(本記事は、齋藤 隆次氏の著書『ビジネスエリートが実践している 異文化理解の全テクニック』KADOKAWAの中から一部を抜粋・編集しています)

30年後に世界人口の3分の1を占める!?世界中で増え続けるイスラム教徒

イスラム教
(画像=PIXTA)

イスラム教徒の人口は約16億人以上、世界人口の約4分の1近くがイスラム教徒と言われています。

イスラム教の発祥地はアラビア半島ですが、実は現在イスラム教徒が一番多く住んでいるのは東南アジアで、約7.5億人とイスラム教徒の約半分を占めています。

世界で最も多くのイスラム教徒が住んでいる国はインドネシア(約2.22億人)、2番目がパキスタン(約2億人)で、以下、インド(約1.7億人)、バングラデシュ(約1.45億人)と続きます。

一般に、インドはヒンドゥー教徒の国と思われていますが、人口の14.2%はイスラム教徒です。人口が約12億人と大きいため、14.2%でも1.7億人となります。

また、人口規模が小さいため上位に入りませんが、マレーシアも人口の61%に当たる約2000万人がイスラム教徒です。

正確な統計はありませんが、現在日本には、10万~20万人のイスラム教徒が暮らしていると言われます。最も多いのがインドネシアからの入国者で約2万5000人。日本人のイスラム教徒も約5万人おり、合計約15万~25万人。540億円のハラル対応市場があります。また、訪日観光客に占めるイスラム教徒は数十万人規模と推計されています。

世界的に見ても、イスラム教徒の人口の伸びは急激であり、2030年にはキリスト教徒を抜き、2050年には世界人口の3分の1になると見込まれています。

日本に住んでいるとなかなか実感できないことかもしれませんが、このようにイスラム圏は世界中で拡大しています。多くの日本人にとって、イスラム圏やイスラム教徒はこれまであまりなじみのなかった存在かもしれませんが、これからの時代はそのようなことは言っていられないでしょう。本章で述べるような最低限度の知識は身につけておくべきです。

これだけは知っておきたいイスラム教の基礎知識

イスラム教について、日本人としてこれだけは知っておきたい知識を次のようにまとめました。本章の各項で詳しく解説していきますが、まずは要点を押さえておきましょう。

①開祖

7世紀に預言者ムハンマドが神の啓示を受けたことがイスラム教の始まりです。「イスラム」とはアラビア語で「神への帰依(きえ)」を意味します。イスラム教徒のことは「ムスリム」といいます。

②コーランとハディース

「コーラン」は、ムハンマドの死後、彼が受けた神の啓示を弟子たちがまとめたものです。イスラム教徒の社会規範や個人の生き方、服装や食事、法律まで事細かに記されており、今でもイスラム社会の根幹をなしています。一般家庭の子どもたちは4~5歳から各地域のモスクや町中の私塾でコーランの暗唱トレーニングを始めます。小学校や中学校、高校にもコーランの授業があります。

一方、「ハディース」は、ムハンマドの言行を伝える伝承です。

イスラム社会は、コーランとハディースの内容に基づくルールで運営されてきました。そのようなルールのことを「シャーリア(イスラム法)」といいます。

③六信五行

コーランで定められている最も重要な定めです。六信は「6つの信仰の基礎」、五行は日常生活に深く根づいた「5つの行動」をいいます。

六信は「唯一神アッラーの存在を信じる」「啓典たるコーランを信じる」「預言者を信じる」「天使を信じる」「来世を信じる」「天命を信じる」です。

五行は、「シャハーダ(信仰告白)」「サラート(礼拝)」「ザカート(喜捨)」「サウム(断食)」「ハッジ(巡礼)」です。

豚肉とアルコールは絶対NG。ハラルマークのある食べ物しか食べない

イスラム教徒について、「豚肉を食べない」とか「アルコール(お酒)を飲まない」という断片的な知識を持っている人は最近増えていると思います。「ハラル」という言葉もここ数年でかなり認知度が上がっています。

「ハラル」とは、コーランの教えに基づく「合法的なもの」「許されたもの」を意味する言葉です。イスラム教徒にとってハラルでないものを口にすることは神に対する背信行為となり、罪を犯すことになります。

