(本記事は、高橋慶行氏の著書『12万人が学んだ 投資1年目の教科書』かんき出版の中から一部を抜粋・編集しています)
予想はするな、「トレードエッジ」で注文しよう
この項目の3つのポイント 1 有利な局面を示すトレードエッジとは何か。 2 トレードエッジがあるところのみで勝負しよう。 3 トータル勝負で利益を勝ち取る取り組み方をしよう。
「投資」は未来を予想するものだという投資家が大多数でしょう。しかし前節にも書いたように、「トレード」という方針で売買するのであれば、予想ではなく「対処」で利益を上げることです。
投資の世界には「絶対」というものはありません。1回の売買においては、いくら信用しているアナリストからの情報であっても、いくら百戦錬磨のプロの投資家であっても、絶対ということはありません。当然ながら、一発逆転ホームランを狙うような投資(これはギャンブルです)は、控えるべきでしょう。
しかし、中には「絶対」がない世界にお金を投じること自体を「ギャンブル」と考える方もいることでしょう。そこで少したとえ話をします。
私とあなたで賭けをすることになりました。賭け金は100万円。私が勝てば、あなたは私に100万円を支払わないといけません。あなたが勝てば、もちろん私があなたに100万円を支払います。ただし賭けのルールは少し変わっています。これからサイコロを使った3つの賭けについて説明しますので、それを聞いて、「これなら手堅く自分が勝てる」という賭けがあれば、参加してください。そうでなければ、参加しないでください。
では1つ目の賭けについてです。
1回だけサイコロを振って、偶数が出たらあなたの勝ち。奇数が出たら私の勝ちです。いかがですか?いかさまはありません。普通のサイコロです。偶数が出る確率も奇数が出る確率もともに50%です。
参加者はいないようですね。
では、第2の賭けにまいりましょう。
1回だけサイコロを振って、1~4が出たらあなたの勝ち。5か6が出たら私の勝ちです。さあ、この勝負に乗る人はいますか?
**現実の話をすると、私が創業した投資の学校で何度も出題したところ、ある一定数の人がこの勝負に乗ろうとします。3分の2の確率で勝ち目があるからですね。しかし、この勝負に乗っているようでは、安定投資家にはなれません。
あなたは乗らなかったようですね!では、最後の賭けに行きましょう。
1~4が出たらあなたの勝ち。5か6が出たら、私の勝ちです。ただし2回目の勝負と違うのは、サイコロを100回振って、トータルの勝ち数が多いほうが100万円もらえるということです。
世の中には絶対ということはないから、こんな賭けにも乗らないという方もいるかもしれません。しかし中学・高校で数学の成績が良かった人だったら、必ず乗る勝負のはずです。そしてこれこそが、私のいうトレードでの勝利です。
数学はちょっと苦手でしたという方のために、若干の解説をいたします。これはほぼ間違いなく「絶対」勝てる勝負です。この「絶対」の背景には、「大数の法則」という、数学的な法則が存在するからです。
この大数の法則は、金融、政治、社会および経済を語る上で、実は欠かすことができないものです。銀行が企業にお金を貸せるのも、保険会社が保険料の計算ができるのも、視聴率を割り出すことができるのも、選挙の開票で「当確確実」がすべての開票が終わっていないのに発表できるのも、すべて大数の法則が根拠になっています。
大数の法則を簡単に説明すると、試行回数が大きければ大きいほど、「結果として得られる出現率」は「理想の数値」に近くなっていくということです。
今回の賭けを例にとると、1~4が出る確率は約66.7%で、5か6が出る確率は約33.3%です。つまり1回勝負なら3回に1回は、5か6が出てくることになり、100万円を賭けるにはリスクが大きすぎます。しかし10回、50回、100回とサイコロを投げれば、そのうち1~4が出る回数は、投げる数が多くなるほど66.7%に近づいていきます。これが大数の法則の意味です。
したがって「勝った回数」の勝負であれば、これはサイコロを投げる回数が増えれば増えるほど勝てる確率が高まっていくわけです。10回ぐらいなら負けるかもしれませんが、100回ならほぼ間違いなく勝てるでしょう。それでも不安ならば1千回勝負、1万回勝負に持ち込めばいいでしょう。
おわかりいただけたでしょうか。どうも数学は……という方は、実際にサイコロを100回振ってみて、出た目を記録することをお勧めします。体感的に意味が理解できるはずです。
