「ここから先は発想を変えていきましょう」5月25日、安倍総理大臣は緊急事態宣言の解除を発表しました。4月7日に発令された緊急事態宣言はおよそ1か月半ぶりに全国で解除され、まずはひと安心といったところでしょう。
しかし、楽観は禁物です。安倍総理大臣は同日の会見で「この解除をもってウイルスの存在がゼロになったわけでもありません」「新規の感染者がゼロになったわけではないわけで、これからこのウイルスとの戦いは長い道のりになると思います」と述べています。不安になり過ぎる必要はありませんが、かといって楽観的になり過ぎるのも危険ということなのでしょう。新型コロナウイルスという「不安」「リスク」とどう向き合い、どうコントロールすべきか、まだまだ手探りの情勢が続きそうです。
ちなみに、人生も同じです。新型コロナウイルスに限らず、私たちは人生でさまざまな「不安」「リスク」に直面します。
前回のコラムでは「不安になり過ぎる(漠然とした不安)」への対処法を紹介しました。実際は小さなリスクなのに「大きな不安」を抱くのは賢明ではありません。「不安の正体(リスクの大きさ)」を知り、適切な対処をすれば不安を大幅に低減することが可能です。しかし、だからといって楽観的になれば良いというものでもありません。嫌なことに目をつぶっていても何の問題解決にもならないからです。楽観主義というのは何もなければ良いのですが、本当に困った事態に対処できず、最悪のケースは死に至ることだってあるのです。
大切なのは「不安」「リスク」ときちんと向き合うことです。
今回は「楽観主義の落とし穴」についてお届けしたいと思います。
夏休みの宿題をギリギリに片づける人はちょっと心配!
いきなりですが質問です。子どもの頃、あなたは夏休みの宿題をいつ片付けていましたか?
(A)夏休みの最初の頃に片付けていた。
(B)夏休みの終盤に片付けていた。
(C)毎日少しづつ片付けていた。
遊びを優先させて、夏休みの終わりにあわてて宿題を始める人は、ちょっと心配です。もし、夏休みの終盤に風邪を引いて寝込んでしまったら、宿題が終わらないことだってあります。
私は心配症なので、先に宿題をしてから遊ぶタイプでした。その傾向は現在も続いています。たとえば、仕事のスケジュールをギリギリで組んでいるととても不安になります。不測の事態があったときに仕事が回らなくなる恐れがあるからです。仕事が回らなくなっても誰も助けてはくれません。ですから、原稿も締め切りの前日に納品するように心がけています。早め早めに対応し、スケジュールに余裕をもたせることでリスクをコントロールしているのです。
ちなみに、この連載でも、もしネタが思いつかなくて書けなくなったら困るので、いつも予備の原稿を密かに用意しています。
将来よりも「現在の楽しみ」を優先してしまう人は…
さて、夏休みの宿題の話を「老後資金」に置き換えてみましょう。老後のことは心配だけれども、目先のことをつい優先して貯蓄ができないということはありませんか? これは「今を楽しむためのお金」を優先して、将来のお金を軽く見ているからです。いわゆる行動経済学の「現在バイアス」と呼ばれる現象です。
たとえば、あなたは下記 (A) (B) のどちらを選択するでしょうか?