無人島から城まで…あらゆるスペースをシェアを目指すプラットフォーム「スペースマーケット」。その運営会社の代表を務める重松大輔氏。
1976年、千葉県生まれ。早稲田大学法学部卒。NTT東日本、フォトクリエイト等を経て、2014年に株式会社スペースマーケットを創業。そして2019年12月にはマザーズ上場を果たす。本稿では重松大輔氏に、創業のきっかけ、スペースシェアリングにかける思い、そして今後の展望までをお聞きした。
※本稿は、『THE21』2020年4月号より一部抜粋・編集したものです。なお、本稿の取材は2020年1月17日(金)に行われたものです。
無人島や城、住宅まで。借りられる場所は様々
海にポツンと浮かぶ無人島に、数百年の時を刻んできた城や古民家、机や椅子がそのまま残った廃校、オフィスの会議室や空き時間の飲食店、個人住宅――。
これらのスペースを限られた時間だけ借りたい人や企業(ゲスト)と、貸したい人や企業(ホスト)とをマッチングするサイトが「スペースマーケット」です。
借りられるスペースの掲載数は全国1万2000カ所以上。この掲載数やバラエティの豊富さは日本一だと自負しています。
結婚式場からの相談でビジネスチャンスを発見
このサイトを立ち上げたのは2014年。きっかけは、前職のフォトクリエイトで顧客のもとを回っていたとき、複数の結婚式場から「平日はガラガラなので、このスペースを有効活用したい」と相談されたことでした。
一方、自社では、平日にセミナーを行なうとき、社内のスペースでは狭かったので、外部の会議室を高額で借りていました。「ここにミスマッチがあるな」と思ったんです。
海外を調べたら、CtoCでスペースをシェアするサービスを手がける企業がたくさんあって、資金調達にも成功していました。当時、日本には会議室の検索サイトぐらいしかありませんでしたが、「CtoCのスペースシェアは絶対に来る」と確信して、起業しました。
当初は、スペースを貸してくれるホストを1件ずつ地道に開拓しながらゲストも募集し、マッチングが成立すると、その事例をメディアにPRして、スペースシェアの認知度向上に努めました。すると、売上高と利用件数が右肩上がりで伸びました。
さらに追い風になったのは、18年6月の民泊新法の施行です。民泊のハードルが上がったことで、これまで所有物件で民泊を手がけていたオーナーが短時間のスペース貸しに転換しようと、スペースマーケットに登録し始めたのです。
これによって魅力的なスペースの登録が増え、ゲストが増加。ニーズが増えたことで、またホストが増える……という好循環が生まれました。
18年末には創業後初の単月黒字を達成。19年12月期はさらに業績が上昇し、年間でも黒字に転じました。
ゲストの利用目的は実に多種多様です。多いのは誕生日会やママ会などの「パーティ」、会社の会議や研修などの「ビジネスユース」、商品撮影やYouTuber、コスプレイヤーの「撮影」。
その他、仲間で集まってのボードゲーム、スポーツ観戦、フリーのパーソナルトレーナーの個人レッスンなど、幅広いニーズがあると実感しています。
スペースシェアを当たり前のものにしたい
スペースシェアの市場は急成長しているものの、まだまだ一般的とは言えません。もっと当たり前のものにしていきたいと考えています。
そのためには、魅力的なスペースをさらに増やすこと、サイトの使い勝手をさらに向上させることはもちろん、ゲストとホストの双方が安心・安全にスペースをシェアできるようにすることが非常に重要だと考えています。
シェアに慣れたゲストとホストが増えたことで、備品の破損や連絡の不通といったトラブルの発生率は以前よりも減っています。損害保険にも自動加入される仕組みにしていますが、さらに安心して使えるようにしていきたい。
そこで立ち上げたのが、ホスト同士のコミュニティです。高い評価を得ているホストが顧客の心をつかむオペレーションやホスピタリティを他のホストと共有する勉強会を行なうことで、スペースマーケット全体に良い文化が広がっていくと考えています。
また、サイトについては、熟練者と初心者がマッチングしやすくする仕組みも検討しています。
ホストとゲストの双方が初心者だと、互いに勝手がわからず、トラブルが起きやすくなります。ホストが熟練者なら質の高いサービスができますし、ゲストが熟練者なら、不慣れなホストに助言することで、サービスの向上が期待できます。
そうしたマッチングがしやすくなるよう、検索の仕組みを整えたいと考えています。
上場したのも、より安心・安全なサービスを実現したいと考えたからです。資金を調達することでサービスのさらなる向上を図れます。上場を目指す過程で社内の体制を整備することでも、安心・安全なサービスを提供する土台が固められたと感じています。
全国の空き家問題の解決への貢献も
当社のビジネスは、単に遊休スペースに新しい価値を生むだけではなく、日本が抱えている様々な問題の解決にも貢献できると考えています。
例えば、全国で増えている空き家問題。少子高齢化が進み、朽ち果てた空き家が増えると、そのエリアの治安が悪化すると言われています。空き家をシェア用にメンテナンスし、週1回、月1回でも誰かが使うようになれば、そのエリアが危険な雰囲気になるのを防げます。
また、築年数の浅い分譲マンションにも空き部屋が増え、費用不足で修繕できないという問題も取り沙汰されています。現在、築40年以上のマンションは全マンションの1割に達し、今後20年で4.5倍になると試算されています。古いマンションの部屋でも、シェアをすれば、収益を上げられるでしょう。
さらに、スペースシェアは日本だけでなく、海外でも展開できると考えています。特に人口が集中している都市部では、チャンスが大きいと見ています。
「世界中のあらゆるスペースをシェアできるプラットフォームを創る」。そのミッションを実現させるべく、成長し続けます。
重松大輔 (株式会社スペースマーケット代表取締役CEO)
(『THE21オンライン』2020年04月14日 公開)
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