黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

承認欲求は人間の本能とも言えるものであり、知性やビジネスの力量とはあまり関係がないパラーメーターである。しかし、世の多くの人は「承認欲求」の解消法を理解していなさすぎる。それ故に、ビジネスの経営者で稼いでいる社長の中でも、承認欲求をこじらせてビジネスを破綻させてしまうものもいるのだ。

承認欲求を爆発させる社長たち

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(画像=fizkes/Shutterstock.com)

ビジネス目的で使っていると思しき、経営者たちのSNSアカウントを目にすることがある。ビジネス目的でアカウントを運用するなら、見る人の役に立つ情報や知識、体験談などをつぶやき、自社の商品サービス・ブログ更新などを通知するのに使うのが本来の活用法であろう。

だが、そんな社長たちがSNSで承認欲求を爆発させてしまうケースがある。「こんな高級ホテル泊まりました」とか「こんなに稼ぎました」と吹聴しているのである。ビジネス・マーケティング戦略上のつぶやきとして潜在顧客を獲得するためならともかく、その多くは自己の承認欲求を満たすための極めて原始的な行動に基づくものである。

結果としてフォロワーは冷めた目で見るし、せっかく日常的に良いつぶやきをしていてもビジネスチャンスにはつながらないであろう。

SNSだけでなく、リアルでも同じだ。従業員や取引先、行きつけの高級クラブなどで自らのビジネスの成果を誇示している社長はいくらでもいるのだ。

お金で解消しようとして破綻する人たち

誤解のないようにしておきたいのだが、この記事では承認欲求を否定しているわけではない。承認欲求とは、本来アスリートやクリエイターが「良い結果を残したい」「良い作品を世に残したい」という気持ちで記録や作品の限界に挑戦し、結果として社会に価値を提供、その結果に満足して再び自分の世界の創作活動に集中するという好循環を生み出す。また、勉強の秀才も頂点を取ることを目指して必死に勉強し、全国模試のランクイン入りを果たすことを目的に自分を高めるなど、自己成長につなげていくのが健全なあり方である。

しかし、承認欲求を間違った方法で満たそうとする人があまりにも多いのだ。間違った方法とは「お金」である。SNSで少し検索するといくらでも出てくる。「高級レストランで食事しています」「こんなブランドを買いました」という「自分は幸せなのだ」という需要のないPRである。

承認欲求をお金で解消する行為の先に待つものは、負のスパイラルである。たとえば一度、高級ブランドアクセサリーの写真をSNSに投稿するとしよう。おそらく、一度目は「いいね!」「すごいね!」と好意的な反応が返ってくるだろう。

だが、それで承認欲求を満たしても、次に湧いてくるのは「もっと認められたい」というより強い承認欲求である。二度目の投稿はさらにハードルが高くなる。一度目より、明らかにお金がかかっているものでなければ、反応は得られない。さらに二度目以降は冷ややかな視線も返ってくるだろう。「何だ自慢かよ」と。でも本人は一度味わった快感を得たくて、次々とお金をかけることになる。人によっては、借金をしてまで、ブランド品を買ってSNSで自慢するアリ地獄に陥っている者もいるのだ。

承認欲求はお金で解決しようとしてはならない。誰しも無尽蔵にお金は持っていないし、そもそも世の中に需要がない行為である。ビジネスに集中するべき社長は決して手を出してはいけないのだ。

見栄で破綻する社長

女性への見栄で破綻する社長もいる。女好きでお金持ちアピールをしたくて、次々と女性に贈り物やごちそうをしたり、高級車に乗り付け、高級マンションに住むなどしていた。

だが、ひとたびビジネスが傾いたら落ちるのは一瞬だった。プレゼントは変動費なので、送るのをやめたら出費は止められるが、高級マンションや車は日々、出費を伴う固定費である。結果として遊んでいる場合ではなくなってしまったようだ。すべては承認欲求が生み出した業である。

社長はビジネスだけに集中するべきだ。承認欲求は良いビジネスをすることで、社会からの称賛で満たすのである。これは芸術家が素晴らしい作品を生み出し、利用者から喜びの声を持って承認欲求を満たすのと同じことである。社長がお金で承認欲求を買う時、そのビジネスは終わりの始まりなのである。(提供:THE OWNER

文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)