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2013年度の約2倍の規模へ。自社株買い続く

2014年6月の時点で、日本国内の企業が実施した自社株式の取得枠が、2013年度の約2兆円を上回る2兆8,000億円に規模に達した。1年を通じては、取得枠ベースで2013年度のおよそ2培近い金額となる。また、大手企業の発表も多く見られた。NTTドコモ <9437> が5,000億円、トヨタ自動車 <7203> が3,600億円、日本電信電話 <9432> が2,500億円の自社株買いを発表するなど、個別企業の金額の大型化も目立つ。こうした相次ぐ大規模な自社株買いラッシュは2007〜2008年以来のことだという。

ハイペースで自社株買いが進む背景には、最高水準に積み上がった余剰金や、ROE(自己資本利益率)向上を目指す動き、そして株価の割安感などがある。


自社株買いの4つの効果

①株主への還元対策

企業は株主への還元策として、株式が割高な時は『配当金』による株主還元を行い、自社の株式が割安であれば『自社株買い』を行うところが多くなる。自社株買いを行う企業は「株主のことを考えている」とされる見方がある。

②資産価値やROE(自己資本利益率)向上

自社株買いが行われると発行済株式の総数が減少するため、必然的に1株当たりの利益(EPS)や株式資本に対する利益率(ROE)が向上する。このためROE対策として行われことも多く、また、既存株主にとっては好材料のニュースとなり歓迎される。

③敵対的買収の防衛策

自社株買いを行いうことで自社が保有する持ち株の比率を高め、敵対的買収を避ける狙いもある。たとえば、自社株買い付け金額が大きい医薬品業界は、時価総額で外資に大きく差をつけられている。外資による買収リスクを避けるために、自社株買いを行い防衛する。

④将来の業績の見通しに対するメッセージ性

企業の業績を熟知する経営者が自社の株を安いと判断し、なおかつ『買い』であるという意思表示の現れは、将来の自社の業績や見通しに自信を持っていることの強いメッセージ性を持つ。「株価が上昇すると見込んでいる」と経営者自ら発信することは、投資家にとっても良い判断材料となる。