(本記事は、高橋慶行氏の著書『12万人が学んだ 投資1年目の教科書』かんき出版の中から一部を抜粋・編集しています)

ダウ理論を理解しよう

値動き
(画像=BEST-BACKGROUNDS/Shutterstock.com)

この項目の3つのポイント
1 ダウ理論は覚えておいたほうが良い。
2 トレンド相場攻略のための重要理論を覚えよう。
3 高値、安値付近の投資家心理を考えてみよう。

ダウ理論とは、チャールズ・ダウ氏が提唱した市場での値動きを評価するための理論です。ダウ理論は6つの法則から成り立っています。

法則1:価格(平均株価)はすべての事象を織り込む
法則2:トレンドは短期・中期・長期の3つに分類される
法則3:主要なトレンドは3つの段階から形成される
法則4:価格は相互に確認される必要がある
法則5:トレンドは出来高でも確認されなければならない
法則6:トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する

チャート分析が大切なのかファンダメンタルズ分析が大切なのかについては、両方とも大切という前提がありますが、しかし本書ではすでにチャート分析を中心にトレードで利益を上げることを推奨しています。そこで、ダウ理論の中でも以下の3つの法則が特に重要になります。

1 トレンドは短期・中期・長期の3つに分類される
2 トレンドは出来高でも確認されなければならない
3 トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する

この3つの法則は、あなたの利益に直結するものなのでしっかりと覚えておくのがいいでしょう。

1つ目は、「トレンドは短期・中期・長期の3つに分類される」です。相場には、多くの投資家がいますが、彼らはさまざまな時間軸で相場を見ています。現在の価格は、すべての投資家にとって同じですが、見ている時間軸によって意味が変わってきます。短期トレーダーにとって最高の買い注文のタイミングは、必ずしも中期トレーダーや長期の投資家にとって最高のタイミングであるとは限らないのです。

この場合の時間とは、ポジションの保有時間です。長いポジション保有時間を持つ投資家は、一時的に価格が自分の思惑と外れて逆方向に行ったとしても、簡単にはポジションを決済しようとはしません。

トレンドは上昇・下降の方向だけでなく、勢い(強さ)という概念もあり、勢いが弱まったと見ると、短期・中期のトレーダーは決済します。長期の投資家は長期間の上昇トレンドを見ているわけですが、それに勢いがなくなったと見ると中期の投資家は、売り決済をするわけです。その結果生じる一時的な下げが、長期トレンドに押し目を作ります。さらに短期でトレードする人たちがいて、彼らは中期の投資家が見ているトレンドの中に押し目を作っていきます。

2つ目は、「トレンドは出来高でも確認されなければならない」です。出来高とは売り買いの成立数を表したものです。株式投資だと売買が成立した成立株数を知ることが簡単にできます(なお為替であるFXでは出来高はわかりません)。出来高が大きいということは、多くの投資家が売買をしているということの証しであり、出来高が跳ね上がると大相場が来たことがわかります。

面白いことに、出来高が下がってきているのに現在の価格は上昇しているということがしばしば発生します。チャートを見ていると現在価格は上昇しているので、多くの投資家がまだ上がると思って買い注文を出します。この注文は高値づかみであることが多く、その後急落して大損してしまう投資家が多く出てくるタイミングです。

投資に限らず、日本人は勢いがあるものに、自分も乗っかって利益を得ようとする傾向があります。しかししっかりと本質を見極めないとかえって損をすることがあるので気をつけないといけません。

オシレーターという指標があります。相場の強弱を示す指標です。買われすぎている、あるいは売られすぎているので注意が必要だといったことがわかるものです。オシレーターは出来高と動きが連動していますので、この法則に当てはめると、「トレンドはオシレーターでも確認されなければならない」ということになります。

3つ目は、「トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する」です。大前提ですが、相場において最も大切なのは現在の価格です。そして現在の価格が今後上がるのか、それとも下がるのかということが、あなたの利益に直結します。さらに現在の価格が今後上がるのか、それとも下がるのかという判断は、過去の値動きや現在の相場状況からしかできません。

ですから過去のチャート上における節目は、しっかりと理屈を理解しておかなければなりません。ですが基本的にはすべての投資家が注目しているため、その節目では注文が集中する傾向にあります。

4-1
(画像=『12万人が学んだ 投資1年目の教科書』より)

