(本記事は、星子尚美氏の著書「腸のことだけ考える」ワニブックスの中から一部を抜粋・編集しています)

腸
(画像=PIXTA)

実は消化だけじゃない!腸が担う4大機能とは?

ここで腸について少し詳しく説明したいと思います。

「理屈はいいから、はやく腸をきれいにする方法を教えてほしい!」という方もいらっしゃるかもしれませんが、これからきれいな腸を目指すなら腸という組織の仕組みを知っておいて損はありません。

さて、みなさんは腸がどのような組織かご存じでしょうか?

「消化器官、食べカスを排泄物に変える」
「小腸で栄養を吸収し、大腸で不要なものを排泄する」
「腸内細菌がたくさんいる」

どれも正解です。

しかし、それだけではありません。

実は腸は免疫や自律神経の働きとも深く関わっています。

消化吸収、排泄を担う消化器官であるだけでなく、病気を未然に防ぐ「人体最大の免疫組織」でもあるのです。

また、腸は、食道、胃、小腸、大腸という消化器全体に張り巡らされた神経系(腸管神経系)と毛細血管系を統括し、そこから全身の健康状態を維持管理しています。

さらに興味深いのは、心の状態にも関わるホルモン生産に関係する内分泌器官でもあることです。

つまり腸は、消化器系であるだけでなく免疫系、自律神経系、内分泌系と4つの機能を担う組織だということになります。これまでカラダの諸器官が担っていると考えられてきたさまざまな機能が、実は腸によって担われていることがわかってきたのです。

小腸が脳に指令を送っている

一般的にヒトのカラダで司令塔としての機能を果たしているのは脳だと考えられています。

呼吸、食事、運動、思考、学習、睡眠――これまでヒトのあらゆる活動はすべて脳からの指令によるものだと考えられていました。

ところが最近の研究によると、小腸は脳からの指令を受けなくても、さまざまな活動と役割を果たしていることがわかってきました。むしろ逆に小腸からの指令によって脳が必要なホルモンを分泌したり、生理的な反応を促したりすることもあります。

つまり、小腸のほうが脳に対して司令塔的な役割を果たしているわけです。

そのため最近では、小腸は「第2の脳」などと呼ばれることもあります。実際に小腸の判断は ヒトのカラダにとって正しく、脳より理にかなっていることが多いのです。

特に食道から胃、小腸、大腸に張り巡らされた腸管神経のネットワークは、数億個という膨大な神経細胞でできており、脳の指令を受けずに独立して働いています。万が一、事故などでヒトが脳死状態になっても、人工呼吸器などで酸素の供給を続ければカラダは活動を続けることができます。

通常、脳死になれば、たちまち心肺停止になってしまいますが、小腸は正常に機能することができます。心臓は脳の支配下にありますが、小腸はそうではないからです。

小腸は「第2の脳」?むしろ「第1の脳」です

小陽の基本的な働きは消化・吸収です。

われわれは毎日さまざまな食べ物を複雑に組み合わせて食べています。

ご飯、パン、野菜、バター、牛乳、豆腐、醤油、味噌、果物、肉、魚、野菜……一日に2回、3回、あるいはそれ以上、多種多様な食べ物が口から胃を 経へ て小腸に入ってきます。

その際、これらの食べ物が何であるのか、消化・吸収してもよいのかどうか、消化するにはどんな酵素が必要なのかを小腸は瞬時に判断しているのです。まるであらゆる物質のデータが小腸に備わっているかのようにそれは行われます。

では、なぜ腸にそんな高度な判断ができるのでしょうか。

その答えは、生物進化の歴史のなかにあります。

地球上に誕生した最初の動物には脳などありませんでした。神経系が備わった最初の生物は、イソギンチャクのような単純な腔腸(こうちょう)生物です。臓器と言えるものは腸だけしかありません。その腸が「栄養を摂り入れ、生き延びる」という生物の最も根源的な判断を行っていました。

つまり腸は、太古の昔から生物の生命活動の根幹であり、生きる知恵のルーツだったのです。

ところで、みなさんはヒドラという生物をご存じでしょうか。

ヒドラは筒状のカラダで、先端の穴が口、そして口のまわりに数本の触手が生えている1センチほどの生物です。沼や田んぼなどに 棲す み、水草に付着してミジンコなどを食べています。

ヒドラは脳をもたず、筒状の胴体には腸しかありません。言うなれば腸だけの生物です。単純きわまりない構造ですが、ヒドラの腸には口から取り込んだものが何であるかを検知するセンサーがあり、その結果を腸全体の細胞に知らせる情報伝達物質(ホルモン)を分泌します。すると、腸全体が反応して的確な消化・吸収が行われるのです。

この生物が、あらゆる動物の最も根源的な姿だとされています。

ここからすべての生物がさまざまな臓器、組織を派生させ進化していきました。脳という神経組織の塊が備わった生物が誕生するのは、そうした進化のずっとあとのこと。進化の果てにいるヒトも、腸の基本的なシステムはヒドラと同じものを受け継いでいるのです。

そのため小腸は、実際に入ってきたものが何であるのかを、瞬時に判断する能力を備えていると考えられています。

つまり「はじめに腸ありき」なのです。

腸は「第2の脳」どころか、むしろ「第1の脳」にあたります。現在の脳のほうが、腸に付随してあとから発達した臓器であったというわけです。

腸のことだけ考える』
星子尚美(ほしこ なおみ)
星子クリニック院長・医学博士。昭和31年生まれ。昭和57年、東京女子医科大学医学部卒業。昭和63年、熊本大学医学部大学院修了。医学博士号取得。放射線科專門医取得。平成5年、産業医取得。平成11年、健康スポーツ医取得。平成18年、日本臨床抗老化医学会認定医取得。アロマコーディネーターライセンス取得。米国ISNF公式認定サプリメントアドバイザー取得。平成21年、キレーション点滴専門医取得。ビタミンミネラルアドバイザー取得。高濃度ビタミンC点滴療法専門医取得。アンチエイジング統合医療認定医取得。平成26年、東久邇宮国際文化褒賞授賞(予防医学に貢献した等)。アーユルヴェーダハーブ専門医取得。大病を患い2回も九死に一生を得たことから、医師として自分が知り得た知識を伝えることが使命と考え、正しい医療とは何かを探求する。全人的医療を目指した自由診療のみの代替医療のクリニックを開業。がん、生活習慣病などの難病に苦しむ患者の治療と予防医療を行っている。食事療法をはじめとし、腸内洗浄や便移植などの最先端医療を駆使し、患者に優しい、カラダに優しい検査治療を行う。一般的な病院やクリニックとは一線を画すスタイルで治療を行っている。著書に『「平熱37℃」で病気知らずの体をつくる』(幻冬舎)、『病気がどんどんよくなる「腸のお掃除」のやり方―「食べる水素」で腸をキレイに保つ』(ナショナル出版)など。

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