選べない」と考えられていた
びっくりです。「コレを覚えないと選べない」と考えられていました。
〝コレ〟とは、次のことです。
- ブドウの品種名とその特徴
- 地域名とそこで使用されるブドウの品種名
- 地域名、地区名。畑名(1級畑、特級畑)の暗記
- 格違いごとの味わいの差
- 同じブドウ品種による国別の味わいの違い
- 樽やステンレスタンクによる熟成香の味わいの違い
- 世界を代表する料理とそれに合うワインの暗記
- 年代別による味わいの差
多くのワイン教室は、ワインを勉強する際に、次の順序で行います。
- ブドウ品種別知識
- ブドウ品種の国別、産地別違い
- 格違いによる知識
これだけの情報があるわけですから、ワインについて勉強するとなると小一時間ではいかないワケですね。
本当に奥深い飲み物だと思います。1度勉強を始めると、その深さゆえ、追求が止まらなくなるのも、楽しみの1つでもあります。
大の大人が、こぞって、時間とお金をかけて、この知識を習得したいということも、よくわかります。
しかし、最初の入口に、ここまで多くの知識は必要ありません。
ワインを楽しむうちに、自然とブドウの品種名も覚え、その後改めて勉強するのが理想的と考えます。
本書は、知識がゼロの方でも、ワインが選べるようになりますので、ぜひまずはワインを実際に試し、美味しさを実感してみてください。
なぜブドウの品種名とその特徴を暗記しないといけないのか
なぜブドウの品種名とその特徴を暗記しないといけないのでしょうか。それは、使用するブドウの品種により、そのワインの骨格、個性が決まるからです。
骨格や個性とは、例えるならば、
A ムキムキ筋肉、力強く、どっしりボディのスポーツ万能な人 B IQが高く、賢い。じっくりなにかを研究することが得意な人
のような、いわばキャラクターです。
ブドウ品種の違いはまさにそれで、自分が得意とする分野があるのです。
つまり使用するブドウ品種で、ワインの骨子が決まるというワケです。
具体的には、ブラックチェリーやブルーベリーのような香りで、タンニンといわれる渋みがしっかりあるワインをつくりたければ、その個性が現れるブドウ品種を使用し、ワインをつくるということです。
なぜ産地名とその土地で使われるブドウ品種名を暗記しないといけないのか
では、なぜ産地名とその土地で使われるブドウ品種名を暗記しないといけないのでしょうか。それは、主にフランスはじめヨーロッパ―のワインのエチケット(商品ラベル)には、産地名が書かれ、使用しているブドウ品種名が書かれないからです。
また、産地名を名乗る以上、決められたブドウ品種を使用して、ワインをつくらなければならないので、産地名と使用ブドウ品種とその特徴を暗記しなければならないと考えられています。
ワインのエチケット表記には、大きく分けてヨーロッパを主とする伝統的にワインをつくっている国とその他の国で違いがあります。
主に、ヨーロッパ以外の国をNW(ニューワールド)と呼び、アメリカ、カナダ、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、私たちの国・日本などが当てはまります。そして、NWのエチケットには、主にブドウ品種名が書かれます(1例であり、他にも表記名は沢山あります)。
つまり、ブドウ品種名、とその特徴。さらには、産地名、その産地で使用されるブドウ品種名、産地ごとの格付、年代別の味わいの差……、これらを覚えたほうがよいとされていますから、「ワインは難しい」となるわけです。
ワインの勉強には終りがない。奥深くて壮大。でも、最後に求めるのは、「ふふふ」って笑っちゃう美味しさに出会うこと。
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