カリスマ経営者と呼ばれる人物には、いくつかの共通点がある。そのような共通点からは、経営を成功させる秘訣を学べるはずだ。そこで今回はカリスマ経営者から学べる経営術に加えて、経営者が引退した後のことなど、事前に考えておきたいポイントをまとめた。
カリスマ経営者に共通する3つの能力
「カリスマ」と呼ばれる経営者は、一般的な経営者にはない能力を備えている。もちろん、個々人によって能力は異なるが、以下ではカリスマ経営者に共通する3つの能力を紹介していこう。
1.何事も論理的に話す能力
個人差はあるが、多くのカリスマ経営者には「論理的思考力」が備わっている。たとえば会社の理念やビジョンなど、何事も論理的に話す傾向が強いため、社員をはじめとした周りの人間が納得しやすいのだ。
経営者の論理的思考力は、周りの人間を引っ張るリーダーシップへとつながる。納得した社員は目標に向かって積極的に行動を始めるので、その成果は数値にも徐々に表れてくるだろう。
2.圧倒的な個性と魅力
一般的な経営者とは違った強烈な「個性・魅力」も、カリスマ経営者に欠かせない要素だ。多くのカリスマ経営者には独特の個性があり、魅力を感じさせる存在感が漂っている。
このような、いわゆる「カリスマ性」と呼ばれる能力は、実はすべてのカリスマ経営者が最初から持っているわけではない。幾度の失敗を経て、自分を磨き上げた結果としてカリスマ性を身につけた経営者も多く存在している。
もちろん、カリスマ性だけでビジネスを成功させることは難しいが、社員や取引先など多くの人間の心をつかむために、個性・魅力は欠かせない能力と言えるだろう。
3.現状や近未来を正確に見抜く力
多くのカリスマ経営者は、会社や自分自身、従業員などの周りの状況を「正確に見抜く力」を備えている。
いくらカリスマ経営者とは言え、業界に関するすべての能力・スキルが秀でているわけではない。ひとりでこなせる業務量には限界があるため、会社をうまく回している経営者は自分の得意分野・不得意分野を冷静に把握し、自分の能力を補える人材を集めている。
その際には、各社員の能力を正確に分析し、最適な形で従業員を配置しなければならない。カリスマ経営者はこのような能力に長けており、「自分や会社に何が足りていないのか」「何が必要で、どこに配置すれば良いのか」などを常に冷静に見極めているのだ。
また、世の中の動向から流行を予測するなど、「近未来を見抜く力」もカリスマ経営者には欠かせない要素のひとつ。これらの能力はセンスに大きく左右されるが、ブレーン役の人材に同じ能力が備わっていれば、経営者の不足した部分をしっかりと補完できる。
カリスマ経営者から学ぶ、経営を成功に導く秘訣とは?
カリスマ経営者と呼ばれる人物は、どのような点を意識しながら経営にあたっているのだろうか。その点を紐解くために、以下では実際のカリスマ経営者を例に挙げながら、経営を成功に導く秘訣をまとめた。
カリスマ経営者を目指している方は、以下を参考にしながら今後の行動を考えてみよう。
1.ビジネスに対して情熱や熱意をもつ
まず経営の心構えとしては、「強い情熱・熱意」をもっておきたい。これは株式会社ジャパネットたかたの創業者にあたる、高田明氏が重視していた要素だ。
同氏はかつてのインタビューの中で、「マインドはパッション(情熱)と置き換えてもいいくらい、本当に大切な要素です」と答えている。強い情熱があれば、ビジネスに対して常に必死な姿勢を貫けるうえに、周りにも自分の想いが伝わりやすくなるだろう。
文字にすると「そんなことは当然」と感じるかもしれないが、常に強い情熱や熱意をもち続けることは決して容易ではない。
2.社員一人一人が「イノベーター」となる環境を目指す
村田製作所を率いる村田恒夫氏は、社内に関する心構えとして「社員一人一人がイノベーターとなって社会に貢献する企業を目指す」と述べている。イノベーターとは「変革者」のことであり、同氏は自社の従業員に対して、自らの仕事を積極的に変革することを求めている。
情報化や技術革新が著しく進む現代では、ニーズが多様化していくにつれて、社内の体制を変革することが求められる。しかし、経営者がひとりで変革できる範囲は限られるため、各従業員の意識を高めることは非常に重要になってくるだろう。
3.規模の拡大よりも「利益率」を重視する
会社の利益を増やしてカリスマ経営者を目指す道として、「事業規模の拡大」をイメージする経営者は多いだろう。しかし、富士重工業の吉永泰之氏は、安易な規模拡大は自殺行為になると述べている。
グローバル化が進む現代において、事業規模や低コスト化を海外企業と競うことは非常にリスキーだ。世界中の企業が海外進出を狙っている中で、特に新興国で低価格競争に打ち勝つことは難しい。
