行動力に悩む人は少なくない。本来、人はやらなければいけないことなら、何も考えずにとにかくガンガン行動する。現代社会では、そんなスピーディーな行動力が求められることがある。
だが、起業して会社経営する社長の立場でも、どうしても行動力が湧かないと悩む社長は意外と多いのだ。
今回は行動力がなくて悩む社長に効く「処方箋」を紹介したい。
お金を使うと行動力がアップする理由
無料か?それとも有料か?この違いで、行動力に大きな差が出てくる。
筆者はセミナーや講演に登壇するビジネスをしている。過去に本来は有料でやるべき内容を無料でセミナーをさせてもらったことがある。
手前味噌ながらセミナーの内容は満足度が非常に高く、ほぼ全員の参加者から「非常に満足」と評価をつけてもらえた。もちろん、必死に作り込んだセミナーの評価が高かったことは、非常に嬉しい。
だが、このセミナーは完全に失敗であった。なぜなら、ほとんどの参加者がセミナーで伝えた内容を実践できなかったからである。
セミナーとは、会場でface-to-faceにて知識や情報を伝え、それを実践することでビジネスや人生に何らかの影響を与えることが目的である。
知識は活用して初めて意味をなすものなので、知識として頭に入った段階では、まだ活用度ゼロの状態だ。しかし、人はお金を使わずに得られた情報を大事にしない。筆者のセミナーでも無料で開催してしまったために、参加者は無料で得られた知識に満足してしまい、具体的な行動に結びつかなかったと分析できる。
故にそれ以降は、無料で開催するのは完全にやめてしまった。だが無料で開催したセミナーと異なり、有料で開催したセミナーは違った結果となったようだった。
参加者は身銭を切って参加しているので、意識のコミットメント度合いが全く違った。居眠りなどする人もおらず、必死にメモを取りながら食い入るようにこちらの話を聞いてくれたのだ。
参加後、学んだことを実践して「こんな具合に良くなりました!」と何件も嬉しい報告をいただくことができたのである。
経営者でも、「とにかく無料が好き」「なんでも無料で済ませたい」と考える人がいる。だが無料では身を着られるような痛みがない。それ故に、行動しなくてもデメリットがないので、強烈な行動力を発揮するインセンティブが働かず、結果的に行動できない自分に悩むことになってしまう。
行動力をつけるならお金を使うべきだ。ビジネスはリターンとリスクの関係から逃れることができない。お金を使うことによって「元を取らなければ損」となるので、必死になって回収しようとするだろう。この気持ちが強力な行動力を生み出す源泉となるのだ。
外圧をうまく活用する
行動力がない人の特徴は、自分に一切の外圧を加えないことがあげられる。
外圧と言うのは第三者からもたらされる強制力のことだ。強制力がなければ、精神的には非常に楽ができる。行動しなくても、誰にも咎められることがない。結果的にその精神的楽さが、行動力がないことにつながるのだ。しかし外圧を上手に使うことで、自らを行動力あふれる気質へと変えることができるだろう。
筆者はこの外圧をうまくハンドリングすることで、365日起きてる間中、ずっとビジネスに集中できていると感じる。メディア会社へ原稿を提出する時には、いつまでに原稿提出します!と先に約束をしてしまう。
それも先方から指定された期日より遥かに早く。もしも執筆する気になれないからといってサボって期日を過ぎてしまうと、相手に迷惑をかけてしまうだけでなく信用も失ってしまう。結果的には損するのは自分なので、必死になって原稿を仕上げ、何が何でも期日までに提出しようという気持ちで筆を取るのだ。
また先日、筆者は人生初のダイエットに挑戦することになった。やる前から「漫然と挑戦しても確実に失敗する」と分かっていた。なのでSNSを使って体重を毎日報告し「うまくいった点、失敗した点」を分析しデータとして提出したのだ。
また、セミナーの参加者に「セミナー時には、体重を63キロ台にして登壇します」と約束をした。こうなると必死になってダイエットに励む。多少、食べたい気持ちがあっても、体重を増やして格好悪い姿を見せてしまうわけにはいかない。
データを取りながら試行錯誤し、結果的に2ヶ月ちょっとで6kg以上痩せることができた。目標体重まであと900g減少と目前になり、改めてこの外圧の力を再確認することになったのである。
行動力は誰もが持っており外圧で開花する
「行動力」というと、あたかも生まれ持った才能や大きな情熱が必要だと思いがちだ。しかし、筆者はこれまでの経験から「行動力は知識と技術であり、後天的に獲得するもの」と考えている。
つまりは誰もが身に付けられる要素であり、ビジネスで行動力が求められる経営者にこそ早めに身に付けてもらいたいスキルである。(提供:THE OWNER)
文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)