コンセプトづくりからはじめる「商品ブランディグ」

商品ブランディグ
(画像=日本実業出版社)
【この記事のポイント】
1. 商品ブランディングはコンセプトづくりから
2. コンセプトはワンフレーズであらわす
3. 刺さるワンフレーズは“早口ことば”“ラップ調”で3回いえる
4. “相反する言葉のミックス”はワクワク感が出る
5. “これまでなかった感”を出すヒントとは?
6. コンセプトづくりに苦戦したら「お客様の困りごと」を洗い出す

ブランディングは「売り手から買い手への約束」

商品に好感度やインパクトを加えて認知度を高めるには、「ブランディング」が有効です。ブラディングというとネーミングやキャッチコピー、パッケージデザイン、広告展開など検討事項が多く難しく感じますが、その本質は「売り手から買い手への約束」です。この点を理解しておけばゴールを間違えることはないでしょう。

必ず成果につながる「商品ブランディング」実践講座』の著者である村尾隆介さんは、中小企業にブランド戦略ブームを巻き起こした第一人者です。村尾さんは同書で、「商品ブランディングはまずコンセプトづくりから始まる」と述べています。ここでは同書から、「コンセプトづくり」の考え方と手順を紹介しましょう。

(以下は『必ず成果につながる「商品ブランディング」実践講座』第1章を一部再編集のうえ転載したものです)

『スターウォーズ』は“スペース・サムライ・ムービー”だ

商品ブランディングの道は、まず商品のコンセプトづくりから始まります。それは「ワンフレーズで表す、あなたの商品のコンセプト」です。

映画『スターウォーズ』も今でこそこれだけ続編が存在しますが、第1作を撮り始める前までのジョージ・ルーカスの苦労は大変なもの。撮影にこぎつけるまで誰もまともに企画を取り合ってくれなかったといいます。

ある時、その当時のハリウッドの偉い人が「結局コンセプトは何なんだ。ひと言でいってくれ」と尋ねたのですが、その回答は明確でした。ジョージ・ルーカスは「これはスペース・サムライ・ムービーだ」と返し、そのワンフレーズが功を奏してスターウォーズはクランクインに至りました。

1970年代から今も全世界の老若男女を魅了し続けるスターウォーズ・ブランド。数あるエピソードの始まりには、こんなエピソードがあったのです。

難しく考えずヒネらないワンフレーズで

「商品コンセプトをワンフレーズで」といっても、なかなかイメージしづらいと思います。ですので、まずは完成形のイメージとして、架空の商品のコンセプトをワンフレーズでリストにしてみました(下のイラスト)。

商品ブランディング
(画像=日本実業出版社 本書37pより)

中にはいたって普通のものもありますよね?

必ずしも奇をてらう必要はないので、あなたの商品そのものの表現を、まずはワンフレーズで伝えることを目指しましょう。で、余裕があったらその後に少し言い回しをヒネるとか、ちょっとしたユニークさを加えてみるといいかもしれません。

さあ、眉間にシワ寄せて考えるよりも、ここは楽しくいきましょう! カフェやバーでノリのいい雰囲気の中、ひとりで黙々と考えるより、数名で話し合うといいでしょう。そんな時に互いに否定は絶対なし。いいね、いいねと意見を尊重しあいながら会話をパンパンパーンとつないでいきましょう。

いいワンフレーズは「3回テスト」をクリアする

心に残るというか、頭に刺さるというか、社内外に伝播しやすいワンフレーズには、こんな特徴があります。

まずひとつは、それを3回早口ことばでいえること。なので、あなたの商品のワンフレーズのコンセプトを最終決定する前に、ぜひとも口ずさんでください、3回!

いえなかったら長すぎます。削ぎ落しの工夫をしましょう。もしも無理なくいえたら、次は3回ラップ調で唄ってみてください。スムーズにいえたらリズム感もばっちり。もしもダメなら、ここは微調整です。“てにをは”や言い回しを再度ブラッシュアップです。

私の長年のブランド戦略のコンサル経験から、人から愛され、広がっていき、チームも固まるワンフレーズは、この“2つの3回”を満たすものだったりします。ですので、マストではないですが、なるべくあなたの商品コンセプトを表すワンフレーズも、このテストをクリアして完成という方が望ましいです。

クールなワンフレーズは相反する言葉のミックス

もうひとつマストではないけれど、あるといいワンフレーズの考え方を。

下に幾つかリストしたワンフレーズは先に載せた事例よりも上級編です。一見どこも違いはないようですが、これらは“相反する言葉の組合せ”でできてます。相反する言葉が、ひとつの短い文言に収まっていると、それを見聞きした人は、いい意味で「んっ?」となります。その後、頭の中で一瞬考えるので記憶に残るし、何より言葉がオシャレになります。

たとえば『シルバー層のためのロボット型掃除機』という商品コンセプトも悪くはないですが、まあ普通……。これを相反する言葉のミックスを意識した形に換えると、ひとつの案として『和室に似合うロボット型掃除機』なんて表現ができます。和室とロボットは相反するもの。でも、その同居を想像するとワクワクします。ワクワクするワンフレーズを軸に仕事を進めた方が、関わる皆もキビキビ動いてくれると私は考えています。

