営業活動を向上させるために、営業担当者に営業報告書の提出を課し、営業管理者に営業活動の管理と的確なアドバイスを求める企業は多い。確かに正当に運用されれば営業報告書は有効である。しかし、問題点があることは否めない。今回は営業報告書のメリットと、問題点を解決するための2つのツールを解説する。

営業報告書の目的

営業
(画像=ty/stock.adobe.com)

営業報告書の目標とは、社員の生産性を向上させて、組織の営業目標を達成することである。そのために営業担当者が提出した営業報告書を、営業管理者が活動をチェックし、コミュニケーションを取りながら、活動内容へのフィードバックやアドバイスを行うツールとして営業報告書を使用する。

さらに蓄積されたデータは、顧客情報の蓄積・管理・分析に使用し、営業活動の効率化をはかる。

営業報告書の3つのメリット

営業報告書のメリットとしては次の3点があげられる。

1.TODO管理ができる

営業報告書を活用することで、営業担当者は自分がやるべき仕事を決めて実行するTODO管理が可能となり、仕事の効率化がはかれる。

2.スピーディーで的確なアドバイス

営業報告書により営業管理者が営業担当者の活動を把握でき、課題に対するスピーディーで的確なアドバイスが可能となる。

3.クライアントへの計画的で的確なアプローチの促進

営業報告書を見ると営業担当者のTODO管理や営業管理者からの的確なアドバイスが一目でわかり、クライアントへの計画的で的確なアプローチが期待できる。

営業報告書が抱える3つの問題点

営業報告書は社員の生産性を向上させて、組織の営業目標を達成するために有効な手段であるが、運用においては次の3つの問題点を抱えている。

1.時間と手間がかかる

営業報告書が、紙ベースでの報告、エクセルシートへの入力、メールでの報告で運用されるケースでは、PCでの入力作業やメールの送信など時間と手間がかかる。

2.単なる報告で終わってしまっている

時間と手間がかかることなどから、営業担当者は、TODO管理が伴わない単なる報告で終わってしまっているケースがある。営業管理職も多忙なため営業報告書へのスピーディーで的確なアドバイスができない状況が発生する。

3.報告内容にばらつきがある

営業担当者によって報告内容にばらつきがあり、顧客情報の蓄積・管理・分析に使用し、営業活動の効率化につなげることができない。

営業報告書を経営に活かすためのツール

営業報告書の抱える問題点を解決し、営業報告書本来の目標を達成するために支援ツールを活用することは有効な手段である。ここでは、「SFA」と「日報アプリケーション」という2つのツールを紹介する。

SFA

SFA(Sales Force Automation)は、営業活動に関わる全ての情報をデータ化して蓄積し、分析できるソフトウェアである。SFAを活用することで、活動報告書の内容が他の情報とリンクして活用しやすくなり、情報の共有化ができる。

SFAの導入によって、営業に関わる情報がスピーディーに可視化でき、営業担当者にとっても管理者にとっても、業務の効率化がはかれる。システムを活用することによって情報管理が的確で高度になる。

営業活動に関わるデータとは、下記の4つがあげられる。

顧客情報

顧客情報とは、会社名、担当者名、住所、電話番号、メールアドレス、URLなどの基本情報があげられる。顧客情報は、情報検索の最も基本になる情報のため、詳細な情報が蓄積されて共有化されていることは、ほかの営業担当者にとっても時短につながる可能性が高い。

案件情報(営業報告書)

案件情報とは、営業担当者の営業報告から入力されたデータである。データにはおもに2つの視点がある。

・進捗情報

営業担当者が、契約獲得までのどのステップまで進んでいるかを把握することは、目標額把握のために重要な項目である。営業管理者にとっては、最も気になる分野だ。進捗を数値で管理できることは、継続的に目標を達成するために有効である。

進捗は、おもに顧客からの問合せ、営業担当者からのアポ、提案、申込み、受注といったステップを踏んでいく。

・アプローチ内容など

進捗情報では把握できないメール送受信内容や、提案時の内容、回答、クライアントからの要望・質問内容など詳細なアプローチ内容の蓄積と共有が可能となる。

SFAの6つのメリット

営業報告書をペーパーで保管したり、エクセルシートなどのツールに入力したりすることは、品質の低い情報管理方法であり、営業活動を有効に活用できるとはいえない。営業報告書が、単なる上司への報告だけでなく、企業の営業実績を向上させ無駄な時間を削減するためにはSFAなどのツールの活用が有効だ。SFAのメリットは下記の6つになる。

1.営業活動に関わる情報を一元管理

SFAに入力された顧客情報、案件情報や営業活動に関わる各種情報、顧客などとのメール送受信のデータ、営業活動のアイデア、営業活動スケジュールなどのデータは、SFA上で一元管理され、営業に関わるメンバーや管理職に共有化される。

2.営業担当者全員の活動を把握できる

営業管理職の業務の中で比較的多くの時間と労力を費やすのが、営業担当者の活動進捗管理だ。特に営業報告書による営業担当者の管理は非常に大変な作業になる。時間と労力がかかる業務は後回しにしたり、失念したりする可能性が高く、実績アップにつながらない形だけの報告になりがちだ。

SFAを導入すると営業管理職は、メンバー全員のデータを簡単に把握することが可能となる。さらに蓄積された営業情報は分析することで、効果的な営業活動の計画を立てることも可能となり、営業担当者へのアドバイスがしやすくなる。