上図のチャートで、節目節目でどのような投資家心理が生じるものなのかを説明しましょう。

(1)で価格が反発して下がったとします。この高値を超えると考える投資家よりも、この高値は超えないだろうと思う投資家のほうが多いからです。

(2)のサポートラインで価格が下げ止まり、再度上昇を始めます。

(2)から(3)へと価格が上昇するにつれて、前回の高値である(1)を超えるかどうかに注目が集まります。(1)のときと同じように下落する可能性があるので、買いポジションを持っていた投資家の中にはいったん売り決済をしておこうという気持ちになる投資家もいます。

ここで長期の投資家や(1)を超えたら新たにポジションを持とうと思う投資家が、(1)の少し高値で買い注文を集中して入れていきます。長期の投資家はさらに資金を追加します。

一方(1)から(2)への値動きを下降トレンドと判断してポジションを持った投資家もいて、彼らは(2)から(3)と価格が上昇する間に、含み益がどんどん目減りしています。もし(3)を超えて価格が上昇するのなら、損切りの買い注文を入れないといけないと思案しています。

したがって(3)のポイントで、前回の高値である(1)を超えると、以上の投資家たちの注文が殺到し、また価格が変動します。

ちなみに重要な高値を超える部分で価格が上昇したり、逆に重要な安値を超えて価格が下降したりする局面を狙って売買する手法をブレイクアウトと言います。ですが、ただ高値(や安値)を超えたからという理由だけでブレイクアウトを実行する投資家が大勢いるのが問題です。これだけの理由で注文をしても、勝率は良くならず、むしろ悪くなります。注文が集中するポイントをしっかり見極めてこそ、ブレイクアウトは有効だということです。

このチャートでは、(3)をいったん抜けると価格は上昇し、④まで上がりました。ここからは④でもう十分利益が上がったと考える短期トレーダーや、過去のチャート分析を参考にしながら売り決済をする投資家が出てきてトレンドに勢いがなくなり、一時的に価格が下がることが多いものです。

④の時点から新規の売り注文をする投資家も現れ、さらに価格は下がり⑤を目指していきます。そして(1)の価格は「過去の重要な高値」だったものが、サポートラインに変わります。④から⑤へと価格が下がってくるにあたり、⑤のライン((1)と同じ値段、すなわちサポートライン)の少し上には、この価格で反転することを期待した買い注文が仕込まれるというわけです。

このときでも、長期の投資家は絶好の買い増しのタイミングと思い、買い注文を仕込んでいます。この買い注文もあり、価格の下げ傾向も次第に勢いが弱まり、勢いが弱まったと見た投資家がさらに買い注文を入れてきます。その結果、⑤で価格が反転し、⑥へと価格が上昇していきます。

仮に⑤の価格を下回ったとしても、買い目線で見ている投資家は(2)を最終ラインと考え、そこまで落ちれば下がっていた価格が反転して上昇に転じると、買い注文を仕込んでいるものです。

このチャートでは、⑥を抜けた価格は⑦まで上がり、⑦で下げに転換しています。トレンドが長く続いたときには、相場に算入してきた投資家が増えてきて、一斉に決済し始める「利食い期」となり、急落する可能性があります。こうしたことも踏まえて、注意していかなくてはなりません。

ここまで見てきたように、トレンドは一度発生するとその形が完全に崩れるまで、要は上昇トレンドであれば高値を更新しなくなるまで継続していきます。

 12万人が学んだ 投資1年目の教科書
高橋慶行(たかはし・よしゆき)
宮城県仙台市生まれ。成蹊大学経済学部卒業。投資の学校グループ代表。株式会社ファイナンシャルインテリジェンス代表取締役。教師一家に生まれ、日本人にとって必要な教育事業を作ることを目標にして、学生時代を過ごしながら、学生起業を経験。社会人となり、リクルート社で新卒採用に関する営業を経験し、トップセールスマンとして表彰をされ、その後独立。人生を豊かにするために必要でありながら、学校では教わらない総合的な教養を提供するうえで、自らも起業経験が必要と感じ、2008年、起業。2013年10月、投資教育の必要性を強く感じ、株式会社ファイナンシャルインテリジェンスを設立し、「投資の学校」を開校。2019年現在、正しい投資教育の学習環境を用意し、累計12万人以上の一般投資家に対して、株式、FX、信用取引、オプション取引、日経225先物、米国株などの授業を提供している。

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