(本記事は、高田 敦史の著書『会社を50代で辞めて勝つ! 「終わった人」にならないための45のルール』集英社の中から一部を抜粋・編集しています)

「自分らしい」をキーワードにする

50代,起業,成功確率
(画像=PIXTA)

会社を辞めて壮大な夢に挑戦することを否定はしない。50代で起業して大成功する人もいる。ただし、世間はそれほど甘くはないことも覚悟しておきたい。

若者は大志を抱けばいい。いや、ぜひ抱いてほしい。だが、私たち50代の人間は華々しい成功よりも「自分らしい生き方」を目標の中心に据えた方がいい。

50代での独立は、金銭的な成功だけを目指すのではないからだ。もちろん頑張れば会社員時代以上の収入を得られる場合もあるし、仮に年収は下がっても、75歳以降も働き続けることができれば、生涯年収では上回れるかもしれない。ただし、収入目標をモチベーションにすることはいいが、お金はあくまでも結果であって、それだけが目標ではない。

「安定した収入のために会社にしがみつく人生」と「不安定だが自分らしい生き方を目指す人生」を比較して、後者を選べる人は50代で独立することができる。

ただし、前にも書いたが、若い人が起業するのに比べれば、50代でフリーランスになるリスクなどたいしたことはない。退職金ももらい、(支給年齢が繰り下げられるとはいえ)65歳から厚生年金も支給される。家を持っている人は金がなくなればリバースモーゲージで金に換えればいいのだ。「髙田さん、よく思い切りましたね」と言われるが、世の中にはもっと思い切った人生を送っている人が山ほどいる。

50代になると、会社の同期が役員になったりする。若い頃は自分の方が優秀だったのに...と、羨ましく思ったりする人もいるだろう。ただし、役員になって個室や車をもらう代償も大きい。最近流行している「忖度」など、サラリーマンの世界では昔から常識だ。会社にいて「自分らしい生き方」をしようと思ったら社長にならないといけないだろう。

「独立後の生活に忖度はない」 もちろん、クライアントに喜んでもらうために頑張るが、それは100%仕事の中身で応える。だいたい、一人でやっていると忖度しようにも相手がいない。

私は独立して3年目に入り、新しいクライアントのおかげで仕事の領域も広がってきた。昔は斜め読みだった新聞もしっかり読むようになったし、今まで関心のなかった税金や年金のことや、自身の資産運用についても考えるようになった。50歳を過ぎてやっと一人前になった気分だ。

出身会社の悪口を言わない

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(画像=(写真=pathdoc/Shutterstock.com))

会社を辞める理由として、「会社での嫌なこと」がきっかけになる人もいるだろう。

独立するにあたっては、まず「やりたいこと」があるのが絶対的な基本だが、決断のきっかけが「嫌なこと」であることは往々にしてある。ただし、会社を辞めたら出身会社の悪口は言わないことだ。前の会社の悪口はあなたの品格を下げるからだ。

「俺の時代はこうだったが、今はダメだ」、「あいつが役員になるなんておかしい」といったことばかり言っていると、聞いた人から「それならあんたが役員になればよかったじゃないか(どうせなれなかったくせに......)」と思われるのがオチである。

世間は狭い。あなたの言う悪口はいつか出身会社の人たちの耳に入る。独立した当初は、「出身会社に話をつないでほしい」といった相談も多いだろう。その際に昔の上司や部下は頼りになる存在だ。そして年数が経つと部下だった方々が責任のある立場に立ち、あなたの相談に乗ってくれるかもしれない。自分たちの悪口ばっかり言っている人を助ける人間などいないだろう。

私自身は31年トヨタ自動車で働いた。お世話になったり、お世話をしたりしながら一緒に仕事をした戦友的存在の人たちがまだ現職で働いている。それを否定してしまうのは自分自身の否定になってしまう。

一方で、会社を辞めてみると、出身会社の悪口が耳に入ってくることもある。これをさりげなく後輩たちに教えてあげることはいいことだと思う。言った方の名前を明かすことは絶対にいけないが「外から見るとこんな意見もあるみたいだよ」と元部下に教えてあげることは、彼らにとっても有益な情報だと思うからだ。

