GPIF運用の多様化へ

塩崎厚労相は厚労省内の記者会見で、GPIFの運用リスク低減には分散投資が必要であると述べたことは前述の通りである。そのための強固なガバナンスも必要であると主張した。ただ、大方の憶測に対し、株価を見ながらやっているわけではない、とも付け加えている。

また、1兆2000億ドル(127兆円)に上る日本の公的年金の運用を多様化することは、将来の受給者のためになるとも述べ、安倍晋三首相の中核的政策を支える方針であることも示した。安倍政権は、年金生活者が政府や日銀が目指す緩やかなインフレを乗り切るためにも、同基金の運用を多様化するべきだと述べているからである。

塩崎厚労相は国債の運用に偏っている同基金を分散投資して安全で効率的な運用を目指すとしながらも、具体的な基金のポートフォリオについては、専門家の議論に任せるべき、として具体的な資産構成については触れなかった。


市場の反応

内閣改造が行われると、円相場は年金運用改革への期待から8ヶ月ぶりに1ドル=105円台まで下がった。これは塩崎厚労相が公的年金資金でドル建てなどの外国債券を積極的に購入すべきだと主張していたためである。

127兆円に上る公的年金は、世界最大の機関投資家と呼ばれており、これがドル建て債券への投資を増やせばさらに円安が進むと、市場関係者は見ている。

特に塩崎厚労相はGPIF改革の急先鋒であると市場関係者には見られており、株価の下支え要因になると考えられている。

既にGPIFは金利が上昇すれば評価損を出すリスクがある国内債の割り当てを減らし、日本株式や外貨建ての資産の割合を増やすように、資産構成の見直しを検討していた。

現在は、基本ポートフォリオで定める資産構成が国内債60%、国内株12%、外国債券11%、外国株式12%、短期資産5%となっている。これに対する市場関係者の間での予想(5月調査の中央値)は、国内債40%、国内株20%、外国債券14%、外国株式17%だった。

既にGPIFの6月末の国内債運用額を見ると、67.9兆円で運用資産に占める割合は53.36%であり、2001年以降で最低となっている。


投資ポートフォリオの発表が鍵を握る

塩崎厚労相は安倍内閣が株価を上げるためにGPIFの資産構成見直しを利用しているとの見方を否定しながら、ガバナンス改革が実現できたなら、ベンチャー企業への投資もあり得ることを示している。

GPIFが新しいポートフォリオを明らかにするのは、今秋から来年始めではないかと見られている。その際、もしも配分の変更が小さかったとしても、日本株式や海外資産に流れる資金は数十億円規模では無いかとも見られている。

ただ、一方で塩崎厚労相はGPIFが大きなリスクを取ることを警告もしてきている。

このバランス感覚からすれば、GPIFは短期的なリスクを取らずに、市場関係者が期待しているよりはゆっくりとした改革を進める可能性もある。

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