(本記事は、星子尚美氏の著書「腸のことだけ考える」ワニブックスの中から一部を抜粋・編集しています)

体温,37.0°
(画像=PIXTA)

体温37℃は風邪じゃなくて健康の証

やや話が脱線するかもしれませんが、ここでもう少し体温の話をしっかりとしておきたいと思います。

この本で書かれていることを実践しているうちに、もしかすると平熱が37℃近くまで上がる方がいらっしゃるかもしれません。37℃というと一般的には「発熱」と思われているようなので、「風邪気味かな?体調が悪いのかな?」と心配になるかもしれませんが、むしろそれは体調が良い状態になっている証拠です。

生活習慣を健康習慣に変えた私のライフスタイルは、私自身ががん患者になったことによる気づきから与えられたものでした。そして、私はその体験や経験から、自分の体温で健康状態を知ることを推奨するようになりました。

それは「平熱37℃で病気知らずのカラダをつくる」ことのすすめです。

最近では平熱が36℃を下回る人が増えていて、35℃前半の人も珍しくありません。その結果として、さまざまな不調を訴える人が非常に多くなっています。1957年に公表された日本人の平均体温は36.89℃(東京大学・田坂定孝教授の研究結果)でしたが、近年のある調査によると、現在の日本人の平均体温は36.20℃です。

およそ60年を経て、約0.7℃も低下しています。

36℃以下の平熱が続くことを一般的に「低体温」と呼びます。この低体温の状態が続く と、全身の血行が滞って血流が悪くなり、心身のあらゆるトラブルを引き起こします。

本来、人間の平熱は、通常は36.5〜37℃と言われています。

先ほども言った通り、体温を測ったときに37℃だと熱が出たのかと思ってしまいそうですが、本当は37 ℃は「発熱した状態」ではないのです。むしろ、免疫力が高く「健康な状態」であることを示す体温です。

厚生労働省の定める基準によれば、37.5℃以上を「発熱」、38℃以上を「高熱」としています。

人間が生命活動をするために重要な酵素は、37℃前後で最も活発に働くと言われています。

また、大半の病原菌は20℃未満で最も活性が高く、一方で37℃ぐらいの高い体温では死滅することがわかっています。

そうした意味でも平熱を37℃まで上げることは理にかなっているのです。

ただし、平熱には年齢差や個人差があります。体温調整機能が未発達な子供は比較的高く、高齢者は比較的低くなります。また、時間や気温、感情などによっても左右され、特に女性の場合は、ホルモンの周期によって大きく変動するのが特徴です。

人間の体温の日内変動は、朝は低く、夕方には高くなる傾向にあり、一日で約0.5〜1.0℃ほどの変化があります。時間帯によって体温が異なるため、医療の現場では起床時・午前・午後・夜と一日4回計測して、その平均値を出して平熱としています。

一日のうちで、最も体温が高くなるのは夕方です。この頃が一番カラダの調子が良くなる時間帯と言われています。

逆に、一日で最も体温が低くなる明け方から朝にかけての時間帯は、たとえ健康な状態でも、頭がボーっとしていたり、気持ちが沈んだりする人が多くなります。

常に36.5〜37℃前後の体温を維持するために、カラダは血管を拡張・収縮させたり、筋肉を小刻みに振わせたりして、熱量をコントロールしているわけです。

体温が低下すると、全身の血管が収縮して狭くなり、血液の循環が悪くなります。

そうすると、それまでカラダのすみずみにまで行き届いていた酸素や栄養の運搬が滞って、消化吸収機能が衰えます。

さらには、老廃物が体内にたまり、カラダが「酸化」するスピードを促進させることもわかっています。

すでに述べた通り、酸化は人間なら誰にでも起こる現象です。20代までは酸化を防ぐ抗酸化物質が体内で生産されているため、酸化はゆるやかな速度で進行していきます。

ところが、20代をピークに30代以降は抗酸化物質の生産がどんどん少なくなり、急速に酸化が進んでしまいます。これが老化の正体なわけですから、30代をすぎて体温が低下すれば、老化しやすくなると言えるでしょう。

食事で体温を上げて免疫力アップ

体温を上げることは腸内環境を良くして免疫力を高めることにもつながります。なので、ここで平熱37℃を目指す食事の摂り方のコツについても紹介しておきましょう。

なお、基本となる食事のバランスはやはり「魚・肉1:野菜2:雑穀類4」です。

①よく噛(か)んで食べる

よく噛んで食べるという行為そのものが熱を産生し、食事後の代謝量を増やすことにつながります。1口20回以上、できれば30回以上噛むよう心がけてください。よく噛むことで消化もよくなります。

