(本記事は、高橋慶行氏の著書『12万人が学んだ 投資1年目の教科書』かんき出版の中から一部を抜粋・編集しています)
投資には相手がいることを知っておこう
この項目の3つのポイント 1 チャートの裏には人がいる。相場は人間心理で動く。 2 相場の裏にいる人間心理を察しよう。 3 チャート分析で人間心理に負けないルールを作ろう。
現在のトレード(取引)では、パソコンやスマートフォンの画面を通じて売買ができるようになっています。投資をする人は、パソコンやスマートフォンの画面の向こうにあるチャートを相手にして取引をしているように錯覚しがちですが、実際はそうではありません。
あなたのパソコンやスマートフォンの画面の向こう側には人間がいて、あなたと同じようにこれから上がるのか下がるのか不安に思い、値動きに一喜一憂しているのです。
相場というものは、チャートや数字だけで語りきれるものではありません。もっと奥が深いものです。なぜならなかなか読むことのできない人間の心理がそこに存在しているからです。
チャートの向こう側にいる人々のことを思い浮かべながら売買をすることは、とても大切なことなのです。
相場に向かっているときの個人の心理を理解しておかなくてはなりません。それを知ることによって自分自身のトレード能力の向上にもつながるのです。
まず人間は利益が出ているときには、ローリスク・ローリターンを求めがちになります。大して儲からない状況であっても、放っておけば損をする可能性があれば、とにかく利益を確定してしまいたいという心理に陥ります。
またとっさの判断が必要なとき、人は感情で動きがちです。相場における代表的な感情とは、欲と恐怖です。欲と恐怖に駆られると自分に課したはずのトレードルールを守れなくなることがあります。
たとえば100円で買ったドルが110円になったとき、今度はそれが105円に下がったら、まだ、5円の利益が出ているにもかかわらず、投資家は5円損したと考えてしまうものです。まだポジションを保有している状態で、一度出た含み益が減少し始めてしまうと恐怖に駆られて慌てて売り決済をしてしまうのです。
とにかく多くの投資家は利益を伸ばさないといけないとわかっているにもかかわらず、早めに利益を確定したがる傾向にありますし、目に見えて利益が出ているときにも少し値が下がれば損したと思う感情が湧いてきます。
実際に相場を動かしているのは、このような心理なのです。
あなたも相場に向かっていると、常に恐怖と戦っている状態になることでしょう。冷静に判断しようと思っていても、一時的に価格が狙いと逆に動くと慌てて決済をしてしまったり、暴落に巻き込まれていることに気づいても現実が受け入れられなくて損切りできなかったり、これから反発するかもと期待してポジションを持ち続けてみたり……こういったことは本当によくあります。
人は人に後れをとることに怖れを感じるものです。
震災など大災害の後にコンビニやスーパーで飲食物やトイレットペーパーなどが買いだめされて、品薄になることがあります。これも人に後れをとることに対する恐怖の表れです。
大多数の投資家がわかりやすい上昇トレンドに乗ろうとしますが、多くの人々が買い支えない限りトレンドは継続しません。一般の投資家が飛びつくころには、トレンドが生じたときにしっかりと仕込んだ人たちにとっては絶好の売り時であるわけです。
そうなると、そこから先は下降トレンドに転じることになります。つまり時間をかけて株価が大きく上がり、チャートを見てもトレンドがわかりやすく見えてきたときに、儲け損ねたくない、遅れたくないという気持ちになって飛び乗ろうとする投資家は損をするということです。
残念ながら、多くの投資家はこのような投資をして負け組になることが多いのです。このような投資をしていては絶対にいけません。
そうならないためには、チャート分析を中心に据えて投資をする必要があります。チャートには投資家たちの行動と心理状態が表れるからです。
パソコンやスマートフォンでチャートを見るときには、常に上から下を俯瞰している目線で、「負け組」になる投資をする人たちを眺める余裕を持ち、自分のトレードでさえも第三者の目で見られるぐらいの冷静さが必要です。
取引画面の見方と注文方法を理解しておこう
この項目の3つのポイント 1 自分の証券会社の取引画面の見方を知ろう。 2 色々な注文方法があることを事前に知ろう。 3 不明点は、証券会社のコールセンターに聞こう。
当たり前ですが、これから株式投資を始めたいのであれば証券会社に、FXをやりたいのであればFX会社に口座を開設しなくてはなりません。銀行口座を新しく開設するときのように、身分証明書やマイナンバーカードの情報を登録し、口座開設の申請をしましょう。
証券会社やFX会社は、ネットで検索すればたくさん存在します。口座開設する会社を選ぶポイントは基本的に3つです。
1つ目は取引手数料です。特に短期売買を多くしたい方は、取引回数が多くなりますから、手数料の差がトータルすれば大きなコストとなります。要注意です。
2つ目はツールです。初心者用からプロ級のツールまで各社が独自の情報ツールや取引ツールを用意しています。自分に合ったツールを選ぶことも大切なポイントです。
