(本記事は、星子尚美氏の著書「腸のことだけ考える」ワニブックスの中から一部を抜粋・編集しています)

小麦粉,パン
(画像=PIXTA)

ついパンやパスタを食べたくなってしまうのはなぜ?

現代の日本人の80〜90%は小麦が合わない体質だと言われています。それは小麦に含まれている主なたんぱく質のグルテンが原因です。

グルテンを摂取すると免疫細胞がグルテンを異物や有害なものとみなして攻撃し、さまざまなアレルギー症状を引き起こすのです。そのうち代表的な3つの症状を次にまとめてみました。

①小麦アレルギー(即時型アレルギー)

小麦は卵、牛乳とともに3大アレルゲンと呼ばれ、体内に入ると抗体が反応してヒスタミンなどの炎症物質を出します。そのため、皮膚のかゆみ、蕁麻疹(じんましん)、くしゃみ、鼻水、腹痛、下痢、喉の違和感、呼吸困難が生じます。

②グルテン過敏症(遅延型アレルギー)

グルテンを摂取してから、数時間から数日経って反応が出てきます。グルテンと抗体が結合し、それが患部に留まり症状を引き起こします。頭痛、めまい、うつ病、倦怠感(けんたいかん)、情緒不安定、アトピー、喘息が生じます。

③セリアック病(自己免疫疾患)

小腸の上皮細胞にグルテンが取り込まれると、免疫細胞は有害物質が入ってきたと勘違いして攻撃します。すると、小腸絨毛(じゅうもう)突起が傷つき、栄養吸収ができなくなってしまいます。慢性の下痢、腹部膨満感と痛み、体重減少、慢性疲労、過敏性腸症候群が生じます。

さらに怖いことに、小麦は消化されると、化学物質エクソルフィンが生成され、それが脳に到達してモルヒネ受容体と結合します。

そうすると、アヘンやヘロインと同じような多幸感が与えられ、中毒症状でカロリー摂取をやめられなくなり、食欲増進の依存症状が引き起こされてしまいます。

パンがおいしくてやめられない。

パスタを食べても、すぐにまた食べたくなってしまう。

そんな経験をしたことはないでしょうか。

それは、このエクソルフィンが原因です。

ちなみに、牛乳や乳製品を摂取しても同じ中毒症状を起こします。それは、やはりエクソルフィンが影響して依存症状を起こしてしまうからです。

理想は昔の日本人の食事

さて、ここまで「食」に関する情報をいろいろと述べてきましたが、細かいことをいろいろと言われて「なんだか大変そうだな……」と気おくれしている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実はたったひとつのルールだけ守っていれば、これまで述べてきた内容から外れることなく、腸をきれいにする健康的な食生活を送ることができます。

それは「和食中心の食生活を心がける」ということです。ご存知のように、和食はユネスコ無形文化遺産にもなりました。

「和食」といっても難しく考える必要はありません。ようするに、米・味噌汁・漬物・魚・野菜などによる「昔から日本人が食べてきたごく普通の食事」のことです。

結局はそれが私たち日本人にとって理想的な食事だと言えます。

具体的なメニューを挙げるなら、例えばこんな感じです。

雑穀米
白米は甘みがあって軟らかく食べやすいものですが、そこに無農薬雑穀をブレンドしてみましょう。歯ごたえが加わることでよく噛まなければならず、その分、少量でも満腹感がもたらされます。

また、栄養価が高いだけでなく、食物繊維が豊富な雑穀を取り入れることで、余分な脂質や糖質の吸収が抑えられ、生活習慣病の予防やダイエットにもつながります。

味に慣れてきたなら、白米を玄米・発芽米に変えて雑穀をブレンドするとなおグッドです。
味噌汁
ご飯に欠かせない味噌汁には、天然発酵の味噌を選んでください。

味噌は本来、麹菌や乳酸菌、酵母などの微生物の働きによって、複雑な風味が醸かもし出されています。しかし、インスタント発酵(速醸)の味噌は十分な発酵が行われていない分、たくさんの添加物が使用されており、味噌の栄養効果を得ることが難しい場合もあります。

そのため味噌は、最低でも6か月以上、できれば3年以上の熟成期間を経たものがよい でしょう。味噌や醤油などの発酵食品は腸内の善玉菌を増やしてくれるありがたい調味料 でもあります。
おかずは、やはり肉より魚をおすすめします。ただし、大型の魚には水銀がたまりやすいので、イワシなどの小魚を選びましょう。