「出羽守(ではのかみ)」にならない

近代セールス
(画像=Indypendenz/Shutterstock.com)

「出羽守(ではのかみ)」とは、「私がいた○○ではこうだった」を連発する人のことを指す。特に大企業出身者にありがちなパターンだ。

大企業にいたことが自身の商品価値になることは私自身もよく分かっている。ただし、前職の会社の自慢ばかりされたら聞いている人はどう感じるだろうか。「そんなに好きなら何で辞めたんですか」と言いたくなるだろう。

ただし、かくいう私も、時々これをやってしまう。

「トヨタでは......」「レクサスでは......」と、つい口に出してしまうのだ。外に出てみると、トヨタの仕事の進め方は優れた部分が多いと感じることも多いし、仕事相手もそれを聞きたいと期待している場合もある。それでも、やはり言い方には気をつけた方がいいだろう。

一方で、前職での実績を自身のPRに使うことを躊躇することはない。

会社の看板やお金に助けられたとはいえ、会社側もあなたの力を借りた「共同作業」だからだ。

サラリーマン時代の実績は、独立した以降も個人の商品価値の大きな部分を占める。私の場合も、「元レクサスのブランド責任者」という看板を活用させてもらって、いろいろな場でブランディングの話をさせていただいている。自身の実体験に他業界の同種の事例も交えれば、情報としての価値は一層高まるだろう。

人材紹介会社の面談で「あなたは何ができますか?」と聞かれて「部長ができます」と答えた人がいたという笑い話がある。前職での肩書にも一定のPR効果はあるが、人が知りたいのは、やってきた仕事の内容だ。

大企業出身者にありがちな話をもう一つ紹介する。

独立してフリーランスになると、自分の子どもと同じくらいの年齢の人と仕事する機会も多い。大企業の元管理職は、年下の人や役職の低い人につい横柄になりがちだ。たとえ息子や娘のような新入社員であっても、謙虚に接することが大切。特に「○○君」「○○ちゃん」というような呼び方をするのは絶対に避けたい。年齢にかかわらず「○○さん」を徹底しよう。これは、本人がいないときにも守らないといけない。

相手方の上司に「お宅の会社の○○君がね」なんて呼ぶのは絶対NGだ。本人の前では「さん」づけ、いないところで「君」づけというのは品格を疑われる。

「働かない」時間をつくる

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仕事が軌道に乗り始めると、時として働きすぎてしまうことがある。仕事がないよりはるかにいいことなのだが、仕事をくれたクライアントに応えようとするあまり、不必要なほど資料をつくったりする。その裏にはフリーランスとしての不安感があり、期待を超えないといけないプレッシャーがあるからだ。

独立してほぼ3年が経ち収入も安定してきたが、時々強い不安感に襲われる時がある。「今はいいが来年はどうなるんだろうか?」「5年後もちゃんと仕事があるんだろうか?」という気持ちが突然襲ってくる。それを打ち消すために、また働いてしまうのだ。

しかし、せっかく組織の束縛から解放されたのに、休みなく働いて体を壊してしまっては元も子もないし、精神的に病んでしまったら「自分らしい生き方」などできなくなる。責任感の強い人ほど気をつけた方がいい。

対策としては、強制的に働かない時間をつくることだ。私自身は3種類の「休む」時間を確保するように心掛けている。

一つ目は、短い休憩をとる。

ほんのちょっとした休息だ。少し外出して散歩したり、カフェでコーヒーを飲みながら本を読んだりする。

二つ目は、趣味の時間を確保する。

私はゴルフが大好きなので、芝生の上でボールを打っていれば嫌なことをすべて忘れられる。退職した会社の先輩やフリーランス仲間、時には家族とゴルフを楽しんでいる。趣味がないという人は、独立を期に新しい趣味を始めてみるのもいいだろう。

三つ目は、友人たちとの会食だ。

慕ってくれる元同僚や、仲のいい仲間と会って話すのは本当に楽しい。また、50代になると小学校、中学校、高校の同窓会の誘いが結構増えるので、そういう会に出てみるのもいいかもしれない。