3つ目は、取扱商品の豊富さです。国内の上場会社の株だけではなくて、外国株や投資信託、FXなどを取り扱う会社もあるので、自分の資産形成にさまざまな金融商品でポートフォリオを組みたい場合には、取扱商品が多い会社のほうが管理面で楽です。
口座を開くだけでしたら通常は無料なので、3つぐらいの証券会社の口座を開設して、実際に取引ツールの使い勝手を試してみたり、コールセンターの電話サポートの質を調べたりして、どの会社が一番自分に合っているかを比較検討して決めるという方法が良いでしょう。
株やFXなどの投資を始めるには、インターネットでネット証券および証券口座開設の申し込み画面へ進んでいきます。必要事項を記載し申し込みをすると、口座開設の申込書が届きます。マイナンバーなどの個人情報と一緒に申込書を返送すると、口座開設完了の通知書が届きますので、通知書に記載されている口座番号やユーザーID、パスワードなどを使って、自分のページにログインします。ログインができたら、自分の銀行口座から投資用資金を入金したり、証券会社に入金された自分の投資用資金を使って株やFXの売買をしたりしていくという流れになります。
ログインをすると、たくさんの情報があって最初は戸惑うこともあるでしょう。そういうときは証券会社のコールセンターに電話をして聞けば早く解決します。遠慮は要りません。
売買の注文を出す取引画面は証券会社ごとに異なりますが、基本的な入力事項や注意すべき点は同じです。株であれば、銘柄名や商品コードはサイトのどこに書いてあるのか、どうやって銘柄を探すのか。そしてその銘柄の値動きを記したチャートはどこで表示させることができるのか。そのチャートに移動平均線などのインジケーターをどうやって表示させるのか。このようなことを1つひとつ明確にし、覚えていきましょう。
次に注文の出し方です。注文の出し方は複数あります。基本となるのは指値注文と成行注文の2つです。指値注文とは、株であれば、売買する株数と価格を指定して注文する方法です。注文した価格がそれよりも有利な価格でないと注文は成立しません。**注文が成立することを約定と言いますが、指値注文の場合は自分が注文した価格にならなければ約定をしないことがあります。
一方、成行注文は、株数のみを指定して価格は指定しない注文方法です。買い注文であれば、そのときに出ている最も低い価格の売り注文に対応して注文が成立します。売り注文であれば、最も価格が高い買い注文に対応して注文が成立します。**たとえば現時点での株価が300円、最も安い売り注文が301円、最も高い買い注文が299円のときに、成行の買い注文を出すと301円、成行の売り注文を出すと299円で売れるということです。
つまり約定ができるにはできても、自分が注文したい金額にぴったりの価格で約定するとは限らず、相場の状況や証券会社のシステムの都合で若干の誤差がある価格で約定されることもあります。また相場が暴落、暴走したときなどは思いもよらない価格で約定してしまうこともあります。つまり投資家にとって不利な価格で約定するということも起こり得るのです。
指値注文なら、今よりも安い価格になったら買う、今よりも高い価格になったら売るということができる注文方法です。前述した高値・安値の重要さや、恐怖と欲によって動かされる人間心理などを考慮した上で、「この金額まで下がったら買いたい」とか「この金額になったら売りたい」と決めて、あらかじめ指値で注文をしておけば自動的に決済がされるというメリットがあります。
上昇トレンドで利益を上げたい投資家であれば、上昇トレンドが始まるときにエントリーしそびれて価格がスルスルと上がった後に、さらに上昇トレンドが続くと見たら、一時的に価格が下がり押し目となるような金額に指値注文をしておくということをします。
一方で上昇トレンドの発生時に利益を上げたい場合や、前回の注目すべき高値を超えたあたりでエントリーしたい場合には、今よりも高い価格になったら買うということが必要になりますが、これは逆指値注文という注文方法で行うことができます。
逆指値注文は、今よりも高い価格になったら買う、今よりも低い価格になったら売る、という注文方法です。これからさらに上昇していくという優位性があるサインが出たときにもエントリーの1つの戦略として使えますし、すでに銘柄や通貨を保有しているときの利益確定や損切りで活用することもできます。
たとえば上昇トレンドだと思ってポジションを持っているにもかかわらず思惑が外れて、価格が下がる場合があります。このときには含み損を抱えているわけですが、今よりも価格が下がったときに売り決済をするために逆指値注文を使うこともできます。
取引画面と注文方法については、初心者の方は自分のパソコンを開きながら、証券会社のコールセンターに電話をして、どのボタンを押すとどんな注文ができるのかを1つひとつ確認しながら理解していくことをお勧めします。
注文方法を正しく把握しておかないと本来は損切りすべきところで損切りが遅れるなど期せずして大きな損失を抱えてしまう怖れがあります。必ず実際の売買を始める前に理解しておきましょう。
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