これらの魚には、オメガ3系の不飽和脂肪酸で、動脈硬化や高脂血症を予防し、脳を活性化させると言われるDHAやEPAが豊富です。また、カルシウムなどの栄養素も豊富です。
卵焼き
飼料から無農薬にこだわった 地鶏(自然養鶏)の卵がベストです。
漬物
ミネラル豊富な天然塩を使ってつくる、乳酸菌発酵の漬物をおすすめします。浅漬けよりもよく漬けて乳酸発酵したものがよいでしょう。
生野菜と生の果物
野菜や果物は水でよく洗ってからいただきます。無農薬栽培の新鮮なものがベストです。できるだけ農薬を用いないで育てられたものを選びましょう。午前中の食事は生の野菜と果物だけでもオッケーです。
根菜類(海藻類)の煮物
昆布とシイタケ、レンコンやニンジンを合せて煮ましょう。海藻類はミネラルや食物繊維、カロチノイド、カルシウムなど海の滋養の宝庫です。根菜類にも食物繊維が豊富に含まれています。
腸のことだけ考える
(画像=腸のことだけ考える)

あくまでもこれは理想のメニューです。いきなりこれらをすべてつくろうと思っても大変でしょうから、例えば白米に雑穀をブレンドしてみたり、肉類を小魚に変えてみたり、発酵食をプラスしてみたりと、できることからはじめてみましょう。

そのうち「食べ物」のおいしさと日々の健康を実感するようになると、自然と食卓がこのようなメニューに近づいていくと思います。

腸をきれいにするなら、まずは食物繊維

昔と今の日本人の食事を比べてみると、肉や乳製品をたくさん食べるようになる一方で、あまり食べられなくなった大切なものがあります。

それは、食物繊維です。

大豆などの豆類、玄米や雑穀類、ゴボウやレンコンなどの根菜類、イモ類、きのこ類、海藻類……昔の日本人が毎日食べていた食事には食物繊維が豊富に含まれていました。

食物繊維は腸の働きにとって欠かせない栄養素です。

食物繊維の多くは小腸では消化されません。その代わりに大腸の腸内細菌の善玉菌が喜んで消化してくれます。善玉菌は食物繊維を発酵させ、酢酸や酪酸などの「短鎖脂肪酸」という物質に転換させてくれます。

この短鎖脂肪酸が優れものなのです。

短鎖脂肪酸は体内に吸収されると、細胞のエネルギー源になります。

腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を妨ぎます。

発がん物質の生成を防いだり、炎症を抑えたり、免疫細胞を活性化したりします。

なによりすばらしいのは、腸の蠕動運動を促進することです。

食物繊維は私たちの腸の活動を支えてくれる強力な助っ人です。便秘の解消、大腸がんの予防にも役立ってくれます。

ちなみに、食物繊維は水溶性と不溶性の2種類に大別されます。

水溶性食物繊維は水に溶けやすく、胃腸内をゆっくりと進み、糖の吸収をゆるやかにします。昆布やワカメなどの海藻類、きのこ、こんにゃく、野菜、イモ類などの食物繊維がそれです。

不溶性食物繊維は水に溶けにくく、消化・吸収されにくいため、腸内の不用なものを抱え込んで便となって排泄します。大豆等の豆類、玄米や穀物(皮付き)などの食物繊維がそれです。

この食物繊維を豊富に含んだ食べ物をたくさん食べることが腸をきれいにする大きなポ イントになります。

腸のことだけ考える』
星子尚美(ほしこ なおみ)
星子クリニック院長・医学博士。昭和31年生まれ。昭和57年、東京女子医科大学医学部卒業。昭和63年、熊本大学医学部大学院修了。医学博士号取得。放射線科專門医取得。平成5年、産業医取得。平成11年、健康スポーツ医取得。平成18年、日本臨床抗老化医学会認定医取得。アロマコーディネーターライセンス取得。米国ISNF公式認定サプリメントアドバイザー取得。平成21年、キレーション点滴専門医取得。ビタミンミネラルアドバイザー取得。高濃度ビタミンC点滴療法専門医取得。アンチエイジング統合医療認定医取得。平成26年、東久邇宮国際文化褒賞授賞(予防医学に貢献した等)。アーユルヴェーダハーブ専門医取得。大病を患い2回も九死に一生を得たことから、医師として自分が知り得た知識を伝えることが使命と考え、正しい医療とは何かを探求する。全人的医療を目指した自由診療のみの代替医療のクリニックを開業。がん、生活習慣病などの難病に苦しむ患者の治療と予防医療を行っている。食事療法をはじめとし、腸内洗浄や便移植などの最先端医療を駆使し、患者に優しい、カラダに優しい検査治療を行う。一般的な病院やクリニックとは一線を画すスタイルで治療を行っている。著書に『「平熱37℃」で病気知らずの体をつくる』(幻冬舎)、『病気がどんどんよくなる「腸のお掃除」のやり方―「食べる水素」で腸をキレイに保つ』(ナショナル出版)など。

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