(本記事は、星子尚美氏の著書「腸のことだけ考える」ワニブックスの中から一部を抜粋・編集しています)

O2
(画像=PIXTA)

カラダに取り込まれた酸素が老化をもたらす

私たちにとって老化は避けられない現象ですが、そのスピードには個人差があります。それはおそらくみなさんも身のまわりの人たちを観察するなどして、なんとなく実感しているのではないでしょうか。

私たちの心身の健康と若さを左右しているのは腸です。

腸内環境の良し悪しが私たちの老化の速度を決めると言っても過言ではありません。

がんや糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病も、認知症やうつ病、アレルギー疾患なども、腸内環境に大きく左右されるのです。

腸がきれいで、健康だと、それらをはじめとするさまざまな病気を遠ざけ、心もカラダもそしてお肌も健康で若々しくいられます。

逆に腸が汚れていて不健康であれば、便秘が続き、腸内細菌も悪玉に偏ってバランスを失います。その結果、さまざまな病気を招いて全身の健康状態が悪くなり、心身ともに衰え、老化が進みます。

私たちの健康と若さと美しさを阻害するものの代表選手が、腸内で発生する「活性酸素」です。

私たちの生命維持に不可欠な酸素分子は、呼吸によって体内に取り込まれると、その一部が活性酸素に変化します。活性酸素は電子が欠けて不安定な状態にあるため、安定を求めて他の物質の電子を奪おうとします。

この電子を奪うという行為によって起こる現象が「酸化」です。

活性酸素によって電子を奪われた物質は「酸化する=サビる」、つまりダメージを負ってしまいます。それが老化の原因であり、活性酸素によってカラダの組織や細胞がサビてしまうわけです。

活性酸素は細胞伝達物質や免疫機能として働き、殺菌などで活躍することもあります。しかし、一方で過剰に生み出されると臓器、血管、細胞とヒトのカラダのあらゆるものを酸化させ、傷つけ、劣化させて老化を促進します。また、がんや心血管疾患、生活習慣病などのさまざまな病気の原因にもなります。

腸で大量の活性酸素が発生している

活性酸素は生活習慣病のほとんどの原因、あるいは要因と言われ、日焼けからがん、その他の生活習慣病まで、さまざまなトラブルや病気を引き起こすことがわかってきました。そのため活性酸素の害からいかに身を守るかが、病気を防ぎ、健康を維持・向上させるための、あるいは美容のための大きなポイントだと言えます。

しかし活性酸素は、酸素のあるところには必ず自然発生するものなので、「発生」その ものを防ぐことは不可能です。

ヒトは一日に約500グラムの酸素を呼吸によって体内に取り入れています。その酸素は、われわれが食べた食物(有機物)を体内で燃焼させ、エネルギーをつくるために消費されます。酸素そのものは私たちの生命維持に必要不可欠なものですから、それをカラダに取り入れるのはいたしかたありません。

呼吸によってカラダに取り入れられた酸素のうち、約2%が活性酸素になるとされています。2%と聞くと意外と少ない印象を受けるかもしれませんが、活性酸素が発生するのは60兆個あるとされるヒトの細胞においてですから、ミクロのレベルでは相当な量です。

そしてカラダのなかでも、特に腸で発生する活性酸素は最大の問題です。

腸は複雑かつ膨大な仕事を行う臓器です。エネルギー消費量が多い部位ほど酸素を使うので、その分やはり活性酸素も大量に発生してしまいます。栄養を吸収する際に活性酸素が発生することもあれば、外敵が侵入した際に免疫細胞が活性酸素を発生させて外敵を排除するケースもあります。また、腸内の悪玉菌も活性酸素を大量に発生させます。体内で発生する活性酸素の約90%は腸内で悪玉菌がつくっていると言われています。

