黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子 肥後庵 代表 フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』(https://amzn.to/2U7ZeoX )など。

一世を風靡した経営者たちも、気がつけばいつの間にか姿を消している。しかし一度だけなら勝てるものの、勝ち続けることは難しいのだ。

今回は、ビジネスにおいて「勝つこと」と「勝ち続けること」における本質的な違いについて解説する。

勝つことは簡単でも、勝ち続けることは難しい

勝つ人
(画像=Jacob_09/Shutterstock.com)

一度だけ勝つならはマグレがある。だが、それが何回も続くほどビジネスは楽な世界ではない。

あらゆるビジネスの分野において、波に乗ることは非常に重要だ。この「波」という表現は「トレンド」と置き換えて理解して頂いても構わない。世の中にはビジネスチャンスの波が次々と現れ、そして消えていくことを繰り返している。

2017年は「仮想通貨」の波があり、Googleの検索ランキングの2位に「ビットコイン」がつけられた。チャンスの波が現れた時に乗ることはそこまで難しくはない、そのことを教えてくれるのがこの2017年の仮想通貨ブームだ。

2017年は仮想通貨投資で億を超える利益を手にした億り人が数多く誕生し、仮想通貨を紹介するアフィリエイターが、ボロ儲けをした様子を嬉々として自身のブログに取り上げることになった。

一時期は「女子大生投資家」などもメディアに取り上げられるほどだったが、この波は原稿を書いている時点では過ぎ去ってしまい、今ではほとんどの人が話題にしていない。

つまり、2017年だけ波乗りできたものは多数現れたのに、今でもその時の波に乗っている人は極めて少ないのだ。今は「動画編集」「副業」といったキーワードでビジネスの波が発生している。だが、10年後はどうだろうか?

勝ち続ける難しさ

勝ち続けることを難しくする要素に「本質的な実力の有無」がある。

チャンスの波が発生している時は、勝つためのハードルは非常に低い。強烈なニーズが発生しているので、商品やサービスを棚に並べたそばからドンドン売れていくからだ。

筆者の友人に、せどりビジネスをしている人物がいる。彼は昨今のコロナウイルス騒動でマスクを取り扱ったところ、従来価格の5倍でも飛ぶように売れていき「売れすぎて寝る時間もない!」と嬉しい悲鳴をあげていた。だが、コロナウイルスの騒動が沈静化しても、マスクを売り続けるのは容易ではないだろう。

ブームが来たときは一度だけ勝てる。だが、その後も勝ち続けるには「本質的な実力」が必要だ。マスクの例で言えば、つけ心地のいい高級素材を使用したマスクなど、独自の価値をもたせたものでなければブームがない時にも売れ続けることはないのだ。

つまり、一度だけ勝つのはブームなど一過性による、つまりは外的要因だ。端的に言えば「運」で勝っているだけなので、本人の実力ではない部分もあるのだ。

勝つのは運、勝ち続けるには実力が必要だ。故に後者は圧倒的に数が少ないのである。

勝ち続けるために持つべき思考

勝ち続けるために持っておくべき思考がある。それは「長期視点」である。

一過性のブームが来ているから稼ごう、という話は短期的な思考だ。昨今、タピオカが流行っている。この流行りに乗ってタピオカ店を出店して稼ごう、というビジネスマンも少なくないだろう。

だが、そのタピオカ店が本質的な価値を提供できなければ、ブームの終焉と命運をともにすることになる。

だから立ち上げるなら「ブームに関係なく、タピオカの魅力を訴求するマーケティングと、他店に提供できない価値」を追求し続ける「長期視点」がなければ生き残ることはできない。

いや、長期視点を持つことで「ブームのタピオカ店ではなく、老舗を目指すためのウナギ屋で勝負する」という選択肢になるかもしれない。

勝ち続けるには実力が必須

経営者にとってビジネス上で重要なキーワードは「継続」だ。一度だけ勝つためだけに起業する社長はいないだろう。

だが、短期的思考で「勝つ」ことを目的に立ち上げてもすぐに消えることになる。長期視点で「勝ち続ける」を考えて、ビジネスの継続性を維持するような取り組みと思考が肝要なのである。(提供:THE OWNER

文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)