(本記事は、高橋慶行氏の著書『12万人が学んだ 投資1年目の教科書』かんき出版の中から一部を抜粋・編集しています)
なぜ投資を自分でするべきなのか明確にしよう
この項目の3つのポイント 1 これからは収入を増やす新たな活動が求められる。 2 副業の中でも「投資」を検討すべき理由とは。 3 投資によって自立に向けた総合的な教養が身につく。
現実的な話をしましょう。現在の生活を維持する上で一番大事なことは何でしょうか。それは「入ってくるお金」と「出ていくお金の額」とのバランスです。
すでに多くの人が、毎月の生活費が赤字だという状況に陥っています。ボーナスがあれば、それを預貯金に回したり、毎月の赤字を補填したりする家庭が実際にたくさんあり、それが平均的な家庭になりつつあります。
毎月の入金を確実なものにするために、ほとんどの日本人は企業に勤めるという選択をします。今の時代勤務先の企業もいつまでも安泰という保証はありません。5年後の未来すら予測ができない時代がすでに到来していますが、それでも、勤めていれば当面の生活費を賄うことができるので、みんなそうしています。
ただ考えてみてください。生活費を賄うためだけに仕事をしているとすれば、それは時間が経っても状況が変わらないということです。そこで、現在の生活を維持しながらも、収入や預貯金を増やすための、何らかの活動を多くの方が始めることが必要なのではないでしょうか。
勤める以外の方法でお金を稼ぐにはさまざまな選択肢があります。最近では、勤務時間後に副業をしたりする会社員も大幅に増えています。副業もインターネットの物販、転売ビジネスなどさまざまなものが今ではあります。
投資も1つの「副業」と考えていいでしょう。ですが数ある副業の中で、なぜ自分は「投資」を選ぶのかということは明確にすることがまず大切です。
投資は、自分で行うことができます。他人任せにすることもできますが、これからの時代は、現在の年齢や性別、経験にかかわらず、自分で「いつ買えばいいのか」「いつ売ればいいのか」という知識を持っておくことが大切です。
なぜ、投資を自分でできるようにしておくことが大切かというと、1つには「お金を使ってお金を増やす」という収入タイプがこれからの時代には、適しているからです。これからの時代は、長生きの時代となりますから、労働収入だけでは限界があります。身体の元気が維持できるかどうか、という話だけではなくて、労働環境もこの先大きく変わるはずです。そのような中、自分の頭脳に蓄積された経験や知識そのものがお金に変わるというのがまさに、投資による金融収入であり、そういうタイプの収入源を持つことに対する、心の安心感はとても大きなものになります。
さらにもう1つ、投資を自分ですることによって、世の中の動きがわかるようになります。もちろん、最初からすべてがわかるようになるとは言いませんが、政治のこと、経済のこと、海外のことなど、投資においては、世の中の動きが自分の収入に直結することも多くなりますから、少なくとも関心を持つ理由ができます。世の中の動きを、誰かが書いたニュースをもとに判断するのではなくて、事実をもとに自分で判断ができる力を養っていく「自立に向けた総合的な教養」も投資をすることで、育むことができます。
投資の本質は、「安いときに買い、高いときに売る」ということです。注文するべきタイミングと、注文してはいけないタイミングをはっきりさせ、保有するべきときと、手放すべきときをはっきりさせることが、これからあなたが行うべきことになります。けっして、大化け株を狙うとか、一攫千金を狙うことを目的にするのではなくて、安定的な利益を積み上げていくために、「いつ買うのか」「なぜ買うのか」「いつまで保有するのか」を決めていきます。
投資は、お金だけを追う手段というわけではなく、予想もできないこれからの時代を自立して歩むための教養をもたらしてくれる、公平に与えられた素晴らしいチャンスです。正しい投資教育が、正しくこの日本に広まることを願って、投資で安定的に利益を上げる上で「必ず覚えておきたいこと」を明かしていきたいと思います。
投資に完璧な手法などないことを知っておこう
この項目の3つのポイント 1 投資には完璧な手法は存在しない。 2 怪しい投資商品や手法にだまされる脳の仕組み。 3 投資で勝ち続けるには、的確な対処が必要。
単刀直入ですが、100%勝てる投資の手法はありません。それなのに、100%勝てる方法が存在すると思い込んでいる方がたくさんいるようです。
投資に関心を持ち、インターネットや書籍で投資のことを調べると、いかにも100%勝てそうな投資の運用法や手法と成功体験などであふれかえっています。ツイッターなどのSNSでも、簡単に利益を手に入れたかのように誤解を招く書き込みが数多くあります。