さて今のたとえ話を実際のトレードに当てはめて考えると、まず確率的に有利な局面を発見する方法を学び、同じ局面ではぶれずに必ず同じ意思決定を繰り返す、つまりトータル勝負で利益を上げることを心がければ、トレードでは堅実に安定的に利益を積み上げていくことができることになります。
この「確率的に有利な局面」のことを、「トレードエッジ」と言います。またトレードエッジがある局面のことを、「エッジがある局面」と呼びます。安定投資家になるための鍵は「エッジのある局面のみ」でしか売買しないという方針で臨むことです。
ただしエッジがある局面といっても、実際のところは何%くらいの確率で利益が上がるかと言えば、80%以上ということはほとんどありません。60~70%という程度です。先ほどのたとえ話と同じです。100回やれば勝っている回数のほうが多くなりますが、途中ではいくらでも負けることがあるということです。連敗も珍しくありません。
しかし60~70%の勝率のトレードエッジだとしても、100回勝負すれば60~70%は勝てることになります。負けの額を少なくし、勝ちの額を多くすれば、かなりの利益が残ります。これがトータルで勝つということです。
いけないのは、トレードエッジが来たのに、その都度ケースバイケースで対処を変えることです。60~70%の確率が、ケースバイケースの対処に変えることで、基本的には「未知数」になってしまいます。それで勝てることもあるでしょう。しかし未知数ということはトータルすれば五分五分、つまりせいぜい50%になってしまいます。
もう1ついけないことは、100回やればトータルで勝てるとわかっているのに、途中で大損して次の勝負にいけなくなってしまうことです。
トレードエッジを見つけたら常に必ず同じ対処をし、大損だけはしないよう自分に課した損切りルールを守り抜きましょう。そうすればトータルで勝てるということを、数学(大数の法則)が保証してくれているのです。
チャート分析でトレードエッジを発見しよう
この項目の3つのポイント 1 トレードエッジはチャート分析で発見できる。 2 チャート分析だけでも優位なトレードはできる。 3 チャートで優位性を発見できる眼を養うことが大切。
チャートとは、株価や通貨の値動きの推移をグラフ化したものです。チャートを分析できるようになると、以下のようなメリットが享受できるようになります。
・他人からの情報に惑わされずに自分の意思で勝てる投資ができるようになる。 ・何度も繰り返し投資チャンス(トレードエッジ)を発見できるようになる。 ・パソコンやスマホの向こう側にいる投資家心理が理解できるようになる。 ・投資をルール化することができ、感情で右往左往しにくくなる。 ・しっかりと確かな投資方針を確立できるようになる。
チャートではローソク足という記号が使われています。
ローソク足には、陽線と陰線の2種類があります。陽線は「価格が上がっている状態」を示し、陰線は「価格が下がっている状態」を示します。陽線は「どこからどこまで、どんな風に価格が上がったのか」、陰線は「どこからどこまで、どんな風に価格が下がったのか」を、「始値」「終値」「高値」「安値」という4つの価格を1つの記号チャートとは、ローソク足を時系列に並べて値動きの推移をグラフ化したものに含めることで、簡潔に表現しています。ローソク足については後ほど詳しく説明します。
チャートを改めて定義すると、ローソク足を基本単位として、ローソク足を時系列に並べることで値動きの推移をグラフ化したものです。
チャートは、過去の実績なので、未来のことはわからないという投資家もいますが、トレードはそもそも予想するものではありません。重要なことは、チャートによって現在の状況を正しく把握することです。チャートという過去の値動きの記録を見ながらこれから上がるのか、下がるのかを判断している投資家が世界に数え切れないほどいるということです。これは機関投資家など、大量の資金を運用するプロ中のプロであっても変わりありません。
つまりチャートを見ながら、「これから上がる」と思った投資家が多ければ、買い注文が増え、価格は上がりますし、「これから下がる」と思った投資家が多ければ、売り注文が増え、価格は下がるということです。つまりチャートを見ている投資家たちの人間心理の集合が価格を決めるということなのです。
このことこそがチャートを重要にしている要因であり、チャートを見ることに意義が あることの根拠なのです。
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