10-12月期は前期比年率▲6.3%と5四半期ぶりのマイナス成長

本日(2/17)発表された2019年10-12月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比▲1.6%(前期比年率▲6.3%)と5四半期ぶりのマイナス成長となった(当研究所予測1月31日:前期比▲1.1%、年率▲4.4%)。

消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動などから、民間消費(前期比▲2.9%)、住宅投資(同▲2.7%)、設備投資(同▲3.7%)の国内民間需要がいずれも急速に落ち込んだことが大幅マイナス成長の主因である。政府消費(前期比0.2%)、公的固定資本形成(同1.1%)の公的需要は増加したが、国内需要は前期比▲2.1%の大幅減少となった。

一方、輸出は欧米向けを中心に低迷が続いたが、国内需要の落ち込みを背景とした輸入の大幅減少から外需寄与度が前期比0.5%(年率1.9%)と成長率の押し上げ要因となった。

名目GDPは前期比▲1.2%(前期比年率▲4.9%)と5四半期ぶりの減少となったが、実質の伸びは上回った。GDPデフレーターは前期比0.4%(7-9月期:同0.4%)、前年比1.3%(7-9月期:同0.6%)であった。

2019年10-12月期の1次速報と同時に基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率も遡及改定された。2019年7-9月期の実質GDP成長率は、設備投資の下方修正(前期比1.8%→同0.5%)を主因として前期比年率1.8%から同0.5%へと大幅に下方改定された。

この結果、2019年(暦年)の実質GDP成長率は0.7%(2018年は0.3%)、名目GDP成長率は1.3%(2018年は0.2%)となった。

QE速報
(画像=ニッセイ基礎研究所)

●需要項目別の動き

民間消費は前期比▲2.9%と5四半期ぶりに減少した。

消費税率引き上げ後の落ち込みは前回増税時(2014年4-6月期の前期比▲4.8%)よりも小さかったが、増税前の2019年7-9月期は前期比0.5%の伸びにとどまっており(前回増税前の2014年1-3月期は前期比2.0%)、消費増税前後で均してみると、消費の基調は前回増税時よりも弱い。軽減税率の導入やキャッシュレス決済に対するポイント還元などの消費増税対策が一定程度下支えしたものの、自動車、家電製品などの耐久財を中心に駆け込み需要の反動が生じたこと、消費税率引き上げに伴う実質所得の低下に、10月の台風19号による供給制約の影響が加わったことが消費の落ち込みを大きくした。

実質家計消費の内訳を形態別にみると、駆け込み需要の反動が最も強く表れる自動車、家電製品などの耐久財が前期比▲12.8%の大幅減少となったほか、被服・履物、家具などの半耐久財も前期比▲6.2%と大きく落ち込んだ。また、軽減税率が導入された食料品を含む非耐久財(前期比▲2.8%)、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が見られなかった外食、旅行などのサービス(前期比▲1.3%)も減少した。

雇用者報酬は名目・前年比1.7%(7-9月期:同1.6%)、実質・前年比0.7%(7-9月期:同1.3%)となった。名目の伸びは若干高まったが、消費税率引き上げに伴う物価上昇を受けて、実質の伸びは前期から低下した。

住宅投資は前期比▲2.7%と2四半期ぶりに減少した。相続税対策の需要一巡やアパートローンに対する金融庁の監視強化を背景とした貸家の減少に加え、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が一巡したことから、住宅投資は2019年度に入り弱めの動きが続いている。新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は90万戸台の推移が続いていたが、2019年10月以降は80万戸台へと水準を切り下げている。

GDP統計の住宅投資は工事の進捗ベースで 計上され着工の動きがやや遅れて反映されるため、2020年1-3月期も減少する可能性が高い。

設備投資は前期比▲3.7%と3四半期ぶりに減少した。高水準の企業収益を背景に設備投資は堅調を維持していると考えられるが、2019年7-9月期に簡易課税制度を採用する中小企業の駆け込み需要や軽減税率・キャッシュレス決済対応の需要によって高い伸びとなった反動が表れたとみられる。

なお、設備投資は1次速報では生産動態統計を中心とした供給側統計を中心に推計されている。2019年10-12月期の法人企業統計の結果次第では3/9公表予定の2次速報で上方修正される可能性もある。

公的固定資本形成は、2019年度当初予算が前年度から大幅に増加していることを反映し、前期比1.1%と4四半期連続で増加した。公共工事の先行指標である公共工事請負金額が増加を続けていること、1/30に成立した2019年度補正予算で1.6兆円の公共事業関係費が追加されたことを踏まえれば、公的固定資本形成は先行きも増加が続く可能性が高い。

外需寄与度は前期比0.5%(前期比年率1.9%)と3四半期ぶりのプラスとなった。財貨・サービスの輸出は前期比▲0.1%と低迷が続いたが、消費税率引き上げ後の国内需要の落ち込みを反映し、財貨・サービスの輸入が同▲2.6%と輸出以上に落ち込んだことが成長率の押し上げ要因となった。

●新型肺炎の影響で1-3月期もマイナス成長の公算

2019年10-12月期は消費税率引き上げに伴う実質所得の低下、駆け込み需要の反動、台風19号に伴う供給制約によって国内需要が大きく落ち込んだことから、大幅マイナス成長となった。

成長率のマイナス幅は前回の消費増税後(2014年4-6月期:前期比年率▲7.4%)より若干小さいが、増税前の伸びが低かった(2019年7-9月期:前期比年率0.5%、2014年1-3月期:同4.1%)こと、鉱工業生産の減産幅(前期比▲4.0%)が前回の増税後(同▲2.9%)よりも大きいことなどを踏まえれば、景気の基調は前回増税後よりも弱い。

2020年1-3月期は駆け込み需要の反動が和らぐことで民間消費、設備投資が持ち直す一方、新型肺炎の影響で中国向けを中心に財・サービスの輸出が大きく落ち込むことが避けられない。

当研究所では、1-3月期の中国からの訪日客数は前年比▲50%程度の減少、中国工場の操業停止の影響で中国向けの輸出(数量ベース)が前期比▲7%程度の減少となることを想定している。1-3月期のサービス輸出は中国からの訪日客数の減少によって▲2,750億円、財輸出は中国向けの減少によって▲2,890億円、合計▲5,640億円減少し、実質GDPは前期比▲0.4%(前期比年率▲1.6%)押し下げられる。中国以外の国からの訪日客が減少すること、中国経済の悪化が世界経済に波及すること、日本国内での各種イベントの中止や外出の手控えによって消費が下押しされることなどを含めれば、押し下げ幅はさらに拡大する可能性もある。

現時点では、2020年1-3月期の実質GDPは国内需要の持ち直しを外需の悪化が打ち消すことにより、前期比年率▲1%台のマイナス成長を予想している(1)。

QE速報
(画像=ニッセイ基礎研究所)

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(1)現時点では新型肺炎は2020年4-6月期には終息することを想定している。その場合、4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率1.4%押し上げられる

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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