投資でお金を稼ぐというのは肉体的にはとても楽です。パソコンのマウスを何回かクリックするだけでお金が生まれます。もちろん利益を安定させるためにはかなりの頭脳労働が必要なので疲れますが、十分な知識を得てしまえば、証券会社の管理画面にログインして、いくつかのサイトを見ながら、クリックをする以外にすることはありません。
プロの投資家も個人投資家も、趣味で株を買う主婦であっても、みんな肉体的には簡単にできてしまうのが、インターネットが発達した今の投資の世界です。
インターネットの恩恵で、10万円以下の少額資金でも気軽に投資ができるようになったことや、将来の就業やお金への不安を解決したい人が増えていることで、投資に関心を持つ人が年々増えています。そしてこのような人たちを「カモ」にしようとする詐欺まがいの業者も増えています。彼らは確実にしかも何十倍・何百倍も儲かるかのような魅力的な宣伝文句で勧誘してきます。しかし投資の世界に100%確実に勝てるというものなどないということは理解しておかないといけません。
人間には基本的に、楽して儲けたいという考え方があるので、そのような方法についつい飛びついてしまいがちです。投資のことは詳しくないので、詳しいと思われる人に丸投げしてしまいたい気持ちはよくわかりますが、「楽して儲かる方法がある」ということ自体が、怪しい宣伝文句なのです。
広い投資の世界ですから、人知れず勝率100%で利益を上げ続けている投資家もいるのかもしれません。ですが、私の周囲には、ニューヨーク、ロンドン、東京という世界三大金融市場で30年近く世界最高レベルの活躍をしてきた元プロディーラーがいます。また、その道30年、40年というプロの投資家もいます。彼らが口を揃えて断言することは、「投資で100%勝てることなどはない」ということです。
人は損をすることが大嫌いです。損をするくらいなら儲けは少なくても手堅く儲かる選択肢を選ぶように人間の脳はできています。そのことを実感していただくために、1つのゲームをさせてください。人の脳というものは、合理的な判断ができないということがわかるゲームです。
たとえば、あなたには2つの選択肢があります。1つ目の選択肢は、コインを1回だけ投げて、表が出たら100万円がもらえ、裏が出たら50万円を支払うことです。いかさまはなく、表が出る確率も裏が出る確率も2分の1です。もう1つはコインを投げる必要はなく、必ず20万円もらえるという選択肢です。
この質問をすると大多数の人は、20万円を確実に受け取るほうを選びます。しかしこれは合理的な判断とは言えません。中学の数学で期待値という考え方を学びました。期待値とは、くじやゲームを行った場合に平均するとどれだけの利益があるかという数値です。このコイン投げの例でいえば、100万円もらえる確率が2分の1、50万円失う確率も2分の1ですから、(100万円×1/2)-(50万円×1/2)=25万円となります。したがってコイン投げをするほうが平均的な利益が大きくなるのです。
ここで覚えておいていただきたいのは、人はたとえ合理的な選択肢が目の前にあっても、リスクを冒さずに手堅く手に入る選択肢を選んでしまうということです。これは行動経済学という学問で、実証的に証明されていることです。これを逆手に取って「確実に稼げます」「元本保証します」「最もリスクがない方法を選びましょう」「これをしないと損しますよ」というセールストークが世にあふれかえっているのです。あなたにはだまされてほしくはありません。
このように人間は「損はしたくない」「楽して稼ぎたい」という気持ちを持つことが普通であり、損をしないで確実に稼げ、しかも人任せの投資の仕方に魅力を感じてしまう生き物なのです。その結果、どこにも存在しない完璧な投資の手法やツール、代わりに運用してくれる「まだ出会ってもいない誰か」を探す旅に出かけてしまうのです。
投資は車の運転とも似ています。車を運転するためには、車を運転するための知識を教習所で学ぶ必要がある上に、実際に路上で運転の練習をして技術を体感しなければなりません。知識と技術が十分だとみなされて、はじめて免許がもらえます。
それでも交通事故は毎年数多く発生します。無免許運転で事故を起こす人もいますが、大半は免許を持っている人です。免許と十分なスキルがあっても、お酒を飲んで車を運転すれば事故を起こす確率は格段に上がります。標識や信号のとおりに走行していても、突然子供が脇道から飛び出してくるかもしれません。
投資の世界も同じで、十分な知識があり十分な経験があっても、それに比例して十分稼げるようになるとは限りません。車の運転では総合的に状況を判断しながら事故を起こさないように心がけていく姿勢が大切なように、投資においても同じく総合的に状況を判断しながら、大損をしないように気をつけて取引をしていくことが大切です。
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