腸内で発生する活性酸素をどうするかは、全身の健康に関わる問題なのです。

食べ物で腸の働きはまったく違う

現代の日本人の腸は、今大きな問題を抱えています。われわれの健康を支える要(かなめ)ともいえる腸が、有害物質や活性酸素で非常に汚れやすい環境にあるからです。

なかでも最も影響があるのは食事です。

私たちが普段どんなものを食べているかで、腸の状態は良くも悪くもまったく違ったものになります。

具体例を挙げてみましょう。

次の3つのうちで最も腸に負担がかかる食事はどれでしょうか。

①ご飯やパンなどの炭水化物(糖質)の多い食事
②肉や乳製品など動物性脂肪の多い食事
③豆や野菜など食物繊維の多い食事

すでにご存じの方も多いかと思いますが、最も腸に負担がかかるのは、②の「肉や乳製品など動物性脂肪の多い食事」です。

牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類や牛乳、バター、チーズなどの乳製品、サラダオイルやビーフシチューなどたっぷり油を使った食事は、戦後日本で急速に普及しました。戦前の日本人がほとんど口にしなかった洋食が、今や若い世代ばかりでなく全世代にとって定番の食事になっています。

日本人は古来、穀物、野菜、豆類を多く食べ、魚をたまに食べるくらいの菜食中心の食事をしてきた民族です。

急速な食生活の変化が現代の日本人の消化器、特に腸にとって大きな負担になっているのです。

動物性の脂肪やたんぱく質は悪玉菌の大好物

バターや肉の脂身を想像していただくとわかりますが、動物性の脂肪は常温では固まっています。それらを食べると、体温37℃くらいのヒトの体内でなんとか溶けはしますが、サラサラではなくドロっとした状態で留まります。

ヒトの消化器には脂肪の分解を行う酵素もありますが、動物性の脂肪は消化・吸収に時間がかかり、長く腸内に留まるのです。

これら動物性の脂肪やたんぱく質を待ち構えているのが、大腸に棲みついている腸内細菌たち、なかでも大腸菌やウェルシュ菌などのいわゆる悪玉菌たちです。

悪玉菌たちは動物性の脂肪やたんぱく質が大好物なので、それらを食べては増殖し、アンモニア、インドール、スカトール、アミン、硫化水素など、いかにも悪臭がしそうなガスを生成します。

「クサい」だけならまだマシかもしれません。

しかし「クサい」のはこれらの物質の毒性を反映しています。

実際、これらのガスは有毒です。

これが腸壁から吸収されると血液に乗って全身に運ばれ、細胞を傷つけます。

例えばアンモニアは強いアルカリ性物質であり、柔らかい腸壁の粘膜を傷つけます。アミンは有名な発がん物質です。硫化水素にいたっては、吸い込むと死にいたるという有毒ガスです。

もちろん、日常的な発生量は命に関わるほどではありませんし、ヒトの消化器にはこうした物質の毒性を中和する働きがあります。そして、野菜や豆類、果物など食物繊維やビタミン類が豊富な食べ物を一緒にたくさん食べれば、やはりそれらの毒性は中和されるので、大きな問題にはなりません。

ただし食事内容や生活習慣によっては、そんな恐ろしい有毒物質が毎日のように発生することになり、それが血液に乗って全身に回ってしまうのです。

腸のことだけ考える』
星子尚美(ほしこ なおみ)
星子クリニック院長・医学博士。昭和31年生まれ。昭和57年、東京女子医科大学医学部卒業。昭和63年、熊本大学医学部大学院修了。医学博士号取得。放射線科專門医取得。平成5年、産業医取得。平成11年、健康スポーツ医取得。平成18年、日本臨床抗老化医学会認定医取得。アロマコーディネーターライセンス取得。米国ISNF公式認定サプリメントアドバイザー取得。平成21年、キレーション点滴専門医取得。ビタミンミネラルアドバイザー取得。高濃度ビタミンC点滴療法専門医取得。アンチエイジング統合医療認定医取得。平成26年、東久邇宮国際文化褒賞授賞(予防医学に貢献した等)。アーユルヴェーダハーブ専門医取得。大病を患い2回も九死に一生を得たことから、医師として自分が知り得た知識を伝えることが使命と考え、正しい医療とは何かを探求する。全人的医療を目指した自由診療のみの代替医療のクリニックを開業。がん、生活習慣病などの難病に苦しむ患者の治療と予防医療を行っている。食事療法をはじめとし、腸内洗浄や便移植などの最先端医療を駆使し、患者に優しい、カラダに優しい検査治療を行う。一般的な病院やクリニックとは一線を画すスタイルで治療を行っている。著書に『「平熱37℃」で病気知らずの体をつくる』(幻冬舎)、『病気がどんどんよくなる「腸のお掃除」のやり方―「食べる水素」で腸をキレイに保つ』(ナショナル出版)など。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)