黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子 肥後庵 代表 フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』(https://amzn.to/2U7ZeoX )など。

「直感を大事にしよう」とよく言われる。だからこそ「この人大丈夫かな?」と感じる相手を避けてしまうのだ。しかし、その直感の正体を冷静に分析すると、必ずしも直感は正しくないという事実が見えてくる。

人は「未知」に恐怖を覚える

怪しい
(画像=fizkes/Shutterstock.com)

人は本質的に未知のものに恐怖する。アメリカの思想家・哲学者のエマーソンも「恐怖は常に無知から生まれる」といっている通り、人は分からない時に不安を抱きやすい生き物だ。

太古の昔、原始的な生活をしている時代を人類は長く生きた。その時代においては、未知のものに手を出すことはリスクであり命取りになったのである。

その名残りもあって現代人は、未知のものには恐怖を覚えるようになっているのだ。つまり直感は、生存本能により脳内から発する強烈なアラートということになる。

直感に反することが正しい時

だが、ビジネスはリスクとリターンの関係で構成されている以上、未知のものにはリスクもリターンも内包されている。

かつては多くの人が「インターネットサービス」そのものにリスクを感じていた時代があった。

・ネットバンキングはお金が抜かれる
・ネットで実名を登録すると覚えのない請求が来る
・ネット通販はクレカ情報が漏洩する

などネットの利便性ではなく、リスクばかりに目が向いて参入を控える人が今では考えられないほど存在したのだ。

だが、今ではインターネットなくして現代社会は成り立たないほどに浸透している。GAFAという言葉も生まれ、4社の時価総額を合わせると500兆円という日本のGDPに迫る隆盛を築いている。

インターネットが登場したばかりの頃に、ビジネスチャンスに目をつけて成功した実業家も数多く生まれた。リスクばかりを気にして、参入が遅れたものは今頃後悔しているだろう。

「ネット=怪しい」というのも、直感という本能が生み出した幻想だった。ビジネスの世界では、直感に反することが正しいという場面は少なくないのである。

「怪しい」と思った人が最高のビジネスマン

ここで筆者の体験を話したい。

過去に調べ物をしている時に、偶然あるブログを見つけた。そのブログを書いた人物は一言で言えば「クレイジー」としか言いようがなかった。

まず、タメ口である。筆者もこの原稿は「である・だ調」で丁寧語ではないが、彼は企業とのビジネスメールから顧客サポートまですべてタメ口なのである。

そして風貌もまた、ひと目で怪しさを感じた。詐欺師かチンピラのようにしか見えない。ほとんどの人が彼を見て「危ないやつだ」と離れたくなる気持ちを覚えるのは想像に難くない。

だが彼は、驚くような手法で多額の収益を叩き出しているすさまじい人物であった。強烈に魅せられ思い切って声をかけてみると、タメ口ではあるものの繊細かつ論理的で非常に丁寧な対応で驚いた。そして筆者は彼から多くのビジネス価値を受け取ったのである。

あのとき声をかけていなかったら、今の筆者はいないだろう。直感的な怪しいを信じないで良かったと心から思っている。

直感が全てではない!リスクに惑わされるな

「怪しい」と直感を覚えたら、立ち去る前にその直感が本能から発せられていることを思い直してほしい。そして、多くの人が直感に従ってリスクとともにリターンを逃しているのも事実である。

まずは、本当にそこからチャンスは得られないだろうか?とビジネスの視点で思考してもらいたい。

「人の行く裏に道あり花の山」という投資の格言がある。ビジネスにもこの格言は間違いなく生きているのだから。(提供:THE OWNER

文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)