失業率は前月から0.1ポイント悪化の2.6%

雇用関連統計
(画像=PIXTA)

総務省が5月29日に公表した労働力調査によると、20年4月の完全失業率は前月から0.1ポイント上昇の2.6%となった(QUICK集計・事前予想:2.7%、当社予想も2.7%)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

労働力人口が前月から▲99万人減少する中、就業者数が▲107万人とそれを上回る減少となったため、失業者数は前月から6万人増加の178万人(いずれも季節調整値)となった。

就業者数が前年比でマイナスとなったのは、12年12月以来、7年4ヵ月ぶりとなる。失業率の上昇、失業者の増加は小幅にとどまったが、労働力人口の大幅減少(非労働力化の進展)が失業率の上昇を抑えているためであり、内容は非常に悪い。

雇用者数は前年に比べ▲36万人の減少となった。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差63万人増(3月:同67万人増)、非正規の職員・従業員数は前年差▲97万人減(3月:同▲30万人減)となった。

正規の職員・従業員数は増加を維持しているが、新型コロナウィルス感染拡大に伴う営業時間短縮、休業を受けて、非正規の雇用調整は本格化している。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

休業者が急増

緊急事態宣言が発令された20年4月の経済活動は急激に落ち込んだ。そうした中でも失業者の増加が小幅にとどまったのは、非労働力化の進展に加え、就業者としてカウントされる休業者が前年に比べ420万人の急増となったためである。調査期間中に仕事をした「従業者」 に限れば、20年3月に前年差▲18万人と4年4カ月ぶりの減少となった後、4月は同▲500万人と減少幅が大きく拡大した。従業者の内訳をみると、3月は雇用者が増加を維持する一方で、新型コロナウィルスの影響を強く受けている自営業主・家族従業者が大幅な減少となっていたが、4月は雇用者が前年差▲405万人の急減となった。

休業者の内訳を雇用形態別にみると、3月はパート・アルバイト、派遣社員、契約社員などの非正規の休業者が大幅に増加していたが、4月は正規、非正規ともに休業者が急増した(正規:前年差113万人、非正規:同240万人)。産業別には、新型コロナウィルス感染拡大に伴う自粛、休業要請を受けて、卸売・小売業(19年4月:22万人→20年4月:90万人)、宿泊業(19年4月:2万人→20年4月:20万人)、飲食業(19年4月:7万人→20年4月:76万人)、道路旅客運送業(19年4月:1万人→20年4月:8万人)、娯楽業(19年4月:1万人→20年4月:31万人)の急増が目立つ。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

休業理由には、「勤め先や事業の都合(景気が悪かったため等)」と「自分や家族の都合(出産・育児、介護・看護のため等)」があるが、足もとの増加は「勤め先や事業の都合を理由とした休業者」によるところが大きいと考えられる(1)。休業者は就業者としてカウントされるが、景気悪化を理由とした休業者のかなりの部分は失業者として顕在化する可能性が高い。雇用調整助成金の拡充や中小・小規模事業者等に対する支援金(持続化給付金)などが、倒産、失業をある程度抑制する効果はあるものの、経済活動の落ち込みがあまりに大きい(2)ため、今後失業率が大幅に上昇することは避けられないだろう。現時点では、失業率は20年末頃に4%程度まで上昇すると予想している。

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(1)休業理由別の休業者数は四半期の詳細集計で公表される
(2)当研究所では、20年4-6月期の実質GDPを前期比▲6.7%(年率▲24.1%)、19年10-12月期からの3四半期で▲10%近く落ち込むと予想している

有効求人倍率は1倍割れも視野に入る

厚生労働省が5月29日に公表した一般職業紹介状況によると、20年4月の有効求人倍率は前月から▲0.07ポイント低下の1.32倍(QUICK集計・事前予想:1.32倍、当社予想は1.27倍)となった。有効求職者数が前月比▲3.4%(3月:同▲2.1%)の減少となったが、有効求人数が前月比▲8.5%(3月:同▲5.9%)とそれを上回る減少幅となった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から▲0.41ポイント低下の1.85倍となった。新規求人数(前月比▲22.9%)、新規求職申込件数(前月比▲5.5%)ともに減少したが、新規求人数の減少幅が大きく上回った。

有効求人倍率は19年4月の1.63倍をピークに緩やかな低下が続いていたが、新型コロナウィルス感染拡大に伴う自粛要請、緊急事態宣言を受けた経済活動の急速な落ち込みを受けて、3月、4月の2ヵ月で▲0.13ポイントの急低下となった。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

有効求人数には前月から繰越された求人が含まれるため、新規求人に遅れて動く傾向がある。20年4月の新規求人数は19年12月より3割以上低い水準となっていることを踏まえれば、有効求人数は先行きも大きく減少する可能性が高い。

企業の求人意欲が大きく低下する一方、失業者の増加に伴い求職者数の増加が見込まれるため、有効求人倍率は労働市場の需給バランスが一致していることを意味する1倍を割り込む可能性もあるだろう。


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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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