フリーランスは仕事中に無駄話をする相手がいない。私の場合も妻が外出すると猫しかいない。気の置けない友人とバカ話をする時間は最高のリフレッシュだ。

そして、働きすぎを是正する最良の方法は、過度な完璧主義を排することだ。

働きすぎて体や心を病むほどに自分を追い込む必要などない。すべてが完璧でなくても、真摯な気持ちで仕事に向き合っていればクライアントの要望に応えることができるはずだ。

健康管理と楽観主義

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(画像=PIXTA)

先日健康診断を受けた。私は気が弱いので、健康診断を受ける前は怖くて怖くて仕方がない。幸いなことに結果は良好で、とりあえず最低あと一年は病気では死なないだろうと思う。言うまでもいないが、フリーランスで働く上で、健康は何よりも重要だ。自分自身の体が資本。働けなくなったら元も子もない。

サラリーマン時代には年に1回、定期健康診断があったが、フリーランスになると自分の体についても自己管理が求められる。健康診断も自分で決めて自分で申し込む。面倒だなと思っても、仕事が忙しくても最優先でやるべきことだ。

年に一度は、しっかりとした健康診断を受けないといけない。私の場合は、通常の検診に加えて、胃カメラ、大腸カメラ、肺ドック、脳ドックもお願いしている。

一般的に会社で受ける健康診断は無料だし、数年に1回、外部の医療機関で人間ドックを受けさせてくれる会社もあるだろう。フリーランスになると健康診断は自腹になる。特に人間ドックは病気ではないので健康保険の対象外だ。基本コースでも2〜3万円はかかるし、私のようにオプションを受けるとその数倍はかかるだろう。夫婦二人となるとかなりの高額になる。

対策としては、人間ドックにすべて頼らず、前年の検査で数値が悪かったところや、生活していて気になったところ(例:胃が痛い、頭が痛い)が少しでもあれば、普通の病院で健康保険が使える「診察」として診てもらうのがいい。そうすれば人間ドックは一番ベーシックなコースで十分だろう。

運動不足にもなりやすい。自宅で仕事をするようになると太る。これは私が証明している。私は独立後の1年間で10kg近くも太ってしまった。頑張って7kgは減少したが、また5kg太ってしまったので、この点について私はあまり偉そうなことは言えない。

契約したボクシングジムにも、行かなくなって2年が過ぎた。サイクリングでもするかと買った自転車も、そのまま放置してしまっている。今回の健康診断結果に安心することなく、運動不足の解消に励むことを本書の刊行とともに宣言したい。

そして精神面での健康管理も大切だ。先ほども書いたが、フリーランスにとって精神面での最大の敵はやはり「将来への不安」だ。そのための最高な処方箋は「楽観主義」しかない!

本書でも何度か書いたが、楽観主義でいける背景を私たち50代のフリーランスは持っている。退職金をもらい、厚生年金もそれなりにあてにできる。国民年金しかない自営業の方々や、住宅ローンを抱えながら起業する勇敢な若者に比べると、一定の安全圏の中にいるからだ。マスコミが煽る過度な老後不安に怯えていても何もできないではないか。

「健康管理と楽観主義」

これが最後のアドバイスだ。

会社を50代で辞めて勝つ! 「終わった人」にならないための45のルール
高田 敦史(たかだ・あつし)
A.T.Marketing Solution代表。Visolab株式会社Chief Marketing Officer。一般社団法人ブランド・マネージャー認定協会アドバイザー。広島修道大学非常勤講師。1961年生まれ。一橋大学商学部卒業。1985年にトヨタ自動車に入社後、宣伝部、商品企画部、海外駐在(タイ、シンガポール)等を経て、2008年に宣伝部の分社化プロジェクト「Toyota Marketing Japan」を担当し、Marketing Directorに就任。2012年からトヨタ自動車に戻り、Lexus Brand Management部長として、レクサスのグローバルブランディング活動を担当。レクサス初のグローバル統一広告の実施、カフェレストラン「Intersect BY LEXUS」の東京、ニューヨーク、ドバイでの出店等、各種施策を主導。2016年にトヨタ自動車を退社。個人事業主となる(屋号:A.T.Marketing Solution)。独立後はブランディング領域を中心としたコンサルティング業務、ベンチャー企業のアドバイザー、講演活動等を行うとともに、2018年には経済産業省が行う「産地ブランディング活動(Local Creator’s Market)」のプロデューサーを務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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