そのため、吉永氏は会社の規模拡大ではなく、質の高い経営を目指すために「利益率」を重視している。もちろん、規模拡大が成功につながる業界もあるが、ビジネスによっては致命的な敗北につながってしまう恐れがあるため、検討していた経営者は慎重に事を進める必要があるだろう。
大企業と同じ方法ではダメ!中小企業が考えたい経営者の在り方
上記で紹介したカリスマ経営者は、いずれも大企業を引っ張っている人物だ。そもそも、大企業と中小企業とでは経営体制が大きく異なるため、中小経営者が大企業と同じやり方で経営を進めても、成功率を高められるとは限らない。
たとえば、「従業員との距離」を比較すると、大企業の経営者は各社員との距離が遠く、すべての従業員と直接コミュニケーションを取ることは難しい。そのため、管理職や中間管理職を挟んで意思疎通を図るなど、大企業の多くは別の方法で経営方針・事業計画を共有するケースが多いだろう。
その一方で、各従業員との距離が近い中小企業では、経営者と全社員がコミュニケーションを取ることは十分に可能だ。経営者が直接スタッフに想いを伝えることで、より効率的にモチベーションややる気を刺激できる。
ほかにも、事業との距離感や費やせる資金など、大企業と中小企業にはさまざまな違いがある。基本的に株主と経営者が同一ではない大企業と違い、経営と所有が分離されていない(=オーナー経営者である)会社が多い点も、中小企業ならではの注意しておきたい特徴だ。オーナー企業は経営者や役員の力が強い傾向にあるため、従業員側が「口答えや反論ができない…」と悩んでしまう恐れがあるだろう。
したがって、中小経営者は大企業と全く同じ方法ではなく、中小企業ならではの特性を意識した方法で経営に取り組むことが必要になる。もちろん大企業にも参考にできる部分はあるが、自社の現状や将来性などを冷静に分析したうえで、「中小経営者の在り方」を考えておきたい。
カリスマ経営者が引退…その後の経営を安定させる3つのポイントとは?
中小企業にも、経営を引っ張るカリスマ経営者は存在している。しかし、後継者候補が限られている中小企業では、カリスマ経営者が引退した後のことも考えなくてはならない。
経営者引退後に経営を安定させるにはどのような点を意識するべきなのか、中小企業だからこそ考えておきたいポイントを以下で確認しておこう。
1.役割分担を明確にしておく
経営者が引退をする際には、その後の役割分担を明確に決めておくことが重要だ。役割分担が曖昧になっていると、想定していなかった人物が経営権を握ったり、必要以上に前経営者が携わったりなど、さまざまな弊害が生じてしまう。
特に現経営者と後継者の役割・関係性は、引退をする前から明確にしておきたい。たとえば、ある時期がきたら現経営者はCEO(最高経営責任者)に、後継者にすべてを任せられる時期になったら会長職になるなど、引退にもいくつかのステップがある。
後継者の立場からしても、いきなり経営者としてすべてを任せられるのではなく、「COO(最高執行責任者)」のような役職を挟めれば安心につながるだろう。
2.経営者の気力があるうちに借金を整理しておく
会社に多くの借金があると、周囲の人物から反対されやすい状況が作り出されるため、事業承継はスムーズに進まなくなってしまう。また、個人保証撤廃の動きが見られるとはいえ、承継後に経営が一度傾いてしまえば、信用性の低下から金融機関は融資を渋るだろう。
そのため、会社が抱えている借金については、経営者の気力があるうちにできるだけ整理しておくことが必要だ。可能な範囲で借金を減らしておけば、承継後の経営や後継者の負担を大きく抑えられる。
3.後継者が見つからないときは、「マネジメントチーム」を構築しておく
人材不足に悩まされやすい中小企業では、適任の後継者が見つからないケースが珍しくない。そのような企業は、複数人で経営にあたる「マネジメントチーム」を事前に用意しておく必要がある。
1人の後継者でカリスマ経営者の働きをカバーできなくても、チームとして協力をすればその分を補うことは中小企業でも可能だ。マネジメントチームが積極的に経営に関わっていけば、そのチームの中から適任の後継者が育っていく可能性もあるだろう。
カリスマ経営者を目指すだけではなく、引退後も意識することが重要
カリスマ経営者と呼ばれる人物がいても、その会社は永久的に経営が安定するわけではない。どのような経営者もいずれは引退をするため、会社や従業員を守りたいのであれば、引退後も踏まえて経営計画を立てる必要がある。
これからの実績・経営次第では、どのような経営者もカリスマ経営者を目指すことは可能だが、「引退後の経営」は常に意識しておきたいポイントだ。万全の経営体制を築くために、余裕をもって準備を進められる環境を整えておきたい。
もし社内で同じように従業員をリードできる経営者がいない場合、他社への事業承継・売却を検討してもよいだろう。その際はまず専門家に相談し、伸長な判断をしていただきたい。(提供:THE OWNER)
文・THE OWNER編集部