商品ブランディング
(画像=日本実業出版社 本書39pより)

コンセプトの中に欲しい“これまでなかった感”

あなたの商品のコンセプトを社内や協力会社といった関係者に伝えたとき、相手から「これまでになかったね、それ!」という反応があると、この先もブランディングが楽しみです。「この時代に商品なんて出尽くした」という声も聞こえてきそうですが、既存商品の角度を少しだけ変えるくらいで意外と簡単に今までなかった商品コンセプトは生まれるものです。

たとえば、子ども用の食器なんて無数にあります。オシャレな子ども用の食器も多いです。でも、エコな素材で食育重視、それでいてオシャレな子ども用の食器なら、これまでなかったコンセプトの商品になるかもしれません。実際そんな発想から興したのが〈iiwan〉という商品です。愛知でクルマのパーツの金型を主に製造していた〈豊栄〉が脱・下請けを目指しつくった自社ブランドです(下の写真)。

商品ブランディング
(画像=日本実業出版社 iiwan「MY FIRST DISH」(写真は本書141ページより))

ターゲット層を絞ってこれまでなかった商品を?

「これまでなかったね」といわれるような商品コンセプトを生み出すヒントを続けます。今度は「ターゲット層を絞ってみる」です。

たとえば、消火器。買ってもらいたい層を商品コンセプトの一文に盛り込むと、こんなワンフレーズになります。

「ひとり暮らしの女性が置きたい唯一の消火器」
「離れて暮らす親に子どもが贈りたい消火器」

もしも、あなたがブランディングしている商品のコンセプトを、こんな風につくることで「これまでなかったね!」となるなら、ひとつ試してみてください。ターゲット層は人物のみならず「オフィスでもインテリアになる消火器」や「富裕層向けの消火器」など場所や世帯収入などで考えるのもOKですし、「インバウンド客にも分かりやすい消火器」というのもあり。

もしも、あなたが商品コンセプトづくりで行き詰ったら、もしくはもっとワンフレーズを研ぎ澄ませたいなら、こんな考え方も取り入れてみてください。

商品ブランディング
(画像=日本実業出版社 本書41pより)

コンセプトが浮かばない? 再度困りごとの洗い出しを

商品コンセプトづくりの段階で苦戦しているのなら、あなたの商品の周辺にある“お客さまの困りごと”を徹底的に洗い出しましょう

あなたがブランディング中の商品(ヨガマットだとします)は、ヨガ人口の増加と共にカラーも豊富になりました。価格帯も上から下までヨリドリみどり。お客さまのヨガマットに対する困りごとなんてないように思えます。

が、たとえば自宅→職場→ヨガスタジオと持ち運びも多いアイテムだけに「もっと軽くて可愛いものが欲しい」という声があります。またヨガマットを自宅で敷きっぱなし派からも「ネコが爪でガリガリやるのは仕方ない。でも、破片をクチにするのが心配。誤飲しても害がない素材のマットがあれば…」といった話を聞きます。

こんな声を拾って商品開発を進めれば、おのずと“これまでなかった商品コンセプト”に辿り着くはず。お客さまの不平・不満・不安は一杯あります

すべての商売は困りごとの解消であるべき

今回あなたがブランディングを行う対象がゼロから開発する商品なのか、既にある商品のテコ入れなのか、仕入れや輸入商材なのかは分かりません。でも、ビジネスの基本の「き」。全ての商売は、お客さまや社会の困りごとの解消のために行うべきものであり、その困りごとの解消の対価が売上です

せっかくコストをかけて商品ブランディングをしても市場に需要がなければ拡販に苦労必至……。その上でも今一度“困りごとの解消”の再考です。あなたの商品は、お客さまや社会の困りごとを解消しますか?

なんていうと、家事に関するアイデア商品や、海水を飲料水に変えるような大きな話を想像しがちですが、もっとシンプルな困りごとの解消で結構です。もっとオシャレなのがいい、親子で使いたい、女性でも買いやすいようにして欲しい、インテリアに溶け込むものだといい…。この程度のお客さまの困りごとの解消で構わないのです。

商品ブランディング
(画像=日本実業出版社 本書43pより)

著者プロフィール

村尾 隆介(むらお りゅうすけ)
ブランディング、ブランド戦略の専門家。スターブランドの共同経営者。日経BP総研客員研究員。スターブランドのフロントマンとして全国をプロジェクトで飛びまわる。中小企業のブランド戦略ブームを起こしたブランディングの第一人者。弱冠14歳で単身渡米。ネバダ州立大学教養学部政治学科を卒業後、本田技研工業(ホンダ)に入社。同社汎用事業本部で中近東・北アフリカのマーケティング・営業業務に携わる。退職後、食品の輸入販売ビジネスで起業。事業売却を経て現職。その成功ノウハウを、多くの会社やお店に提供するために起業した「スターブランド株式会社」は「ブランド戦略」におけるリーディングカンパニーとして北海道から沖縄まで多数のクライアントを抱える。 著書に『小さな会社のブランド戦略』(PHP研究所)、『今より高く売る! 小さな会社のブランドづくり』(日経BP社)、『安売りしない会社はどこで努力しているか?』(大和書房)、『マイクレド』(かんき出版)などがある。

(提供:日本実業出版社)

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