「ハラル」対応のものは、まず忌避されたものを含んでいてはなりません。製造工程も厳重に管理された環境下で作られた食品を指します。

牛や鶏の解体もしきたりに沿って行われ、イスラム教の戒律に従って調理されたもののみがハラルマークをつけることを許されます。世界各国にはハラルの認証機関が200以上あります。ハラルの反対は「ハラム」といいます。

イスラム教徒は、豚肉、糞尿、血液、アルコール、イスラム式で解体されなかった肉などハラムのものを食してはなりません。またハラルの食品であっても、ハラムと混ざったものはハラルとは見なされません。

食品以外にも、薬剤やサプリメント、洗面用品、香水・化粧品、物流、包装、機械、ホテル、レストランなどでもハラル対応が必要となります。日本食も、みりんや出汁などに含まれているわずかなアルコールを取り除くことなどが必要です。空港のレストランや、各航空会社においても、ハラル対応の機内食の準備が進められています。

全世界のハラル市場は60兆円と言われており、そのうちアジアで35兆円、世界の6割の市場があります。また、訪日イスラム教徒は35万人と言われており、訪日イスラム教徒だけでも100億円規模の市場になります。

ビジネスパートナーが女性の場合、男性から握手してはいけない

コーランの規律のなかには、「女性の肌に触れてはいけない(女性は肌や髪を見せないようにする)」という項目があります。

したがって、イスラム教徒の女性は親族以外の男性に触れることは禁止されています。たとえ恋人でも結婚するまで触れてはなりません。握手を求めて、「宗教上の理由でできません」と断られても驚かないでください。

イスラム教徒の女性が肌や髪を見せないようにするものとして「ヒジャブ」があります。

ヒジャブは、「覆う」「遮蔽(しゃへい)する」「保護する」という意味の動詞を語源とします。一般には、女性の頭と体を覆う布を意味しますが、アラビア語においては頭に被るベールといった意味のほかに「貞淑」「道徳」といった意味もあります。

国によって、覆っている範囲は異なります。また、インドネシアやアメリカにおいては、いろいろな色を用い、ファッショナブルなものもあります。

イスラム教徒に挨拶するとき、相手が男性であれば握手をします。その際、左手は不浄の手と言われているので必ず右手を差し出してください。場合によってはハグすることもあります。また握手の後、胸に手を持ってくる人もいます。

しかし、イスラム教徒の女性は握手しないのが原則です。

もちろん、グローバル化の流れのなかで、ビジネスシーンでは握手を受け入れる人たちもいます。もし相手の女性が握手を求めてきた場合は、軽く触れる程度にしましょう。決して男性から握手を求めてはなりません。

握手をする場合でも、マレーシアでは、通常強い握手はせず、差し出された手を軽く握る程度にします。歓迎の気持ちを表現したいときには、握手の後に自分の手を胸に持っていきます。

ビジネスエリートが実践している 異文化理解の全テクニック
齋藤 隆次
異文化人材マネジメント・コンサルタント。パイオニア・インダストリアルコンポネンツインク元CEO。ヴァレオ(フランス系大手自動車部品メーカー)ジャパン元社長。グロービス経営大学院経営学修士(MBA)、中小企業診断士。1955年福島県生まれ。国立電気通信大学経営工学科卒。在学中は、行動科学や品質管理を学ぶ。大学卒業後、大手電機メーカー・パイオニア株式会社に入社。40歳でアメリカ・ロサンゼルスに赴任し、北米事業全体を担当。メキシコ新工場設立プロジェクトのマネジメントにも携わる。44歳のとき、現地子会社パイオニア・インダストリアルコンポネンツインクのCEOに就任、経営合理化に辣腕を振るい、黒字化を果たす。帰国後ヘッドハンティングを受け、フランス系大手自動車部品メーカー・ヴァレオの日本国内事業部長に就任。ドイツ・フランス・日本の文化のはざまで会社再生に取り組む。50歳でアジア統括部長に、57歳で日本法人社長に就任。パリにあるヴァレオ本社リエゾンコミュニティメンバー(全世界9万人の社員のトップ30人)に唯一の日本人として名を連ねる。在任中は世界市場における日系顧客からの受注を3倍に伸ばすなど、業績拡大に寄与する。また、「和魂洋才」の考えの下、外国の経営システムや考え方の長所を取り入れつつ、和のコミュニケーションと融合させながら進めていく異文化人材マネジメントの手法を確立する。これまで日本国内外で接した外国人は20カ国以上、のべ5,000人以上に及ぶ。

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