②腹6分目でストップ

前述の通りです。食べすぎてしまうと血液が胃腸に集中します。すると、他の内臓器官や筋肉に血液が届きにくくなり、血行が悪くなり体温が下がってしまいます。食べすぎを防ぐためにも腹8分目を感じる手前の腹6分目くらいでストップする習慣をつけましょう。

③一日3食にこだわらない

これも前述の通り。大切なのは自分にとっての「適量」の食事を守ることであり、一日3食を守ることではありません。昼食を食べすぎたときには夜食を抜く、前日に食べすぎたら次の日は一日1〜2食にするなど、柔軟に対応して食べすぎを防いでください。

④調理法は、加熱調理を中心に

野菜は火を通したほうがカラダを温める効果があります。つくりたてを温かいうちに食べましょう。ちなみに、妙めものや揚げものなど油を使う場合は、火にかけても180℃くらいまでは酸化しないココナッツオイルがおすすめです。

⑤香辛料を上手に使う

香辛料(スパイス)を一緒に食べることで、体温が上昇します。特に唐辛子にはカプサイシンという辛味成分が含まれており、体内の熱を産生する作用があります。他にも、コショウ、山椒(サンショウ)、ナツメグ、豆板醤(トウバンジャン)、コチュジャンなども体温を上げる効果があります。

⑥たんぱく質は肉よりも魚や豆で

牛や豚、鶏など食肉用動物の平熱(38.0℃以上)は、人間の平熱より高いので、脂肪分は人間の体内で溶けずに固まり、消化・吸収に大きな負担になります。たんぱく質はできるだけ魚や豆類から摂取するよう心がけましょう。

⑦「カタカナ食」を控えめに

パン、パスタ、ピザ、グラタン、ハンバーク……等々、カタカナ食が日本で急速に普及した戦後から、低体温で悩む人が急増しました。特に外食やコンビニなどでこれらの食品を口にする場合、トランス脂肪酸や食品添加物をたくさん摂取することにもなるので注意が必要です。できるだけ控えるようにしましょう。

⑧冷たい飲み物は避ける

食事中にあまり水分を摂りすぎると、胃液が薄まって消化・吸収に支障をきたします。特に冷たい飲み物は胃を冷やし、内臓機能を低下させて代謝を下げてしまいます。体内の温度を下げてしまうような氷入りの冷たい飲み物は絶対に避け、常温もしくは温めて飲むようにしてください。

平熱が上がると、代謝が上がって太りにくくなり、ダイエットにも効果的です。

また、メタボリック・シンドロームの予防・改善にもなりますし、慢性的に悩まされている方が多い冷え症、肩こり、頭痛からも解放されます。

さらに、女性の場合は、生理痛の軽減、不妊の克服(精子・卵子が出会い、受精卵が着床して妊娠する最適な体温は37℃と言われています)などのメリットもあります。

なにより、ここで紹介した体温を上げるための食べ方の工夫は腸をきれいにすることにもそのままつながるので、ぜひ実践してみてください。

腸のことだけ考える』
星子尚美(ほしこ なおみ)
星子クリニック院長・医学博士。昭和31年生まれ。昭和57年、東京女子医科大学医学部卒業。昭和63年、熊本大学医学部大学院修了。医学博士号取得。放射線科專門医取得。平成5年、産業医取得。平成11年、健康スポーツ医取得。平成18年、日本臨床抗老化医学会認定医取得。アロマコーディネーターライセンス取得。米国ISNF公式認定サプリメントアドバイザー取得。平成21年、キレーション点滴専門医取得。ビタミンミネラルアドバイザー取得。高濃度ビタミンC点滴療法専門医取得。アンチエイジング統合医療認定医取得。平成26年、東久邇宮国際文化褒賞授賞(予防医学に貢献した等)。アーユルヴェーダハーブ専門医取得。大病を患い2回も九死に一生を得たことから、医師として自分が知り得た知識を伝えることが使命と考え、正しい医療とは何かを探求する。全人的医療を目指した自由診療のみの代替医療のクリニックを開業。がん、生活習慣病などの難病に苦しむ患者の治療と予防医療を行っている。食事療法をはじめとし、腸内洗浄や便移植などの最先端医療を駆使し、患者に優しい、カラダに優しい検査治療を行う。一般的な病院やクリニックとは一線を画すスタイルで治療を行っている。著書に『「平熱37℃」で病気知らずの体をつくる』(幻冬舎)、『病気がどんどんよくなる「腸のお掃除」のやり方―「食べる水素」で腸をキレイに保つ』(ナショナル出版)など。

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