3.営業担当者全員が情報を活用できる

営業報告書による情報管理では、営業担当者同士で営業に関するデータを共有化し活用することは困難だった。SFAの導入によって、紙ベースで管理されていた情報や、分割されて管理されていたエクセルデータ、メールの送受信履歴などが一元管理され、営業担当者全員が情報を活用できるようになる。

メンバー全員が情報をいつでも利用できるため、チーム内のまとまりが強くなり、営業活動を向上させる競争心も高まることが期待されるほか、クライアントへの営業活動がメンバー間で重複することも防ぐことができる。

4.クライアント情報をSFA上で閲覧できる

SFAには、顧客に関する情報を自動取得する機能が付いているプランもある。企業情報やプレスリリース、財務情報などがSFAから取得できることで、時間と労力の削減が可能となる。

5.効率的に必要な情報をつかめる

SFAには、一元管理された多大の情報を効率的に検索できるように作られているプランが多く提案されている。シンプルな操作で、営業担当者や管理職が必要な情報をつかめるのだ。

6.入力作業などを軽減できる

SFAによる、営業報告や訪問スケジュールの入力はスマホなどを使って簡単に入力できるので、営業活動のスキマ時間の活用が可能であり、事務所に戻って入力する作業を軽減できる。

SFAの効果事例

ここでは、SFAを活用した具体的な効果事例を2つ紹介しよう。

事務スタッフや上席とのリアルタイムの連携

営業活動では、営業担当者と事務所内の事務スタッフや上席とのリアルタイムの連携が、契約獲得に大きな意味を持つシーンがよくある。SFAを活用すると、外回りで顧客先に訪問している営業担当者からのリクエストに対して、事務所内の事務スタッフや上席はリアルタイムでスピーディーに対応することができる

営業担当者がスマホを活用して情報を有効に活用する

営業活動で重要な意味を持つのが、訪問前の準備である。最低限でも訪問する担当者の基本情報と前回訪問時に受けたリクエストへの対応は確認しておく必要がある。SFAを活用することで営業担当者は、顧客訪問前にスマホを活用して簡単に過去の情報を再確認することができる。

日報アプリケーション

日報アプリケーションとは、営業報告書をスマホなどで簡単に入力し、自動的に情報を管理する便利なツールである。SFAと比較するとニーズを営業報告書に絞ったシンプルなプランになる

日報アプリケーションのメリット

日報アプリケーションのメリットは以下の6つがあげられる。

1.スマートフォン・タブレット・PCによって時間と場所に制限されない

営業報告書をエクセルシートによって管理するには、営業担当者が営業報告書の入力を事務所に帰社した後に、PCで入力する必要があったが、日報アプリケーションを採用することで、スマートフォン・タブレット・PCによって時間と場所に制限されずに入力することができる。

2.報告内容のばらつきがなくなる

紙ベースの営業報告書やエクセルシートへの入力は、記入する手間がかかり営業担当者と管理職ともに負担が多く、歓迎されない。また、メールやラインを使った営業報告は、テンプレートがないため、報告内容に統一性がなく正確な情報を把握することが困難である。

日報アプリケーションでは、営業報告書が必要な職種などによって必要項目を設定したテンプレートが準備されているプランがあり、ばらつきのない営業活動に必要な正確な情報を蓄積することができる。

3.メンバー間での情報の共有化

日報アプリケーションでは、メンバー間の情報の共有化によってコミュニケーション力やチーム力を高める効果が期待できる。日報アプリケーションでは、グループ間でのコメント入力や「いいね」入力ができるプランも提案されている。

4.顧客情報の蓄積

日報アプリケーションは、スマートフォン・タブレット・PCによって簡単に入力できるツールであるが、テンプレートが決まっているので、営業に活用できる情報が自動的に蓄積されていく。

5.顧客情報の検索

日報アプリケーションでは、顧客情報が蓄積されていくので、顧客情報のアウトプットもデータから簡単に検索することができる。

6.スケジュール管理

スマホのテンプレートで入力したスケジュールは、自動的に日報アプリケーションに入力され、次のアクションへのスケジュール管理が簡単にできる。

日報アプリケーションの効果事例

ここでは、日報アプリケーションを活用した具体的な効果事例を2つ紹介しよう。

複数拠点の営業活動管理が楽になった

複数拠点の営業担当者を統括管理している管理者にとって、個々の営業担当者の活動内容をみていく事は難しくなる。さらに、拠点間の営業活動にむらが生じやすいのも課題だ。日報アプリケーションを導入することで、営業管理者は統一したツールで複数拠点の営業担当者の活動管理をすることが可能となった。また、拠点間の営業活動のばらつきを修正することもできた。

日報アプリケーションでデイリーのPDCAを実行する

日報アプリケーションを採用し、営業報告書の内容をPDCAのフォーマットを使って社員が毎日報告した。それにより社員が目標と結果のギャップを把握し、改善するにはどうしたら良いか考えるようになったため、社員の生産性が向上した。

ツールを活用することで営業報告書を経営に活かす

営業報告書の問題点を解決するために、「SFA」や「日報アプリケーション」などの支援ツールを活用することは有効な手段だ。自社の実情に合わせた活用目的によって「SFA」や「日報アプリケーション」などの支援ツールの導入を考えることは良い営業支援になるだろう。(提供:THE OWNER

文・小塚信夫(ビジネスライター)