個人知を組織知にするためのデータ
KAKEAIの中では、上司と部下とのチャットも行なわれる。用意されたカテゴリーの中から、上司がその時々の部下の状況を選ぶとともに、部下へメッセージを送る。そして、KAKEAIが自動的に月に1度、そのアドバイスが役に立ったかどうかを部下本人にヒアリングする、というものだ。
「こうすることで、『こういう上司が、こういう部下に、こういう状況で、こういう関わり方をすると、こう役に立つ』というデータが得られます。役に立ったかどうかの評価が上司に伝わることはありません。これを繰り返していくと、上司が部下にかけると効果的な言葉、効果的なマネジメントの仕方が、組織のナレッジとして、KAKEAIの中に蓄積されていきます。どんなアドバイスをどう評価したかというデータは、部下の特性の判断にも反映させています」(本田氏)
導入企業の中には、この機能を1on1と組み合わせて使っているところも多いそうだ。
「1on1をする前に、部下が上司に対して、話を聞いてほしいのか、何かを教えてほしいのか、一緒に考えてほしいのか、といった求める対応を送っておき、上司はそれを踏まえて1on1を行なう。1on1で話したことのうち、特に本人へきちんと伝えておきたいことは、KAKEAIの中に記録する。そして部下は、その上司の言葉が役に立ったかどうかKAKEAIに対して答える、というような使い方です」(本田氏)
過去のデータと同じような状況が組織の中で起きたときなどには、過去のデータの中から、目の前の部下に対して役に立ちそうな他の上司のナレッジを、システムがレコメンドしてくれる。
チームメンバー一人ひとりの成長実感も、月に1度のアンケートから、折れ線グラフで可視化している。また、他のチームメンバーから「どうも困りごとがあるようだ」というような報告を受ける機能もあり、チームメンバーの状態を常に確認することができる。
導入企業は、従業員数数万人規模から、100人程度のベンチャーまで。700人ほどの営業チームで、3分の1はKAKEAIを使い、3分の2は使わない実験をしたところ、わずか数カ月で、使ったメンバーのほうが、売上げが伸びるという結果が出ているという。
「KAKEAIは、営業のテクニックを共有したり、目標管理をしたりするものではありませんが、システムを通じて、部下一人ひとりへ適時、適切に関わるヒントや刺激を上司に送り続けることで、マネジメント行動のチューニングを促す。その結果です」(本田氏)